第10話:拭い愛、36時間と12分前から愛されていた。
トイレットペーパー君の余りの可愛さにやられてしまった私は
トイレットペーパー君を抱きしめては頬ずりして、抱きしめては頬ずりしていた。
もちろん、その小さな身体を締め付けないように優しくだ。
何度目かの頬ずりの最中で、私は、今行われている行為を客観的に捉え始めた。
「・・・ハッ!?」
これって、可愛いぬいぐるみをベッドの上で愛でいてる女の子というより・・・
この子をティッシュ代わりにして顔を拭いている
ただの鬼畜外道なのではないのかと。
慌ててその行為を中断し、トイレットペーパー君を膝元に降ろす。
そして、顔面蒼白の私の瞳に映ったものは・・・
下を向いて震える、トイレットペーパー君だった。
完全にやってしまった。
「ごめん、ごめんよぉおおおおおおおおお。」
「そ、そんなつもりじゃなくてね!?」
「これはそう、不可抗力と言うかなんというか・・・。」
「・・・てかそうだ、何か拭くもの!拭くもの探さないと!!」
散々自分の顔拭き代わりに使っていた奴が、一体何をぬかしているのかと言う。
私がトイレットペーパー君なら、間違いなく盛大なフックショットを決めている。
いや、と言いうか寧ろ、殴ってください。
何ならさっきの倍のエグさのでお仕置きでも構いません。
いやほんと、私はどう使われてもいいんで、その傷ついた心を癒させてください。
私にできることなら何でもします、何でもしますから、だから
「泣かないでええええええええええええええええええ!!」
途中からもう、ただのド変態発言にしか聞こえなかったような気もするが
でも、そのぐらい、私は慌てふためいたのだ。
まるで可愛い我が子を泣かせてしまった母親の様に。
そして、その時は来た。
トイレットペーパー君は、震えながらも、ゆっくりとコチラに視線をロックする。
それを確認した瞬間
腹部に中々に強烈な力が加わり、私は後方にノックダウンされた。
それでいい・・・それでいいのだ。
ここまで来れば
私に課せられた役目は、この身体を使って全力でお慰めすることのみ。
さぁこい、来るのだトイレットペーパー君!
そのありったけの怒りを・・・
「この愚かな私にぶつけるのだっ!!」
しかしだ。
そんな超ドМ発言をして、いくら待てども何も起こらず。
というか、私を押し倒し、腹の上で震えているその子は・・・
ただ、私に抱きついていた。
いや、その丸く愛らしい頭部を、力の限り擦りつけていた。
そう、それはまるで・・・
母親に抱きすがる小さな子供だった。
そこで私は、この子に対してしてきたことを思い起こす。
そして、気づく
己の余りの愚かさに
この子が今まで感じていたであろう悲しみに
その健気さに
きっと、心引き裂かれていたであろう、その苦しみに
『私は、この子と出会ってすぐに何をした?』
手に巻きつけて痛みを肩代わりさせ
加減なんてせず、力いっぱい木に叩きつけ
勝手に口に含んで、理不尽に吐き出した。
『それでもこの子は私に怒りをぶつけてきたか?』
・・・いいや。
それどころか、そんな愚かな人間を追いかけて、身を挺して助けてくれた。
なのに私は、そこまでしてくれたこんな心優しい子を・・・
無慈悲に蹴り飛ばしたのだ。
痛かっただろう
辛かっただろう
思いが伝わらなくて苦しくて
きっと、何もかもが悲しくて
悲痛な叫びをぶつけるしかなかっただろう。
こんな人間、早々に見限ってくれて構わなかったのだ。
それでも君は、私に愛されようと、まだこんなに必死になって。
私なんて、愛されるような価値なんてない、ただの馬鹿なのに。
「ごめんなさい。」
何をしたって、もう許されないかもしれない。
深く傷つけてしまった彼の心を
癒してあげることなんか到底できないかもしれない。
だから、これはただの自己満足だ。
それでも
少しでも、今の私の気持ちが君に伝わってくれると信じ
ありったけの謝罪の句を、嗚咽と共に垂れ流しながら
私は・・・その愛しい人を抱きしめた。
記念すべき10話に相応しい、自己満足回。
これ以上、何か述べることもあるまいて。




