第90話:堕天、苦くて甘くて辛い先輩と、新たな私
時計のカチカチと言う煩わしい音が私をとろける夢から覚まさせる。
だるさを感じつつ起き上がろうとすると、力を入れた右手が柔らかい感触の中へとめり込んでいく。
肌に直接あてがわれた毛布は、くすぐる様に身体のラインに沿ってずれ落ちていった。
目覚めたはずなのに、視界に移る物は別の夢の中にいるのではと錯覚させた。
ネコを模った時計、縁取りがやたらと丸みを帯びているドレッサーやクローゼット。
そして私をぐるっと囲う様に、壁紙にはこれまたファンシーなイルカさん達が海底を泳いでいたのだ。
可愛らしくもどこか寂しさを漂わせる部屋が何を示しているのか。
両手で私の手首をしっかりと掴み、健やかに眠るもう一人を見て……私は勝手な妄想を膨らめていた。
……ん?
捕まれた両手の体温が、じわじわを現実へと温めていく。
温かいベッドの中。
私の手首を赤子の様な寝顔で握りしめる全裸の先輩と、全裸の私。
ちょっとべたつきを感じるこの身体の不快感。
沸々と湧き上がる艶めかしい記憶が、私の脳裏でダンシングし始める。
「なんてことを……」
「大袈裟ね、自分となんだから実質一人遊びと一緒じゃない」
己の軽はずみな行いに顔面を覆っていると、横の方からせせら笑う元凶の声。
「その理屈はどうかと」
「植え付けられた設定とは言え、反応が童貞過ぎじゃない?
と言っても、一番ノリノリで可愛い声上げてたのはどこの誰だったかしらぁ~?」
「ぐぅっ!!」
さっきまで甘えんぼスタイルで私に絡んでたくせにっ!
したり顔で笑いやがって……憎らしいったらありゃしない。
こんな事で冷静さを取り戻してしまっている自分が最も憎らしいがっ!!
「どうせ私たちなんて……いつ消えるか分からんだから、思い悩むだけ無駄よ」
「それはそうかもしれないですけど……」
多重人格障害、それは自信を守るために作られた存在であり。
創造主がもう必要ないと思えば……消えてしまう事だってあるのだ。
「取り敢えず、私はシャワー浴びてさっぱりしてくるわ。
だって身体中に染みこんだ……あんたの匂いでむせ返りそうだもの。」
「その言い回しやめてっ!?」
デア先輩はそれはそれは楽しそうに、扉を作り出し、その向こうで水音を響かせ始める。
確かに彼女が言う通り、気にしたところでどうしようもない事なのかもしれない。
だったら欲望の赴くがままに……いや、そこは本当にそれでいいのか?
何だかんだで後輩に気を使ってくれる優しくも意地悪な先輩に感謝しつつ。
私は漸くここで、先の事を見つめ始める。
取り敢えず、そうだな……私にもあの扉は作れるのか?
―――水も滴る意地悪デア先輩が目を平たくして小口を開けていた
「……え?」
デア先輩が驚くのも無理はない。
デア先輩の可愛いファンシールームに隣接するようにそれはそれは大きく作られた部屋。
訂正、もはや大きいと言うか、どデカい場所なのですが。
まぁぶっちゃけると、ガン〇ムベースがあります。
「あんた何作ってんのっ!?」
あぁ、久々にボケ側に回ってしまいました。
「つい」
「つい……じゃないわよっ!!てかそのでっかいの何っ!?」
「えっ、知らないんですか?ハイ〇ッグですけど。
ドッグを作ったら当然作りますよ、JK」
「一から十まで何言ってるか分からないからっ!!取り敢えず、消せっ!!」
「え~……」
せっかくの高クオリティで創り出した私の愛するハイ〇ッグ君は無残にも、デビルデアの謎の爆弾で消し飛ばされた。
「どうぢで……どうぢでごんな酷いごどをぉ~……」
「自分が消えるかって時よりも凹むってどんな状況よ……」
「いえ、号泣してる自分をイメージしたら、出来るか試してみただけです」
思いの他この世界では私たちは何でも創り出すことが出来るらしい。
そして、私が創った物をデア先輩が直接消すことは出来ず。
何かしらの別の創造物を使って破壊することしか出来ない様だ。
だが、この世界で思いのままに創造するためにはまだ精度が足りていない。
その為の情報がもっと欲しい。
そして……外で起こっている状況をやっぱり知りたい。
自分たちが消されるその日まで、デア先輩と面白可笑しく堕落するのも悪くないかもしれない。
私が守るべきプライドも人生も倫理観も、もう存在しない。
でも……残して来たモノがどうしても気がかりなのだ。
だから、デア先輩とイチャイチャしてる訳にはいかないのだ。
いや……デア先輩をひれ伏してもらう必要があるのだ。
主導権を握るために。
私にお仕置きを加えるべく、アカン器具を錬成している鬼を後ろに感じながら。
今はまだ従順にデア先輩の後輩で演じることを私は決めた。
そして、超ハードなお仕置きを受ける事にしたっ!!
遅れましたー。
横でエロゲ作ってるから内容が釣られてしまってそうな今日この頃。
ちなににJKって言うのは「常識的に考えて」という昔流行った(?)ネットスラングです。




