他を知ったからこそはっきりしてしまった
「あん?」
俺はそんな二つの声に反応し、参考書をめくる手を止めて顔を上げた。
そこにいたのは望愛の友達二人だった。
休み時間に望愛と話しているのを見かけたことがあるし、俺に話しかける望愛を心配し、けれど最近は静観するようになったうちの二人だ。
俺のクラスメイトでもあるのだが、当然話したことはない。基本的にクラスメイトにも未だ避けられてるからな。ははっ………はぁ……。
けど、そんな状況なのに、どうしてこの二人は望愛と一緒に俺の席まで来たんだろうか?
「私がそんな冗談言う訳ないでしょう?玲旺くんは期末テストの勉強すごく頑張ってるのよ?」
望愛が彼女達に呆れた目を向ける。
頑張ってるとか目の前で普通に言われるとちょい恥ずいからやめてほしかった。
物珍しそうに俺の顔と参考書とで視線を行ったり来たりさせているところだった彼女達は、顔を上げた俺と目が合うと、揃って気まずそうに視線を逸らし、誤魔化すように「ははは」と棒読みで笑った。
がっくりくるぜ。睨んでる訳でもないのに、やっぱビビられちまうんだな。
「いや~、疑ってたんじゃないよ?ただちょっとイメージできなかっただけでさ」
「そうそう。望愛から色々話は聞いてたけど、あの龍賀が勉強してるってのはさすがにえ?ってなるよ?」
「もうっ」
彼女達が望愛にした言い訳っぽいもので、だいたいの流れは読めた。
こいつら俺が勉強してるのが信じられなくて、興味本位で望愛について来やがったな?もしかすると、さっき目を逸らしたのも後ろめたいとかそういう感じか?
怖いもの見たさってのもあったかもしれねえが、意外なことに本気で俺にビビってはいなそうだ。
「二人とも突然やって来て随分な言い様じゃねえか。ま、自分でも似合わねえことやってんなとは思ってるけどよ」
「ごめん、ごめん。でもさ、龍賀だって自覚あるんじゃん」
「キャラ違い過ぎだもんね」
俺から話しかけても、怖がったり、警戒したりする様子はない。
「ほっとけ」
望愛と美涼は、俺にもよくわからねえ成り行きで今みたいな感じになったが、こいつら以外で、こんな普通に話せるなんて思ってもいなかったぜ。
仕方ないことだと割り切って、気にしてないつもりだったが、結構嬉しいもんだな。
「ね、ね。今やってるのが生徒会長から出されたっていう宿題なの?」
「ん?ああ。今日の放課後がリミットでな。けど、なんとか終わりが見えてきたからよ、美涼には怒られずに済みそうだぜ」
「ぷふっ、会長のことを呼び捨てにしてるのはすごい、っぽいのに、言ってることが違和感あり過ぎてヤバい」
「龍賀が怒られちゃうんだ?さすが生徒会長だね~。けどさ、それで休み時間ずっと勉強してるって……、やっぱすっごい似合わないよ?」
「うっせ。お前らこそ、テスト勉強やってんのか?赤点取って補習になっても知らねえぞ?」
「や、龍賀の口からテスト勉強とか、補習とか出てくるって、めちゃウケるんだけど」
「本当、いつの間にそんな真面目キャラになったの?」
「ふん。高校生活を楽しむことにしたんだよ。まあ勉強は楽しかないが、これもその一環ってことだな」
「ははっ。望愛の言ってたとおり、話してみたら、なんか、印象と全然違うね」
「うん。しかも龍賀って強面で正直ちょっと怖い感じだったけど、よく見れば、結構イケメンだよね」
「なんだ?今さら気づいたのか?」
「何言っちゃってんの。普通自分でそういうこと言う?」
「そんなこと言ってると望愛に怒られちゃうよ?すっごい怖い顔になってるの気づいてる?」
言われてようやく、望愛が会話に参加してないことに気づき、望愛に目を向ける。
……やべえ。これはダメなやつだ。
顔は笑顔なのに、目が笑ってねえ。
「……すまん。ちょっと調子に乗った」
ここは謝罪一択だ。
「そうね。もう勉強を教えてあげないでおこうかと思ったわ」
くっ、今の俺にとって一番の急所を。
望愛の助けがなかったら、美涼の宿題が終わらないことをわかってやがるな?
まだ目が怖えままだし、さっきの謝罪じゃ足りないってことか……。
なら、仕方ねえ。やってやろうじゃねえか。
「それはマジで勘弁してください」
俺は望愛に深々と頭を下げた。
そんな俺達のやり取りを聞いていた二人が、ぶふっ、と笑いを吹き出した。
思わず睨むように見てしまったが、二人とも、怖くもなんともないようだ。
「じゃ、アタシらは勉強の邪魔しちゃ悪いから先に戻ってるね~」
「二人とも頑張って。また後でね、望愛。龍賀もまたね~」
「ええ」
「おお」
二人は、笑いながら手を振って、そそくさと自席に戻っていった。
「……ごめんなさい、玲旺くん。急に友達を連れて来て、勉強の邪魔をしてしまって……」
どうやら機嫌は直ってくれたようで、望愛が謝ってきた。
「いや、気にしちゃいねえよ」
「ありがとう。今までもね、玲旺くんはみんなの思ってるような人じゃないって伝えてたんだけど、勉強してるのがよっぽど意外だったみたいで、話してみたくなったそうなのよ」
「んなこったろうと思ったぜ。ま、怖がられるよりは全然マシだな」
「……そうよね。玲旺くん、すごく楽しそうにお喋りしてたものね」
あ、ヤバい。望愛が再燃しそうだ。
「単に新鮮だっただけだ。それ以上でも以下でもねえよ。そもそも、望愛が頑張ってくれたから、あいつらも俺と話してみようだなんて思ったんだろ?」
「それは、そうかもしれないけど……」
「それによ。楽しそうに見えたかもしれねえが、望愛とあいつらじゃ全然違うんだよ。少なくとも俺の中ではな」
そう。望愛や美涼とは全然違う。他の女子と話せたことで、それがはっきりとしてしまった。
本当、どうしようもねえな、俺は……。
「玲旺くん……?」
「さ、もうこの話はいいだろ?休み時間あんま残ってねえけどよ、わかんねえところあったから教えてほしいんだ」
「ええ。わかったわ」
望愛は残りの休み時間、そしてその後の休み時間も、勉強に付き合ってくれて、俺はなんとか美涼の宿題を終わらせることができた。
放課後の勉強会は、なぜか当然のように俺の部屋で行われることに決まった。
この決定に、俺の意見はもちろん含まれていない。
勉強会終わりには、美涼から新たな宿題を出され、確認は昼休みにすると告げられてしまった。
このときはさすがに、俺はどこまで勉強漬けになるんだと項垂れたぜ……。
しかも、美涼と望愛によって、次の土曜日も勉強会をする流れになりかけたが、テスト前最後の週末は俺に構わず、自分の勉強をしてほしかったため、断固として断った。
決して、もう勉強が嫌だった訳ではない。それをわかってくれたのか、二人も了承してくれた。
まあ、代わりに、赤点は絶対取らないと約束させられたけどな。結局、テストが終わるまで勉強漬けの日々を送ることは確定していたようだ。
こうして俺は、学校の休み時間は望愛に教えてもらいながら勉強し、昼休みは宿題を美涼にチェックしてもらい、家での勉強も一人でしっかりと続けた。
そして、ついに期末テストが始まった。
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