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その8. ごはんにしましょうか!

ご飯編~っ!

「あ~ん、九条院くんって、ホント初めてなんだぁ。

 うふふ・・・

 大丈夫ー、私が教えてあげるから、・・・ね?

 

 あ、ホラ、太いからって、そんなに強く握っちゃ、ダーメ。

 

 んん、もお、そんなに力込めたら、怪我しちゃうよ?」


「あ、あの、・・・せ、せんぱい?」


「やーん、朱乃って、呼・ん・で?」


  ガンッ☆彡


大きな音をさせて、緑子がまな板を流しに置く。もちろん、九条院と朱乃の間に割り込んでの所業だ。


「たかが『大根おろし』ごときで、どうしてそこまで気分を出せるのかな、朱乃・・・。」

「チッ、邪魔が入ったわ!

 せっかく二人で楽しんでいたのにィ、もおっ、緑子ってば酷ぉーいっ!!」


不機嫌そうに唸るような声で止めに入った緑子に対して、鋭い舌打ちをしたものの、後は安定の『可愛い私キャラ』で受け流す朱乃もまた強かだ。


 椿館では、今晩の夕飯の支度に大わらわだった。

 理由は、いつもより夕食をとる人数が多い事と、佐保がまた迷子になったが為に夕飯の用意が遅れた事、だ。まあ、迷子はいつもの事なので、最近みんな慣れてしまった感があるが。


 そんな中でも、歴戦の勇者たる元侍女たちは遊びを忘れないようで、やってきた可愛い後輩(男子)を見つけるなり、せっせと構っていたのだった。


「もぉ、朱乃ねえさまっ! 九条院くんをイジメちゃダメですよっ!」

「イジメテないもーん、可愛がってあげているんだもーん♪」

 ひらひらと手を振り笑顔で一生懸命に後輩をかばおうとする妹侍女の追及を躱す。佐保としても文句を言うのが精いっぱいで、朱乃を止めることができるとは、思えない。


 椿館には、現在10名の女子が住んでいる。その中でも二年の朱乃は、からかうと真っ赤になる初心な九条院をいじり倒す事に楽しみを見出したらしく、イロイロとしかけていた。


 おかげで、九条院は、特に作業をしたわけでもないのに、キッチンの隅でしゃがみ込んで脱力しため息をついている。


「九条院くん、大丈夫? 朱乃姉さま悪気はないんだけど、楽しい事大好きだから・・・」

「はあ、つまり、遊ばれているんですね、僕は・・・」

「あー、うん、ごめん・・・ね?」

 ここまで脱力をしている九条院に今更取り繕うこともできずに、結局謝るしかない佐保であった。


 あの後、庭園の迷路から救出してくれた九条院と、長利に、連絡係として生徒会室で待機していた邑上を加えて、お礼を兼ねて椿館での夕食に招待をしたのだった。


 招待したとはいえ、食べ盛りの男子3名が加わった以上、準備する量は大幅に増やす必要があった。下ごしらえをしてある分は別にしても、イロイロとかさ増しをする必要がある。


 そこで、添え物の大根おろしだったり、さやいんげんの筋をとったりという、特に技術もいらず、やる気さえあればできる作業については、招待客の皆さまにもお手伝いいただくこととなったのであった。


 せっせと大根おろしをしていた九条院は、遊びに飢えていた朱乃のいいターゲットとなりながらも、真面目に大根おろしのミッションを成しえて、速やかにリビングへと避難していた。

 器用になんでもこなす長利は、包丁をあやつり白髪ねぎを作り、ほうれん草をゆでて、冷水で締めていた。その手際を横目に見た佐保は、なんでもできる長利にちょっとため息をつくのだった。


 何よりも以外だったのは邑上で、普段の様子からは想像もできない器用さで、固まり肉からスライスをした後、肉の筋を切り、丁寧にバットへならべて料理用酒と、塩コショウを軽くふるという一連の作業を流れるようにこなしていた。


