北の森の魔女討伐(下)
そして北の森の魔女攻略作戦は開始された。
しかし我々は開始早々、迷宮攻略の目であり耳である彼を失う事になるのである。
盗賊は、塔の扉を慎重に開け中に進む。
そして我々は目をみはった
入ってすぐ横の通路には、いきなり宝箱が置かれていたのである。
何故こんな所に・・・・と皆が思うなか
盗賊は勇敢にも宝箱攻略に挑むのである。
ストン・・・
彼は暗闇に消えていった。廊下は暗く床が抜けているのに気づかなかったのだ。
勇敢なる盗賊の死を嘆きつつも我々は更に塔の深くに行軍を進める。そこで最初に遭遇した敵は・・・・かの有名なスライムである。
だが想像していた物より遥かに巨大である。そして可愛くない。粘着質に動く液体が廊下一面天井までを埋め尽くし道を塞いでいるのである。はっきり言って勝てる気がしない。我々は名誉ある撤退、いや転進を決意する。
そこで老練なる戦士にしてチームの盾である戦士Aを失うこととなる。
奴は、そこで転けたのである。いきなり。
戦士Aは、親指を立てニヒルに笑ってみせる。
「俺は大丈夫だ!先に行け」
戦士Aよお前の死は無駄にはしないだろう。
その後、我々は一切の戦闘を避け塔の頂上を目指す事となる。
そして見つけた階段を脱兎の如く駆け上がった!
と言うか普通の住居っぽい作りで一本道である円状階段を駆け上がれたのだ。
そして北の森の魔女の待つと思われる部屋の扉を蹴破るのである。
そこには、一人の美女が優雅にお茶をしていた。
見た目はローブに身を包んだ20代の前半の女性である。
「隊長、例の秘策って奴頼みますぜ!」
そう叫ぶ戦士Bに、引きつった笑みで首を横に振る隊長であった。
魔女がこちらを振り返りパチンと指を鳴らすと、
戦士Bは人体発火の様に一瞬で体内から燃え上がり床にはススの後のみが残るのであった。
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こんばんわ!魔女討伐派遣隊・隊長ルカ・バウアー5歳です!
討伐隊最後の生き残りになりました。
いやー、スキル・スケコマシ効きませんでしたー。
と言うか彼女人間じゃないですよ!
魔女はティーカップを机に置くと不可解そうにコチラを除き呟きます
「何故、遊び人の幼児!?・・・・・・
貴方は、まだ死ぬ運命じゃないようだけど、こんな処でなにをやってるの?」
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『北の森の魔女(女神ヴィーナ)』(506歳)
攻撃 :100(S)
魔力 :100(S)
知力 :100(S)
魅力 :100(S)
職種:魔女
LV999
HP :9999
MP :9999
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寧ろアンタこそ何やってんの?と言う感じです。
こんなチートステータスで・・・女神に事情を説明すると驚いたように
「あぁ貴方、あの時に転生させた!?いやー余りに酷いステータ・・ゲフゲフ。
プレイヤーだと気づかなくて。幼児が迷子になったのかと思っちゃったわ」
女神にお茶を誘われ席につくと彼女は話をはじめる。
彼女は『古代竜の血の力』と言う設定のアイテムを持っており、それをプレイヤーに渡すのが役目なのだそうだ。それには歴史が決まったこの世界での寿命回避の役割があるらしい。
「流石に魔王を倒しても直後に寿命で死んじゃうんじゃ、やってられないからねー」
彼女はケラケラと笑うとパネルの様なモノを操作する。
外では地鳴りが起こり、空には雷鳴が轟き、もの凄いエフェクトが吹き荒れている。
「本当は少し戦ってから渡すんだけど、相手が遊び人の幼児じゃね・・・今回はサービスよ。」
そしてひときわ巨大な光の柱が幼児を包み込む
「はい、これで貴方は寿命の束縛からは逃れられるわ。」
彼女の説明では、どうやら病気や寿命は回避できるが剣や魔法でダメージをうけたら普通に死ぬらしい。
「一応、貴方は500年生きる魔女を倒し不老不死の力を奪ったと言う設定だからね!
あと私が消えて暫くしたらこの塔も崩れるから気をつけて」
そう言うと女神はパネルを弄る
すると空が割れ彼女は、吸い込まれる様に空高く去っていくのであった。
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楊の視点
今日の早朝、ルカの兄貴が出発した。
街道での見送りはまばらであった。流石に誰もが北の森の魔女討伐は不可能だと思い期待などしていないのだ。そう言う楊自身も生きて帰れるだけでも幸運だろうと討伐隊を見送ったのだ。
だが、それがどうだろう。
夕刻の王都アンツを襲う地響きに轟音そして王都の空は紫に染まったのだ。
王都の誰もが怯えながら不気味に荒れ狂う北の方角を見ていた。
そして誰もが理解した!そして怯えた!
これを起こしているのは今朝早くに出発した幼児しかいないと!
今現在、幼児と魔女が二人が壮絶な戦いを繰り広げているのだと理解したのだ!
それは真に神々の戦いの様であった。
そして一際明るい光が魔女の塔を貫き、
その後魔女の塔の上の空が裂けたのである。
終末世界の様な光景に子供は泣き出し、大人でも腰を抜かす者が出てきていた。
そして街人の一人が森を指をさし、その後に人々にざわめきが広がる。
北の森に僅かに見えていた魔女の塔が消えたのである。
楊は興奮を抑えられなかった。。。。
誰もがその時、幼児が、ただ優雅にお茶を飲んでいただけとは思わなかったのである。