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エロ漫画に登場する最悪のクズ男に転生にしたけど、漫画のような鬱エンドは見たくないとヒロイン達を救うことにした  作者: 柚希乃愁


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8/12

偶然の出会いは想定外の展開に

 日曜日の夕方。


 俺は食料を買いにスーパーへ来ていた。


「マジでどうすっかなぁ……」


 ただ、頭の中ではぐるぐると同じことで悩んでいた。


 何を買うかなんて話じゃない。

 買うものはカップラーメンと決まってるからな。

 後はペットボトルの水も忘れないようにしないと。


 って、そうではなく、俺は慎也達をぶっ潰すと決めてから気づけば考えてしまっているんだが、未だにいい方法を見出せないでいる。

 それは、どうやって美涼を廃倉庫に行かせないようにするか、だ。

 慎也達の目論見が目論見だ。万が一にも美涼を危険な目には遭わせたくない。


 だが、彼氏の言葉を美涼は疑いもしないだろう。

 逆に、俺が何を言っても聞いてはくれない自信がある。


「ダメだ。やっぱ何も思い浮かばねえ……」


 ずっとこれの繰り返しだ。一旦、考えるのを止めるために、俺は頭を軽く振った。

 買い物かごには、すでにカップラーメンと水が入っている。

 いつも買っているからか、考え事をしながらでもちゃんとかごに入れられるんだから習慣というのはすごいものだ。


 後はレジに行くだけ、そう思って向かおうとしたときだった。


「龍賀くん?」

「あん?…桃瀬?」


 俺の名を呼んだのは私服姿の望愛だった。


「やっぱり!すごい偶然ね。私達意外と家が近いのかしら?」

「……そうなのかもな」


 買い出しに来たら望愛とばったり出会うとか、偶然が過ぎるだろ。

 つい、疑いの眼差しを向けてしまったが、望愛がにっこにこの笑顔で偶然だって言うもんだから、同意するしかなかった。


「何だかすごく難しい顔してたけど、どうしたの?」


 望愛が俺の顔を覗き込むようにして尋ねてきた。


「……何でもねえよ」


 よく気がつくもんだ。

 望愛の真っ直ぐな瞳が何だか俺の内側を見透かそうとしているみたいで、思わず目を逸らしちまった。

 おかげで、ちょっとだけ言葉を返すのが遅れちまったじゃねえか。


「そう?……あ、もしかして、夜ご飯を何にするか迷ってた、とかかしら?」


「そんなもん迷ったりしねえよ」


 望愛がわざとらしく見当外れなことを言ってきたから、今度は苦笑交じりですぐに答えた。


「でも、かごの中がカップラーメンばかりよ?」


「早い、安い、美味い。最高だろ?」


 これは本心だ。調理器具は一通り持ってるし、できない訳では決してないが、一人だとどうしても食事は簡単に済ませてしまうことが多い。それは前世の記憶を思い出した今も変わらなかった。

 龍賀玲旺は、カップラーメンに大変お世話になっているのだ。


「美味しいのはわかってるけど……。それじゃあ、今日の夜ご飯は何を食べるの?」


「カップラーメンだが?」


 あれ?望愛が真顔になっちまった。


「…………そう。ちなみに、昨日の夜は何を食べたの?」


「もちろんカップラーメンだが?」


 望愛が心配そうな顔になって……、


「……龍賀くん。夜にカップラーメンばかりっていうのはさすがに体に悪いと思うわよ?」


 いや、実際に心配してくれているようだ。


「まあ、そりゃわかってるけどな。つっても、高校入ってからずっとだし、まだ若いんだから全然問題ないだろ」


「高校からずっとって……」


「俺、一人暮らしだからさ。米とか調味料はさすがにあるけど、料理ってなると中々な。で、自然とって感じだ」


「龍賀くん一人暮らしだったのね。でも、ご両親が知ったら、その食生活は心配なさるんじゃないかしら?」


「俺に両親はいねえ」


 自分でも驚くくらい低く冷たい声が出てしまい、マズいと思ったときにはもう遅かった。


「え……?」


「あ、いや、悪い。何でもねえんだ。余計なこと言っちまったな。まあ、あれだ。ただ単に俺を心配するような奴はいないってだけの話だ」


「そんな……」


 本当に余計なことを言っちまった。

 別に俺としては誰に知られても困ることではないが、望愛に言うべきことじゃないってのは間違いない。

 ほら見ろ。望愛が悲しそうな顔になっちまったじゃねえか。

 もしかしたら、いけないことを言ってしまったとも思っているのかもしれない。

 本当に心優しい女の子なんだろう。


 俺は反射的に望愛の頭に手をやろうとして―――すんでのところで肩に手を置いてポンポンと軽く叩いた。


 くそ。マジで調子が狂うぜ……。


「そんな顔すんな、桃瀬。綺麗な顔が台無しだぞ?……お前は、笑ってる方がずっといい」


「っ、龍賀くん……」


「本当に悪かったな。じゃ、気をつけて帰れよ?」


「ぁ…ま、待って!」


 レジに向かおうとした俺の手を望愛が握ってきた。


「ん?」


「ご飯!そう…、今日のご飯、私が作ってあげるわ。この間ナンパから助けてくれたお礼も兼ねて。ね?だから今から龍賀くんの家に連れて行って」


 望愛の表情、眼差しから、彼女が真剣に言っていることは伝わってきた。

 だから俺は―――。


「却下」

 即座に否定した。



 その後、しばらく問答が続いたが、折れたのは結局俺の方だった。

 いや、折れざるを得なかったと言った方が正しい。

 スーパーなんて他人の目がある中で、見た目ピンク髪清楚系美少女が懇願し続け、金髪不良男が断り続ける図は悪目立ちし過ぎだったのだ。

 漫画で、昇のことを想い、簡単には玲旺に屈しなかったのと同じような、望愛が持つ意志の強さとでもいうべきものをこんなところで発揮してほしくはなかった。


 そうして、両手に二人分のレジ袋を持つ俺と、ずっとニコニコして楽しそうな望愛は隣同士並んで歩き、とうとう俺のアパートに着いてしまった。


「ここ?」

「……ああ」


 ため息がこぼれる。


 今日なんて、漫画では描かれないただの日常、のはずだった。

 それがまさか、望愛とどうこうなる前に、彼女が俺の部屋に来ることになるなんて、想像すらしていなかった。

 本当にごく最近少し話すようになった程度で、一人暮らしの男の部屋に来るのは、さすがに警戒心が無さ過ぎだろ。

 逆にこっちが心配になってくるくらいだ。



「……桃瀬、やっぱ送ってくから帰れ」


「嫌よ。せっかくここまで来たのだから」


「お前なぁ……」


「……その……そんなにダメ?」


 くそっ…、そりゃ反則だろ。

 上目遣いでそんな不安そうな顔すんなよ……。


「はぁ……。散らかってるけど文句言うなよ?」


「っ、ええ!」


 こうして、漫画とは全く異なる展開で、望愛を俺の部屋へと迎えることになった。




「ここが龍賀くんの部屋なのね。ふふっ、確かに綺麗とは言えないかもしれないわね」


「うっせ」


「けど、物が少ないからかしら、散らかってはいないと思うわよ?」


「そりゃどうも」


 前世の記憶を思い出して、部屋の掃除をするようになったのが功を奏したようだ。

 それまでの部屋だったら、望愛の反応は全く違ったものになっていたに違いない。


「それに、男の子の部屋って感じがするわ。ダンベルなんてあるし」


「筋トレが趣味なんだよ」


 部屋に転がっている二つのダンベル。

 これは前世を思い出す前からの趣味だ。そして今は取り組む時間が長くなっていたりする。以前なら、女遊びで発散させていた有り余る体力の使いどころがこれしかないからだ。


「龍賀くんの体、すごく逞しいものね……」


 なんでこの女はそんな情感たっぷりに色気のある声出してんですかね!?

 目まで潤ませて……、何なんだいったい!?


「……桃瀬?」


「っ、いえ、何でもないの。さ、さてと、それじゃあ早速ご飯の準備するわね」


「……なあ、本当にいいのか?」


「ええ、もちろんよ。母には偶然会った友人とご飯を食べることになったって伝えたから」


「はぁ……わかった。じゃあ、俺に何か手伝えることは―――」


「大丈夫。だから龍賀くんは座って待ってて?」


「うす……」


 言葉の途中で遮られる感じになり、ちょっとへこんだ。

 俺だって前世で長い間一人暮らしをしていて、自炊も時々はしてたんだ。

 だから、手伝いくらいはできるんだぞ?………たぶん。


 それからすぐに望愛はキッチンで料理を始めた。


 その姿があまりにも新鮮で、俺は、つい目を離せなくなってしまった。

 途中、リズムに乗った鼻歌まで聴こえてくる。

 何度か目が合ってしまったのだが、その度に望愛は笑みを浮かべて、もう少し待っててね、と可愛らしい声で言って料理を続けていく。


 こういうのを穏やかで温かな時間、というんだろうか。

 今まで経験したことのないモノだから戸惑いが大きい。それは前世の記憶を思い出した今も変わらない。

 ずっと浸っていたくなるほど心地いいが、俺はつい美涼のことを考えてしまう。

 美涼には彼氏に裏切られるという地獄のような時が迫っているから。

 何とかして当日美涼が関わることなくすべてを終わらせたいんだが……。



 考え事をしていると時間が経つのはあっという間だった。


「お待たせ、龍賀くん。あまり待たせ過ぎるのも悪いから()()()簡単なものにさせてもらったわ」


「おぉ……」


 俺は目の前に広がる望愛の手料理に心を奪われていた。


 望愛が作ってくれたのは、ハンバーグとサラダ。そして白米とみそ汁だった。

 美味しそうな見た目と香りに、唾液が勝手に出てくる。


「お口に合えばいいのだけど……」


「……いただきます」


 逸る気持ちを抑えてちゃんと手を合わせる。

 そしてハンバーグを一口食べた。

 瞬間、肉汁が口中に広がる。


 うっま!マジでウマい!


 そこからはもう一心不乱にハンバーグ、白米、みそ汁、時々サラダと頬張っていく。


「美味しい?」


「ああ!めちゃくちゃウマいぜ!マジで!こんな美味いもん食うの、いつぶりかわかんねえ」


「ふふっ、よかったわ」


 俺の感想を聞いた望愛も食事を始める。

 食事中、望愛は俺の食べる姿を見ながら終始笑顔で、俺は少し気恥ずかしかったが、料理の美味さには勝てず、なるべく気にしないようにして食べることに集中するのだった。

お読みくださりありがとうございます。

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