「邑上さまって、なんでもできるんですねぇ・・・」

「んー? 長利だってできるし、フツーだろ、この位なら」

長年やって、このレベルの腕の私は泣いてもいいじゃないかと思うのです。なんでも出来る人っているんですねっ!!と、佐保はちょっと涙ぐんでみた。


そんなこんなで、みんなで用意した食材の仕上げは佐保の仕事だ。


フライパンに軽く油をしき、生姜の細切りをいためた後に、邑上が下処理した豚肉を軽く表面を焼き付ける。

表面の色が変わったら、その後、フライパンに料理用酒、出汁と、味噌、みりんを入れて、味を調える。その中に焼き色を付けた豚肉を放り込み、軽く煮るだけの簡単料理だ。

お好みで、大根おろしや白髪ねぎなどを載せていただく。


「はーい、お皿にいれますからねー。どんどん召し上がれ~っ!」

「「「いただきまーーーす」」」


作るのが簡単な割に食欲をそそるメニューである豚肉の味噌煮は、今回すこし贅沢な大きいお肉で作り、ごはんにのせて、味噌豚丼にしてもOKとなっている。

まさしく、ガッツリの男子向けのごはんである。


九条院の力作である大根おろしに、ネギ入りの卵焼き、ほうれん草のおひたしに、お漬物各種。さやいんげんとお豆腐のお味噌汁の並ぶ食卓で、大皿にのせられた豚の味噌煮が飛ぶように売れていく。


「あああ、やだー、美味しい~っ!白髪ねぎと大根おろしのせると幾らでも食べられる~!」

「醤油味の豚丼もいいけど、味噌味、うまーーいっ!一味とうがらし、こっちくださーーい」

「ほんと、佐保は、料理だけは、うまいよなぁ・・・」

「さほーー、明日のお弁当にこれ入れられる? お弁当でも食べたい!」


などなど・・・イロイロと聞き捨てならないお話もありますが、おおむね好評でよかったです。ほっと一息ですね。お弁当にする分もちゃんととってあるから大丈夫ですよ。焼いた分はどんどん食べちゃってくださいねー。ごはんのおかわりも沢山ありますよ!


この余った肉みそで、茹でたお野菜や、きゅうりを食べても美味しいんですよねぇー・・・。

好みは分かれますが、生のピーマンも美味しいんです。


んー、明日のお弁当には、何を入れようかな~、なんて考えながら、みんなで作った料理を堪能する。


そっと、長利さまと、邑上さまを見ると、おふたりともごはん茶碗ではなく、どんぶりを片手にもち凄いスピードで食べていた。・・・男子って、このスピードが普通なのかぁ、あ、あんなでかいお肉も一口だ!


その横で九条院くんが負けじと食べている。すでに、どんぶり三杯目!? 

そっかー、これだけ食べるから、こんなに大きく育っちゃうんだねー。・・・今日は一升ごはんを炊いたのですが、残るかしら?


「佐保、ちゃんと食べている? ぼんやりしているとおかずが無くなるわよ」

「ほら、肉も食え! しっかり食べないと、また、その辺で倒れることになるぞ」


 ぼんやりって、みんなでごはんを食べる幸せをかみしめていたんですよ、緑子姉さま。

 お肉をお茶碗に放り込んでくれるのは、嬉しいんですが、そんなに食べられ・・・いえ、いただきます、長利さま。


それからですね、倒れていたんじゃなくって、あれは迷路で迷子になって疲れてしまったから、その、倒れていませんってばっ!!


九条くん、お願いですからため息をつきながら、頭を撫でないでくださいっ! 残念属性とか、そんなの持っていませんってば、邑上さまっ!!


その後、さんざんイジラレてすねた私が、ソファの隅でいじけている間に白河の姉さまと、朱乃姉さまがサッサと後片付けをしてしまい。気が付いた時には、九条くんにもたれて寝てしまい、起こしても起きなかった私を長利さまに部屋まで運んでいただいた後だったとか・・・。


・・・翌朝聞いた私は、皆様に何と言っておわびすればいいか、そればかりを考えておりますっ!


「土下座とか、かしら・・・」

と呟いたら、女の子に土下座なんてされたら、邑上さま、長利さまが学校に来れなくなるわよっ!

と白河のお姉さまに言われまして。


その日のお弁当は、重箱三段重ねで持っていき、みなさまにふるまうこととなりました。

昨日の残ったお肉は、キノコの肉巻きにして、だし巻き卵、こんにゃくの土佐煮、タケノコと人参、サトイモのお煮しめ。菜の花はからし醤油和えで、ほうれん草は胡麻和えに、


「「本当に、佐保は、料理上手でよかったなぁ」」


・・・だから、それだと褒めてませんってばっ!!




豚丼て、美味しいよねぇ。。。(それだけかっ!!)

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