第21話:異世界製品、備えあれば、憂いあり
「・・・これは?」
「火打ち瓶だよ。
この辺に関してはほんとに知らないんだな、お前。」
そう言ってハスマッチョから差し出されたのは
目薬のような小さく丸べったい透明な容器に入った・・・
―――赤い液体だった。
まぁ、名前からして、様は火を起こすアイテムなのだろう。
まさか、こんなタイミングで
胃世界の不思議アイテムに触れることになろうとは・・・。
嬉しいような、悲しいような、複雑な気持ちだ。
―――ハスマッチョ先生のレクチャーによると
この火打ち瓶の液体をちょこんと垂らすと、垂らした先が燃え上がるらしい。
しかし
持ってみた時の重さの感じといい
蓋を回して開けた時の注ぎ口の形状といい・・・
まんま、目薬である。
仕組みに関してはさっぱりだが
私の知ってる世界と何らかの関係性を持っていたりするのだろうか?
異世界・・・実に不思議な所だ。
―――ハスマッチョ先生から他にも、数々の支給品を手渡される。
『衝撃緩和シューズ』
履くことで、どんなに高い場所から飛び降りても
その衝撃がすべてゼロされるらしい。
色は水色。
形としては、子供用のゴムシューズの様なシンプルなデザイン。
しかも、気泡が所々に見えて正にゴム製に見えるというか・・・。
その辺は履いてみて・・・すべてを理解した。
これ、スライムだ。
履いた瞬間、足の指と指の間にヌルっとゲル状の何かが入り込んできた。
それと同時に自動的に私の足のサイズに靴の形が調整されていく。
便利だなぁ。
形状変化が止まると
靴の中はブヨブヨのスライムが足に張り付いてる感じになっているが
外側に関しては固いゴムの様な硬さで、靴の形状を維持させている。
ウォーターベッド製の靴を履いているみたいで、ひんやり気持ちがよかった。
尚この時、私は初めての体験に思わず艶っぽい声を上げ。
それを見ていたハスマッチョは顔を赤らめてそっぽを向いていた。
正直、私もちょっと恥ずかしかった。
―――他にも
腕輪から糸状の粘液をワイヤーショットの様に飛ばして怪盗ごっこを可能にさせる
『粘液ワイヤー』
十数回揉んでから投げつけると
最大で直径5mくらいの円形の粘液布団に膨張して相手を包み込む
『粘液ボム』
口と鼻を粘液で塞ぎつつも、それ以上奥へは流れ込んでこず
粘液自身から発生する酸素で呼吸を可能にさせる
『粘液カバー』
見た目は革製の如何にも異世界な布袋に見えるが
物を入れるとちょどいい大きさに膨らみ、真空保存を可能にする
『粘液袋』
ちなみに火打ち瓶以外、衝撃緩和シューズを含めた全てがスライム製らしい。
―――うん。
この世界どんだけスライム頼りなんだよっ!!?
流石にこんなんツッコむわっ!!
確かに、便利な性質持ってるのは認めるけどさー。
スライム君も頑張りすぎだろぉー。
でも、まぁ・・・ね?
そんなツッコみが冴えちゃってる私ではありますがね?
それはそれとしてね?
―――今、私はさ・・・
超猛烈に感動しているっ!!!
だって!!
だって、何だよ!!
このド〇えもんの秘密道具シリーズみたいなラインナップたちはっ!?
もう、こんなん男の子の夢のおもちゃ箱じゃないかっ!!!
これらの不思議最高おもちゃたちを遊びつくすだけで
異世界生活を満喫できた勝ち組と断言してもいいっ!!
特に粘液ワイヤーなんて、すごく遊びたいっ!!
森の木にくっつけたりして、怪盗ごっこめっちゃしたいっ!!
いや、粘液ボムだって使い方次第でめっちゃ楽しい事出来るかもしれないっ!!
粘液カバーだって、水の中とかで使って、水中探検とか出来たりもするのかな!?
いや、それだけじゃなくて全部組み合わせたりすればもっと凄い事出来るかも!!
きっとこれだけじゃなくて、まだ見ぬ異世界製品もいっぱいあって・・・。
遊ぼうと思ったら、一生をかけたって遊びつくせないんだろうなぁ・・・。
あぁ、ほんと・・・本当に。
・・・悔しいなぁ。
―――きっと、これが最後の見納めになってしまうのだろう。
私はこの戦いで・・・死しんでしまう気がするのだ。
あくまでも、これは何の確証もない感覚だ。
でもさ、もしもシャッハ君が私に悲しみを向けてきたら
きっと私は・・・
全てを、受け止めてしまうと思うのだ。
きっと・・・逃げるという選択肢が消えてしまうと思うのだ。
なんとなく・・・なんとなくだが、そうしてしまう気がするのだ。
―――これがきっと『母性』と言うものなのだろう。
その気持ちを持ってしまったことを、不幸だとは思わないし。
むしろ・・・誇らしくすら思う。
・・・でもさ。
自らの最後だって言うのにさ。
こうやって、『昔の私』が塗り替えられて、薄れて行く感覚がさ。
・・・実に寂しくてさ。
・・・・・そして、恋しい。
―――昔の私なら、こういう時どうしただろうか?
やっぱり・・・逃げたかな?
いや、でも誰かのためなら・・・もしかしたら身体を張っていたかもしれない。
その程度には情があったと、私は私を信じてあげたい。
―――だからさ
私は少し照れてそっぽを向いているハスマッチョに駆け寄り
その大きな手を両手で取って、しっかりと彼の顔を見つめ。
私は、頬をほんのり赤らめる。
―――そして・・・
その手に、私の胸を押し付けてやった。
―――フフッ・・・どうだ私?
キスでもすると思ったか?
それとも、抱きしめるとでも思ったか?
この恋心は、私には止められないのかもしれない。
もうこの身体は、私の物ではなくなっているのかもしれない。
―――でもさ
今のは・・・君には、できなかっただろう?
ただの準備回にするつもりだったのだがね。
意図せずこんなことになってしまった。
でも、僕満足っ!!
ちなみに、第1話をちょっと一新してみました。
少しづつ実力がついてればいいなぁって、そう思います。




