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ReBlood.N  作者: 毎日がメスガキに敗北生活
不死身の少年
12/39

ep.12 "序章"

…夢を見ていた。


レイヴンと話していた

何か…大事なことを言われた気がする。


夢の中で自分の体を必死に動かそうとしたけど

…まったく動かなかった。


何を話したのかも

そのときどんな感情だったのかさえ

起きた瞬間にはもう忘れていた。


~~~~~~~~~~


ロジェロの膝にシルは頭を預け

静かに眠っていた。


アスノがその傍らで腕を組み

黙ったまま見守っている。


少し離れた場所では

深い傷を負ったアーヴェスが地面に横たわり

苦しげな呼吸を漏らしながら

かすれた声を絞り出した。

「ロジェロ様…そいつから離れてください。

こいつは…処刑対象の悪魔です…!」


ロジェロは静かに首を振った。

「アーヴェス兄様…待ってください

シルは…そんなやつじゃありません」


なっ…と驚愕するアーヴェスの目が

大きく揺れる。


「それは…国への反逆罪になります…!

どうか、ご理解を…」


ロジェロは迷いなく言い切った。

「…構いません」


「ま…まさか…その輩どもに唆されて…!」


「いいえ…これは私の意志です。

国のやり方には、前から疑問がありました

反逆罪になっても…構いません。

ただし…私も簡単に捕まるつもりはありません」


アーヴェスは言葉を失い唇を噛み締めた

その隙を逃さず

アスノがドスンと全体重でのしかかる

「まあ、そういうわけだ。…少し眠ってな」


アーヴェスの意識は闇に沈んだ。


「アスノやりすぎだ。もう眠っている。どけ」


アスノは肩をすくめる。

「ロジェロちゃん…

思い切って言っちまったねェ」


…仕方ない。遅かれ早かれ

国とは戦うことになってた。


指名手配になる…

町にはもう自由に出歩けないな…


~~~~~~~~~~


ミズイの宿。


僕は目を覚ました

昨日の出来事が、胸に重くのしかかる。


僕は二人に謝った

謝ったところで何も変わらないが…

それでも謝った。


二人は許してくれたが

迷惑をかけた事実は消えない。


この町で、多くの死を見た。


奴隷たちのことも

森で散っていった兵士たちのことも

ミラさんも…

救えなかった人たちの顔が次々に浮かび

罪の気持ちがさらに強くなった。


僕は…何も守れなかった。


今までの生活がどれほど甘かったか

この世界の残酷さを

はじめて身をもって知った。


胸の奥で、何かが音を立てて変わった。


ロジェロ達は僕に聞いてくる

暴走のこと、白髪の少年のこと。


僕は知っている限りを話す

血を飲んだ瞬間、理性が消えたこと

暴走していた間、意識はなく眠っていたこと

そして白髪の少年は恐らく

…自分と同じ夜叉ヴァンパイアだと。


二人は息を飲み言葉を失った。


~~~~~~~~~~


僕が暴走したことでアーヴェスを追い詰めた…

ロジェロとアスノの口から語られた内容は

にわかには信じがたいほどだった。


勝てる相手じゃないと思っていたから。


この力の危険さを、改めて理解した

「…もう二度と、この力は使わない」


血が暴走の引き金…

止められるのはあの白髪の少年だけ

次、同じことが起きたら誰が死ぬかわからない。


だから、封印する。


白髪の少年…

きっと何かを知っている

この力の秘密を解くためにも

また会わないといけない。


~~~~~~~~~~


皆、動けるほどに回復した。


ロジェロが言う

「これから私たちは正式に反逆者だ

国に追われる身になる」


町での変装、軽率な行動は厳禁…

元凶の僕に異論はない。


アーヴェスは王都に戻り治療を受けているらしい

しばらく脅威にはならないだろう。


~~~~~~~~~~


「アーヴェス様よ、みっともねぇ姿だなァ!」

野太い声が王国の治療室に響く。


ベッドで治療を受けるアーヴェスは

悔しげに言う

「黙れ…城で呑気に遊んでいる

お前に言われる筋合いはない…」


「アーヴェスをここまで

追い詰めるやつがいるとはねぇ…

興味が湧くな…調査したいなぁ…」


アーヴェスは、不本意そうに告げた

「…ロジェロ様が、生きていた」


「そう。やはり生きているのね


…なら、責任を持って

私の手で終わらせないとね…」


女の声が、治療室の空気を冷たく変えた。


~~~~~~~~~~


白髪の少年は、誰もいない場所で鼻歌を歌う

…それは"夜想曲"


そして呟く

「レイヴン…

君の思い描いていた未来って

どんなものだったんだろう」


風が吹き、少年の白髪を揺らす。


「まあいいや…

地獄でゆっくり見てなよ

君のいない世界が、これからどうなるのかを」


少年は愉快そうに微笑んだ。


すべては、これから始まる戦いの

ほんの序章でしかなかった。

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