第67話:下ごしらえ、幼女と、幼女の、幸せバーガー
「あーらら、二人とも顔が真っ白になっちゃったね。
拭いてあげるから、こっちおいで。」
「ん~~。」
粉だらけになった顔を拭いてあげると、プリニアの表情がマシュマロの様に溶けていく。
幸せそうに解けていく顔に、私の心も自然に緩んでいった。
「はいっ、もう大丈夫。それじゃ、次はマイノちゃんね。」
「えへへ……お願いします。」
照れ臭そうににやけるマイノちゃん。
顔を拭いてあげるなんて他愛もない行為に、ここまで嬉しそうにされると嫌でも同情心をくすぐられる。
親の顔も知らず、何も悪い事をしていないのに隠れて暮らさなければいけない可哀想な少女。
この歳なら外で無邪気に遊び、母と父を恋しく思うのが普通なのだ。
なのに彼女は泣き言一つ言わずに、兄を想い、前向きに人生を歩んでいるのだ。
あっ、ヤバい。涙出そう。
「……ミコトお姉ちゃん?」
「何でもない、何でもない。ちょっと目にゴミが入っちゃって。」
我ながら酷い誤魔化し方だと思う。
「……大丈夫?」
あっ、ヤメテッ!?
そんな追い打ちをかけるような健気な表情は刺さるっ!
「大丈夫、大丈夫!それより二人ともありがとね。
おかげで明日には出店できそうだよ。」
結構な重労働ではあったけど、二人のおかげでパン生地は何とか完成できた。
ハンバーグの方は数量限定にして、基本はただの一枚肉にすることで当日の作業量を減らしたし。
後は、エリックが材料の方を収穫してきてくれたらテリヤキバーガー計画は完成したも同然。
何やかんやで順調に異世界サクセスストーリーは進んでいる。
……はずなんだけどなぁ。
この前のエリックの顔を思い出すたびに、私の心を曇らせてくる。
結局のところ、何でもないの一点張りで本当の所を聞くことはできなかった。
グラウのじっちゃんにも聞いたけど、そっちも空振り。
数日たったらいつものエリックには戻っていたものの。
たまに意味もなくボーっとしてるし、何となく陰りがまだ残っているようにも感じる。
とは言え、本人が何か言ってくれない以上、私が出来るのは話してくれるのを待つのみだ。
そして、ただ待つくらいならば。
前向きに別の事を進めて行く、それが私の信条と言うものだ。
「二人とも汗かいたでしょ?
後片づけは私がやっておくから、二人はお風呂に入っといで。」
幼女二人は目を丸くして顔を見合わせる。
「やっ。」
プリニアが私の方に不機嫌そうな顔を向けて、即答で拒否する。
「いや……ここで拒否られてもなぁ……。」
「私もやっ!」
「えっ!?えぇ……。」
今度は万遍の笑顔で拒否してくるマイノちゃんに、流石に困惑する。
素直な天使たちが、急に風呂嫌いを主張する物臭小悪魔に成り果てたのだ。
「私たちも最後までお片付け手伝うから、終わったら一緒に入ろ?ミコトお姉ちゃん。」
「マイノの言うとり!んっ!」
訂正、私はロリっ子天使たちに胸キュンホールドを決められた。
いやほんと、何この勝ち組空間!?
私、大勝利過ぎないっ!?
―――しかし
この時の私はまだ気づいていなかったのだ。
いや、余りに自分がこの空間になじみ過ぎていたと言うべきか。
何にせよ、私は風呂場について初めて気づくのだ。
美少女幼女たちと一緒にお風呂に入るのは、中身おっさんだったと言う事になっ!!




