第74話:鬼面楚歌、浮かれる餓鬼と、覗く阿修羅
ぜぇはぁと言う荒い呼吸と共に、私の足はガタガタと悲鳴を上げながらその場に立ち止る。
そして私の前を悠々と飛び越していったプリニアが哀れんだ表情をこちらに向けて一言。
「デア……貧弱。」
洞窟の大きな空洞を塞ぐように張られたご自慢の巣に、あの骸骨戦士を絡めとりながら。
プリニアの完璧としか言いようのない功績を前に、私としてはぐうの音も出ないわけだが。
やっぱ……身体の構造の作りのずるさはあるんじゃないんですかね、プリニアさん?
「プリニア、そろそろ私がミコトだってことを理解して欲しいかなぁって。
でも、骸骨を取っ捕まえたのはほんとでかした。」
「えへへ……。」
おいおい、そんな純粋な反応されたらこっちも憎めないじゃないか。
ずるい、ずるいぞプリニアっ!!
「まぁ……それでだ。この骸骨どうしようか。」
「ん、何となく途中でわかってた。
デアはこれの事良く分かってないんだよね?」
「ん?この骸骨がリーダー格とかそんなんじゃなくて?
仲間めっちゃ召喚してたし。」
「んーそれもあるけど。これ喋ってたのがダメって言うのかな。」
あっ、喋ってたのってこの世界の骸骨の初期仕様とかじゃないんだ。
んー……どう言う事だろ?
「喋ってると何がダメなの?」
「これを操ってる奴がいる。」
「あーー……なるほどねぇ。」
つまり、まだ大ボスが後ろに控えているって事ですか。
「それってちなみに人間?」
「ん。変な人間たちが使う。」
「変な人間たち?」
「ん、変なの。」
変なのって言う以外にプリニアの中では言いようがないのか。
一体どんだけ変なのなんだかねぇ。
まぁ、今大事なのは取り敢えず……。
「詰まる所、こいつは破壊しないでそいつらを警戒して進んだ方が良いって感じかな?」
「んーーー……たぶん?」
「おっけ、だいたい理解した。」
プリニアの言う変なのを拝むために、私たちは足音に気をつけながら先へと進んでいく。
そして予想よりも早い段階で……その変なのらの話声が聞こえ始めた。
しかも……二人や三人だけではない様だ。
「お前たち、こんなことをしてタダで済むっ…‥がぁっ!?」
鎧を着こんだ20代前後の青年が、黒いフード姿の男に強力な蹴りをお見舞いされていた。
うん……これべた~な展開来ちゃった感じかなぁ?
「お前さっきからギャンギャンうるせぇんだよっ!!ぶっ殺すぞっ!!!」
「……ごめんなさい。静かにさせますから……暴力だけは……。」
「たくっ、護衛対象に世話焼かせて無様だなぁ?……雑魚騎士さんよぉっ!!」
少女のお願いの甲斐なく追い打ちの蹴りをもろに顔面に食らう青年。
少女は服装としゃべり方的に恐らくどこかの貴族のお嬢様かなんかじゃないかなぁ……。
しかしあの男も柄悪いなぁ……盗賊?
いや、見た目的には悪の組織的な何かか。
「そこまでにしろ。その男も連れてくるように言われてるんだ。
余計な傷をつけるな。」
「も、申し訳ありません……。」
「それより屍兵はまだか?どこまで走らせてんだ、間抜けが。」
「申し訳ありません……もう戻ってきてもおかしくないはずなんですが……。」
遠隔操作はできるけど骸骨の状況はわからない感じかぁ……。
見張りとして置いてたんだろうけど、諜報目的としては非合理的な使役だな。
「……デア、どうする?」
蜘蛛女の声が冷たく響く。
「まぁ……見過ごすって選択肢はないかな、殺しはまずそうだし。
だから可能な限り痛めつけて、さっきの骸骨みたいに捕まえたいとこって感じで。」
「……ん。」
敵の戦力もちゃんと把握しないで突っ込もうとか。
ちょっと私、調子乗り過ぎってのは自覚してる。
「念のため仮面付けて。
そうだね……身元がバレない様に、人じゃなくて怖っわい化物顔で。」
「ん。」
でもね。
私もプリニアと同様にグラウじいちゃん特性の変装マスクを装着する。
そうだな……私はピエロのお面にでもしようかな。
私たちのお面はグニャグチャのその形を変え……。
まさに魔王の幹部に相応しい、悪鬼の相貌へと変形させていた。
さて、黒フードの男たちは全部で1、2……7人。
人質はさっきの2人と……無残に項垂れる女の子が2人か……。
……。
……冷静、冷静。
いいか私、他人の私がやるべきは……あの糞どもの捕獲だけ。
それ以上は彼女たちが決めるべきこと。
だから……うっかり殺すんじゃないよ、私。




