第76話:終劇、竜使いと、紙使い
「オラオラァッ!!どうしたぁッ!?多勢に無勢の癖にその体たらくはよぉっ!!
オラァッ!!オラオラオラオラァッ!!」
「ぐぎゃあああっ!?」
「ひぎゃっ!?」
「くそっ……何だよコレ、や、やめっ……。」
阿鼻叫喚と共にその数を減らしていく男たち。
チリ紙の八腕によって放たれる投擲の雨は、爆煙と共に男たちを震え上がらせていた。
尚、こちらの語調がバーサーカーモード入ってるのは見逃してほしい。
「次はどいつだ、オラッ……」
「貴様ぁああああっ!!」
「……ぐっ!?」
爆風の中から弧を描くように、ナイフを持った男が突っ込んで来る。
咄嗟に、空いていた左腕アームとチリ紙ブレードで受け止める。
ナイフが刺さるとチリ紙ブレードが爆発し、中に入っていた土が噴き出る。
土と砂利でコーティングされたブレードは切れ味がないものの、刃物に対する頑丈さにおいては優秀だ。
しかし、その優秀なチリ紙ブレードをタダのナイフで破壊されたと言うのは実に解せない。
故に、危険な力を持っているというのならば、隙を与えるわけにはいかない。
「シャッハッ!!」
「チィッ……!?」
掛け声と共に、すぐに敵を認識して別の腕たちが流れる様に剣を取り、件の男へと振りかぶっていく。
数本が男の服を少しかすったものの、致命傷を与えることが出来ないまま後方へと逃げられてしまう。
「全く面妖な……だが、所詮は小娘、見た目ほどの力はないらしいな。」
「そっちこそ、まだ減らず口が言えるんだ?
でも、その小娘にほぼ壊滅させられてるようにも見えるけど?」
「クソガキが……すぐに地面に押し付けて、女として生まれたことを後悔させてやる……。」
「あぁ?」
私の低い沸点を逆なでしつつ、男が大きな宝石を懐から取り出す。
「いでよっ……破竜ッ!!!」
その掛け声と共に、宝石は紫色の禍々しい光を放つ。
地は揺れ、男の足元の土が盛り上がり、男はぐんぐんと遥か上空へと舞い上がる。
そして、そこに現れたのは……骨で出来た大きな大きな怪獣だった。
「ハッハッハ!貴様が悪いのだっ!!関係ない小娘がしゃしゃりでおってからに!!
降参するなら今のうちだぞ?命までは取らん、命まではなぁっ!!」
男は己が召喚した骨竜の上で、目を見開き、勝利を確信しながら吠えていた。
なるほど、この巨体を持ってすれば一人でも戦況は覆せる、そう思ったわけだね?
確かにそんな大物出されちゃ、流石の新技も破壊するには火力も耐久力もあるませんわ。
ま、破壊出来ないだけなんですけどね。
それに、そんな高くて狭い場所に留まっちゃって……自分で首絞めてるんですよねぇっ!!
「シャッハ!攻撃第一かーらーのー、投擲ッ!!」
球体化したシャッハを、チリ紙アームの腕力で骨竜の型へと投げ飛ばす。
「そんなものっ!!」
男はナイフを投げ、チリ紙ボールを粉砕する。
さっきみたく破壊すれば……どうにかなると思ったんだろうねぇ。
でも残念。
「手間を省いてくれて……ありがとう。」
「……は?」
蛸足拘束の命令を出すまでもなく、爆散したシャッハ君はそのまま男を包み込む。
男は必死にもがいて逃れようとするが、無駄なあがきだ。
男は検討も虚しく、がんじ絡めになって地面へと落ちていった。
そして、盛大に地面に叩きつけられた男は、痛々しい悲鳴と共に動かなくなったのだった。
尚……多分死んではないないと思う。
対人戦最強のシャッハ君を前に勝てる人間などいない。
それをしみじみと感じる、悲しい戦闘だった。
ま、取り敢えず、一番厄介な大ボスは終了!
私の憂さ晴らしもスッキリ解消!
まだ気を抜くなって?
なーに、他の有象無象も既に……。
気を抜いていた私を大きな影が覆っていく。
そう、操縦者がさっき倒れたわけでね。
私目がけて、骨竜君が倒れ込もうとしてるわけですよ……。
気づくのが遅くて、もう、目の前なんですよ。
あれ?これってちょっとヤバいのでは?
「……えっ、待って、あ、だめだめ!?ちょっと、きゃあああああああああああああ!?」
咄嗟の回避も取れなく、私は目を覆った。
が……待てども、私が潰されることも、骨竜が地面に倒れ伏す音さえもしなかった。
「デア……詰めが甘い。」
目を開けると、プリニアの糸が骨竜へと絡み、私の鼻先数メートル先で止められていた。
「死ぬかと思ったぁー……。」
あぁ、ホント持つべきものはプリニア様ですよ。
よくよく見れば、仕留め切れていなかった雑兵たちもプリニアの糸で地面を舐めさせられていた。
そもそも、あの男は全力で私を仕留めようとしてたわけだけど。
私より恐ろしいプリニア様が後ろに控えてたんですよねぇ……。
私に花を持たせようとして、プリニアがほぼ置物と化していてくれてたから無視されてたみたいだけどさ。
ま、何にせよ、これで一件落着かなぁ?
「デア……早く退いて、そろそろ……辛いぃ。」
「え?」
プリニアが頬を膨らませて、顔を赤くしている様子を見て、私は察した。
早く退かないと、やっぱり押しつぶされてしまうのだと。
……。
「待ってっ!?今退くから、お願い、もうちょっと耐えてぇええええええええええええ!!」
締まらない終わりと共に、緩やかな風が洞窟を通り抜けて行くのだった。




