第75話:顕現、踊る餓鬼と、這い寄る混沌
プリニアがその巨体を大きく屈伸させ、その反動で空へと大きく舞い上がる。
「何だっ!?」「えっ?」「ひょっ?」「構えろっ!!」
上空を通りに過ぎていくプリニアに、様々の反応を示す哀れで救いようのない男共。
見た感じ、プリニアの殺気にも気づかない馬鹿が大半の様だ。
勿論、すぐに状況を理解している面倒そうな奴もいるが……そんなことは関係ない。
プリニアが奴らを飛び越し、着地する。
軽い着地音と共に乾いた土を巻き上げ、土煙を昇らせる。
そして、六つの足をピアノを奏でる様に優雅に動かしながら、その巨体を反転させた。
その場にいた人間たちはその威厳に、その恐怖を前に、唖然と立ち尽くし、身を震わせてへたり込む。
気持ちは経験者として十分にわかる、何てたって魔王の元大幹部様ですからねぇ!
でも残念ながら……そのラスボスはただの囮なんで。
腰鞄から剣先のない木の柄を取り出し、両手に構え持つ。
走り込みながら、シャッハ君に伝わる範囲で声を押し殺し、最初の命令を下す。
「シャッハ……中剣創造ッ。」
第一陣が土を巻き上げ、それを包み込むようにして柄から刀身を創造する。
切れ味が悪いままの未完成の剣先を地面に押し当て、仕上げを加える。
「砂利塗装ッ!」
構えていた第二陣が砂利を巻き上げ、刀身と砂利を包み込むようにして融合させる。
さぁ最後に、その完成した鈍器をどうするかって?
「投げるんだよぉっ!!」
「後ろだっ!!」
この状況に即座に反応するリーダー格を横目に、高速の二対の鈍器が通り過ぎていく。
そしてその鈍器は柄の尻からシュルシュルとチリ紙を垂らしながら、目的の男たちの尻へと直撃する。
うん、我ながら良い投球センスだ。
そしてお前たちが犯した罪を味わえ。
「せっかくだし……捻っておこうか。」
両手でドアのぶを開ける動作をすると、手首から柄の尻まで繋がれたチリ紙が同じ様に連動する。
断末魔を上げ、泡を吹きながら倒れる最初の馬鹿を見届け、引き抜く。
その血塗られた鈍器を、綺麗な弧を描く様に手元へと優雅に引き戻し、ふわりとキャッチする。
一生潰えることのないの痔持ちスキルの習得おめでとう。
でも、殺さなかっただけ感謝してもらいたいところだね。
「……何者だ貴様ら、我らにこんなことをしてタダで済むと……。」
リーダー格の男が冷静に、だが焦り交じりの声で私を牽制する。
この場ですぐに攻撃を仕掛けないのは利口な行動だ。
だが、私は思うのだ。
「いつ、私が気を抜いて良いなんて言った?」
「……何を言っ……てっ!?」
「私の戦闘フェイズはさぁ……まだ終わってないんだよねぇっ!!」
腰鞄から取り出した大量の木の柄を、上空へとバラ撒く。
それ共にシャッハ君がオーガよりも巨大な両手を形成し、土を抉り、巻き上げる。
「刀剣築城ッ!!!」
「全員、構えろっ!!」
全ての柄が剣へと変わり、砂煙の奥から男たちの目前とする大地に次々に突き刺さっていく。
一本づつ、刀身が大地に突き刺さっていく音と共に、奴らの混乱と恐怖に満ちた声が聞こえてくる。
あァ……なんて心地良イのだろウカ。
もう一人の私から溢れ出る、どす黒い何かに引き込まれそうになる。
きっとこれがエリックを震撼させた、アレになる時の感覚なのだろう。
だが今引き込まれるわけにはいかない、だってこれは……守るための戦いだもの。
己を律し、最後の剣を創造してそれを両手で構える。
「八首阿修羅。」
終わりであり、始まりの合図と共に私を覆う砂煙が切り開かれる。
そして、恐怖におののく奴らの目の前に現れたのは……。
―――白き八つの大腕を背中に構える、まごうことなき阿修羅だった。
中二病、大分発揮した気がする。




