怒れる処女と、その処女(なかま)達
男爵家の奴隷から公爵家の奴隷に暫くドナドナされる事になりました。
ルカ・バウアー卿(笑)5歳です!
わらしべ長者的に待遇改善を期待する幼児なのでありますが。
今回は女学園にて領主家に対立する旧王家派の彼女達の話をしたいと思います。そう噂の旧イルディア王女派です!ええ普段から女子寮には普通にいらっしゃるのですが。
彼女達との出会いは、私が女学園裏の旧校舎まで彼女の手下にドナドナされた時の事です。そこにあらわれたのは15人ばかりの貴族の淑女達で白いマスクに釘の刺さった角材を持った昭和の女番町みたいな人達です。
えぇ、暗黒街の王蘭さんに拉致られた時に比べたら可愛い物です、相手は貴族の淑女ですし、そして何より私の首輪には「公爵家(の奴隷)」の名前が入っているのですよドヤ(他力本願)!水戸の印籠の様にして逃げてみせましょう!でも私を驚かせたのは、もっと別の件で・・・・
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カミーラ・ラ・イルディア侯爵令嬢(元イルディア王女)は常に憤怒に身を包んでいた。今年15歳になる彼女は鍛え上げられた肉付きの良い身体を黒いスクール水着型のボンテージスーツで包みこむと、生まれもっての天然パーマの赤毛を掻き上げる。本来なら美しいであろう顔に怒気をやどして。
目の前には彼女の手下にして長年連れ添った仲間達がいる。
没落貴族と言う苦渋を分かち合い先祖からの血盟で結ばれた友達である。
そして今日の獲物は、怨敵クリスティーナが最近連れているジークヴァルト公爵家の奴隷であった。
彼女の仲間達が手際よく幼児を捕えて来る。
飄々とする幼児の首に彼女は自慢のファルシオンを当てる
「あたしは幼児にも容赦はしないよ!あたしのファルシオンの3人目の錆になりたいのかい」
だが幼児の反応は予想外の物だった。幼児は最初カミーラを見ると面食らったような顔をしたのだがその後嬉々として「女勇者様」と呼び懐いてくるのである。突然の事で目を白黒させる彼女だが、幼児の次の言葉で炎のような激しい怒りが甦る幼児はジークヴァルト公爵家の名を出したのだ。彼女の血盟の仲間達はジークヴァルト公爵家に憤怒と諦念する事はあれ恐れる事などないのである。
だがその次に出た名で血盟が崩れたのである。
「・・・・・・公爵家で下僕をしています、ルカ・バウアーと言います」
幼児の名前に狼狽した5人の女生徒が逃げたのだ戦力の三割がである。しかも血盟で結ばれた友がである。その逃げ足の速さは物凄いものであった。
カミーラは驚きの余り動くことができない。そして3歳年上の親友であるゲルダ・ライムバッハー伯爵令嬢を見る。彼女はかつてイルディア一と謳われた武門の一族で、彼女自身190センチを超える巨軀とその筋肉は令嬢というよりはオーガに近いように見えた。そんな彼女が幼児の名前に狼狽していたのである。
ゲルダ令嬢は、カミーラに耳打ちする。
「よ・止しましょう敵いませんぜ。姉さんのファルシオンの錆は盗んだ鶏と羊のものですが。(そりゃさばいたって言うんすよ)。あっちは本気の人殺しでさぁ。A級犯罪者に隣国国王も殺まった本気の狂人ですぜ。・・・それに・・・・・」
ゲルダは言いにくそうに顔を伏せて話す。
「最近、領主のジークヴァルト公爵家が王国最狂を取り込もうとしていると言う情報があって・・・親父達は、あたい等に王国最狂に股を開いてでも味方陣営に取り込めって言ってんでさ。あの幼児に尻差し出して抱かれろって言ってるんですぜ。」
ゲルダ曰く、逃げた連中も似た様なもんで、王国最狂の名は知っていても、こんな所で奴隷をしている訳がないと、公爵家の奴隷は只の幼児の奴隷で父親達が風評に踊らされてるのだろうと思っていたそうだ。実際に相対して恐ろしいまでの恐怖を感じるまでは。。
カミーラは、目の前の幼児に抱かれる裸のゲルダを想像し頰をひくつかせていたが・・・幼児は、何事もなかった様に「女勇者様」などと呼びながら懐いてき、カミーラに握手を求めると「パーティメンバー」がどうのと意味の分からない事を話した後、用事があるからと去っていくのであった。もはや彼を止めるだけの気力の有る者はいなかった。
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数ヶ月が経過し、カミーラの機嫌は以前より悪くなっていた。
最近、仲間達の集まりが悪いのだ。寧ろ避けられている気すらしていた。
ある日の放課後にカミーラは、思い切ってゲルダ達を捕まえ問いただす事にした。ゲルダ達は最初謝罪の言葉を続けていたが、最後には照れて伏し目になると
「あたいも女って事を気づかされちまったんでさ・・・もう昔の様な乙女には戻れね」
「私も、もうあんな不毛な事は・・・ごめん姉さんは永遠に処女でいてくださいね」
「あんな事されたら・・・もう彼無しでは生きていけないの」
オーガの様な巨軀の彼女や強面の仲間らが乙女の様にモジモジと言うのである。まるでリア充が処女を憐れむような目をカミーラに向けているのである。カミーラは喉の奥に指を突っ込まれたような衝撃をうけ震えながらに声を振り絞る
「も、も、もしかして、お前達だ、抱かれたのか・・・(幼児に)」
小娘のように頬を赤く染め顔を両手で隠して頷くゲルダ達にカミーラは憤激の雄たけびをあげる。憤怒の相手はゲルダ達にではないクリスティーナにだ。男を使って籠絡するなど卑劣であると。そして何なんだあの幼児はと!
カミーラは、怒り狂い土足のまま寮のクリスティーナの部屋に上がり込むと彼女に向け大声で叫びたてた!考えられる限り全ての罵詈雑言を!淫乱!変態!幼児愛者!ハゲ!とそしてカミーラの頬には熱い涙が伝っていた。
だが次の瞬間、カミーラは雷を全身に受けたような衝撃をうける
傲慢にして不遜、鉄の女である金髪の女が光の速さで土下座したのである
カミーラに言わないでくれと顔を赤く染めてだ。そして理解した。
彼女達は領主派になったのではないと。
『ルカ・バウアー派になったのだと』
派閥がルカ・バウアー派に吸収される日は遠くないのかもしれなかった。