表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結末が残酷な死に方なので棚ぼた玉座は遠慮します!なのに、最大の敵が溺愛してくるんです!  作者: 幻燈 カガリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/31

✣ 25話 淑女、貴族に芋を推す






侍女たちが黙々と料理を運んでくる。

香ばしい、嗅ぎ覚えのある匂い。


コトッ。

目の前にお皿が置かれた。

そこに鎮座したお料理。


私は目を剥いた。



それは、なぜか……?



なぜなら、そのお料理が、



私が作ったモノだったからですわ!!



まさか会食で会うとは……お互いビックリよ。

庶民の味がこんな厳かな会に登場とか、誰も思いもしないでしょう。



招待客の皆様も訝しげにキツネ色を眺めてますわ。


モノクルの縁を指先で触れるブレンハイム侯爵。

背筋を前に倒し真上から覗き込むスーザン婦人。

ヒラヒラとした扇の内側で鼻をクンクンさせるトレバン夫人。


全く動じていないカーディアス。



さすが、王太子ですわね。



横目でカーディアスを見ながら感心してますと、スっと脇から伸びた黒い腕。


咄嗟のことで肩がビクッとなる私。



置いてあったグラスに食前酒である白ワインが注がれた。



これ……飲んで良いってこと、よね?


ゴクリと喉が鳴る。


久々のアルコールありがとうございますっ!!



「では、頂こうか」


主催者であるカーディアスが声を発した。手がグラスへと伸びる。

カーディアスの指先がステムに絡む。グラスが宙に浮いた。



「我が妹に、栄誉を」


その掛け声に皆が応える。


「……我が王女に、栄誉を」



掛け声それ、なの?!

恥ずかしいですわっ。


お酒が入る前に顔が熱くなる。

皆のグラスが唇に触れ、淡い白ワインが傾いた。


遅れた私もそれに続こうとする。

ステムを指先で摘んだところで、グラスに手が添えられた。



え!?

また邪魔が入りましてよっ!



その手の持ち主へと目を向ける。



「エスティア、君はこっちだ」


目を細め悪気など全く含まれていないお顔。

侍女が新たに注いだグラスを悪びれもなく手渡した。


「ほら、新鮮なオレンジジュースだ」



濃いオレンジ色。

グラスから香ってくる酸味。


あ、やっぱり……

そうなるのですね……



ガックシと頭が垂れた。



「あ、ありがとうございます……お兄様」


渋々、差し出されたグラスを受け取る。

引き攣る笑み。


私の前で攫われるグラス。

呆気なく奪われた私のグラスは手の届かぬところへ置かれてしまいました。



解せぬ……

いつか、浴びるように飲んでやるッ!



そう見えぬ涙を流しながら、私は苦酸っぱいオレンジジュースで喉を潤した。





「殿下……私が無知で申し訳ございませぬ。こちらの料理は初めて目にしました」



目の前に座るブレンハイム侯爵が口を開いた。



で、しょうね。

そうで、しょうよ。



私の鼻が少し高くなり、肩が張る。



「私もですわ。殿下、こちらは何ですの?」


ブレンハイム侯爵に続きトレバン夫人も問うてくる。スーザン婦人は何も言わないが、目で訴えていた。



「私も、初めて目にするのだ。君、料理長───」


私は手を軽く上げた。

それに気付いたカーディアスが、口を閉ざす。


この場にいる人の視線が私へと集合する。


「このお料理の名は……


ポテトコロッケ。ですわ」



目を丸くする皆様。



「ポテト……ですと?王女様」


「ええ。ブレンハイム侯爵閣下」


私はブレンハイム侯爵を見据える。眉を顰め、可愛いコロッケを見下ろすボードン・ブレンハイム侯爵。



ちょっと、髭侯爵。

気に入らないって言うのかしら?


「これが、芋だなんて……」


扇から顔を出すトレバン夫人。


なかなか、フォークへと手を伸ばさない皆様。



「……エス、何か知っているのか?」



投げられた視線と言葉。


私は胸を張った。


調理場の皆と共に作った料理を

貶されてなるものですかっ!



「私と皆で作ったのです。こちらが、この場に出たのは予想外ですが」



シレっと述べた。

付け入る隙を与えないように、原作エスティア様を意識します。


「皆様、私が作ったお料理は食べられぬ、と申しますの?」


流し目でそう告げた。


本当の悪逆非道暴君女王だったら、

さっさと食べないとヤラれちゃうんだからネッ!



それでも、手を付けようとしない。



「……王太子殿下、流石にメインが芋というのは……」



口元を隠しながらカーディアスに耳打ちするブレンハイム侯爵。こちらを気にするような視線を向けるカーディアスだが、カーディアスも同意見のようだ。



え?ダメなの?

メインはあの硬い肉が必須なの?!



テーブルの下でドレスのスカートを両手で掴む。



く、悔しい!

食べもしないで、ぺちゃくちゃ言いやがって。

頭の硬い貴族めッ!

あの岩ステーキに頭をぶつけてしまぇ!



念仏のように心で唱えながら、

私はフォークへと手を伸ばした。



皆が食べないなら、

私ひとりでも食べるから!



ナイフを指先で取ると、衣へとフォークを誘った。






「────い、いけませんっ!」



扉の外が急に騒がしくなった。

表情も変えずに皆、身体を動かさず目線を送る。


私はそんなこと気にも留めず、コロッケへと進軍する手を止めない。



ギィィ────



控えていた騎士などものともせずに問答無用で開いた扉。

そこに立つ相手を見たカーディアスの眉が跳ね上がった。



「……招待したつもりは、ないんだが」



空間に落とされた冷たい声。

私の鼻の回りにあるコロッケ臭を消し飛ばした……あの香り。



顔を向けなくても、誰だか分かってしまう自分。


心臓が跳び上がる。


足音が止まった。



「これは皆さん、お集まりで」



空間がひとりの声に支配される。




「あら、お会い出来るとは思いませんでしたわ」



驚いた声を出すトレバン夫人。


「僕も、です。トレバン伯爵夫人」


差し出された手に唇を落とす。


スーザン婦人は慌てて席を立とうとする。



「ご婦人、そのままで」


「あ、あ、すみません……」



スーザン婦人は浮き上がった腰を再度、落とした。




「ブレンハイム侯爵。先程、ご息女に会いましたよ」



談笑しているようだが、語気に冷気が含まれたように感じた。


「これは、これは、フィガロ公爵。お久しぶりでごさいます。……我が愚女が、失礼をしませんでしたか?」


「元気がとても良いご息女、ですね」


「あは、そうでございましょう。あの子は誰に似たのやら……少し我が強い子でして」



ブレンハイム侯爵の硬かった表情が少し和らいでいる。娘さんのこと話す侯爵の顔は、もう当主 ブレンハイム侯爵ではなく父親の顔に変わっていた。



あんな顔するんだ、ブレンハイム侯爵。

娘ラブ、なのね。



観察しながらいると左から熱い視線を感じた。

目を合わせたら、冷静に対処出来なくなりそう……。


私はひたすらコロッケと見つめ合う。


右手にはフォーク。左手にナイフを持ったまま固まる私。



「……ブレンハイム侯爵家の将来が楽しみ、ですね」



薄ら笑いを浮かべると、また足音が響く。

(見てないけど)


動く彼をカーディアスは視線を逸らすことなく、静かに敵視する。(見てないよ)




「ご機嫌麗しゅうございます」



チャリ。


持っていた食器が、細い音を上げる。

ゾクゾクっと背筋が逆立つ。



「……王太子殿下、そして……


─────王女さま」



















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