第68話:開店、美食少女と、天国へのハンバーガー
「とおちゃん!今日は何食べよぉね!」
「ハッハッハ、お前は相変わらず食べるのが好きだねぇ。
お前はほんと、変わってる子だよ。」
小さな少女は父親のその言葉に顔をむすっとさせて、頬を膨らませる。
「リィちゃんは変じゃないよ!みんなが変なのっ!
こんなにおいしい物がいっぱいあるのに、どうしてみんな食べないの?」
世間において、食とは一日のエネルギー源としての役割が主であり。
どの原材量も「甘さ」故に、似たような味になってしまうのが問題なのである。
しかも味の水準自体は高いが故に、不満は起こらず、味への探求心も薄いのだ。
寧ろこの少女こそ、極々稀な存在と言えるのだろう。
「とおちゃん!?」
「おぉっ!?急にどうしたんだい、そんな大きな声をあげて。」
まるで歌舞伎の様な独特のポーズで急停止した娘に、遅れて反応しつつも驚く父親。
「この匂い……やばいよ!とおちゃん!!」
「お前は相変わらず鼻も良いんだねぇ。
でも、お前がそんなに面白いポーズを取るなんてよっぽどなんだねぇ。」
娘同様、独特のゆるりとした感性で娘を楽しそうに見守る父親。
「とおちゃんあっち!!」
「はいはい、わかったよ。ほら、急いでもいいけど手は放しちゃダメだぞぉ?」
「あっちあっち!!」
目の色が獣の様に変わった娘に引っ張られながら、父親は楽しそうにいざなわれて行った。
「お姉ちゃんっ!……テキ、ヤキ?これ二つちょうだいっ!」
「テリヤキ二つね。それじゃ、焼くからちょっと待ってね。」
「えっ……?」
黒髪の若い女店主がそういうと、屋台に設置した調理場でパティを焼き始めた。
「なにこれっ!とおちゃん、凄いよとおちゃんっ!!」
「その場で焼くなんて確かに凄いねぇ。
とーちゃんもこういう催しは初めて見たよ。」
幼さ故に語彙力のない娘が更に語彙力を失っていく。
しかし、これに関しては父親も語彙力がなくなるのも納得すると言ったところであった。
何故なら、既に作ってきたものを受け渡すような形が世間では一般的であったのだ。
本来は女性が調理しているのも不思議な光景なわけだが、変り者親子にはそれよりも注意を引くぐらい驚くべき事であった。
そうこうしている間にあっという間に焼きあがる肉の塊。
そして、ただでさえ良い匂いを立ち上げる肉汁の上に、甘く香ばしいタレの雨が降り注ぐ。
その光景に、娘の口の中は洪水となって悲鳴を上げ。
食に対して興味のなかった父親さえも、初めての香りに喉仏が自然と音を鳴らしていた。
「はい、お待たせしました。テリヤキ二つになります。」
葉に包まれたテリヤキハンバーガーを娘は目をキラキラと輝かせながら受け取る。
父親もお金を払いつつ、漂う香りを堪能していた。
そして娘の口が大きく開かれ、カプリとかじりつく。
その瞬間!パティの堤防が崩れ去り、中から肉汁の海が口の中いっぱいに流れ出す。
ハンバーグと言う、初めて体験する肉汁の感覚に少女の身体が感動で震え出す。
だがっ!それだけではテリヤキは終わらないっ!!
遅れて食べだした父親にも衝撃が襲うっ!!
テリヤキソース、それは最も未知なる新しい味の革命。
甘く……そして辛い新感覚の第二派が父親の目を限界まで開眼させる。
だがっ!それでもまだテリヤキバーガーは終わらないっ!!
それは第三の追撃!更なる新しい味の革命っ!
そうそれは……マヨネーズっ!!
ハンバーグにテリヤキソースと言う強烈な味の革命の前でもその存在は奥からズバッと訪れる。
追撃の酸味ィッ!そして、後から交じり合うまろやかさぁっ!!
最後のワンツーパンチが少女をノックアーーーーーーウツッ!!!
余りの衝撃に少女の身体は限界まで震えだしぃ!!
白目を向かせて、後方へと無防備に倒れさせた。
「お、お客さんっ!?」
一口食べただけで、いきなり白目を向いてぶっ倒れた少女に慌てふためく女店主。
当の娘の父親はと言えば、テリヤキバーガーへの感動で娘そっちのけで感動していた。
「うまっ……。」
「いやっ、お父さんっ!?」
「えっ……?あぁ、これ凄いですよ……って、リリィっ!?」
こうしてテリヤキバーガー店第一号のお客様は無事、昇天を遂げたのだった。
テコ入れ回、それはっ!唐突な食戟っ!!
よっ、予約投稿は今日中にしてたから!
キリのいい数字で投稿しようと思って忘れただけだからっ!!
……やっちまったなぁ!




