天下平定
「姫、大友に異国の軍、十字軍とやらが向かっているとの事」
半蔵は俺に報告する
「それはフロイスの嘘よ」
「えっ!」
俺は梵天丸をあやしながら話す
「異国の船は来ると思うわ、でもねそれはそんな大軍じゃないわ。ルソンや台湾とか日の本に近い場所に停泊してる軍船を動かすだけよ」
「なぜそのような嘘を大友についたのですか」
「実際に要請はしてると思うわ。でもねそんなすぐに許可なんて下りないし、準備もあるでしょ?時間が欲しかったのよ」
「・・・・・・」
半蔵は黙って聞いている
「もし大友に時間がかかるといえば、大友は織田に降るわ。そうなれば日の本での足掛かりを失うことになる。だから嘘をついてまで大友をつなぎ止めたいのよ」
「なるほど・・・」
半蔵は頷きながら俺の話を聞いている
「それにフロイスは周辺にいる軍船だけでも時間稼ぎではなく、ある程度の戦果が有ると考えてる。だから嘘と見破られないで時間が稼げると思ってる」
「それほどに異国の船は強いのですか」
「そうね、あの船がなければ勝てないでしょうね。そして時間を稼がれて西洋から本隊が来て、日の本は蹂躙される」
「・・・・・・」
梵天丸が寝付いたので布団に入れる俺
「じゃ、兄様の所に行きましょうか」
「御意」
「兄様、九州討伐に行きましょうか」
俺は散歩に誘うように信長に話しかける
「時間はかけられないか・・・」
「そうね、嘘が誠になる前に、日の本は纏めとかなきゃいけないわ」
そう言って俺は庭に出る
「市が言うような異国の本隊が来れば危ういか?」
「負けはしないけど、足場を残してたら民が泣くことになる。早めに片付けて九州近海で本隊を叩きたいところね。来なければそれが一番いいんだけどね」
信長も庭に出てくる
「島津も龍造寺も織田の提案に乗った」
「じゃ、大友だけね・・・」
信長は全国に大号令を出して民百姓を除く、領地に治安維持の武士だけを残させて、残った全ての武士を動員させる
その大軍勢を九州の大友領地に向かわせた
織田の領地にいる全ての商人が持つ、米を全て動かすほど兵站を確保しての九州討伐となった
異国との戦いは日の本をあげての攻防戦となる
大友はその大軍に恐れをなしていた
「これは支えきれん、何十万という兵などありえぬ!」
道雪は思わず、弱音を吐く
「フロイスどういうことじゃ!異国の船はあれだけなのか!お前の国は十数隻の船しか持たんのか!」
「アレハ センパツタイ デス スグニ タイグンガ キマス」
フロイスは目を泳がせる
「織田の鉄に覆われた船に南蛮の船は手も足も出ないではないか!」
「アレハ・・・」
フロイスはおろおろとしていた
そんな時に伝令が走り込んでくる
「島津が織田の旗を掲げて領内に侵攻中!」
「なにぃ!」
義鎮は叫んでいた
「龍造寺が織田の旗を掲げて領内に侵攻しました!」
「降伏じゃ降伏の使者を出せ!早く致せぇ!」
義鎮は目の前が真っ暗になるような感覚を味わっていた
「義鎮、踊らされたな・・・」
信長が義鎮に話しかける
「全てはそのフロイスのせいじゃ!儂は被害者じゃ!」
「何言ってるの?あなた、日の本を異国に売ったのよ。理解してるの?」
俺は冷めたように義鎮に話しかける
「・・・・・・」
義鎮は下を向き恐怖に震えていた
「あんたのおかげで異国の大軍が来るかもしれない。その責任あんたとれるの?」
「許してください、命だけは助けてください」
失禁して涙を流す義鎮
「無理よ。一族郎党全て根絶やしよ・・・」
「あああっ・・・」
気を失う義鎮
「フロイス、あんた本国に要請はしてるの?本当のことを言いなさい」
「・・・・・・」
「話さない気?それならあたし達ルソンとか台湾潰しに行っちゃうわよ」
フロイスは驚いたように顔を上げて話し出す
「ウソデス、ホンゴクニ レンラクナド シテマセン シュウヘンノ グンセンヲ ウゴカシタダケデス」
俺はそれを聞いて心では安心していた
「それは良かったわ。でもねルソン、台湾、琉球は攻めに行くわよ」
「エッ ソンナ・・・」
俺は冷たく言い放つ
「ありがと、あとは苦しんで死んで・・・」
大友の仕置が終わると俺と信長は安土の城に戻った
安土の天守閣から見える景色を眺めながら信長は呟いた
「市、終わったな」
俺は信長の横に立って話す
「まだですよ、やっと乱世が終わっただけです。これからが本番ですよ」
俺は信長を見て話す
「まだか、市の天下は目指す理想が高いのう・・・はっはっはっ」
そう言って二人は顔を見合わせて笑っていた