無性に腹が立つ
[日間]現実世界(恋愛) 連載中 3位 になりました!これは偏に、読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございますm(__)mこれからもお楽しみいただけますよう頑張ります!
放課後。
望愛はまだ友達と話しているみたいだったので、俺は図書室に行く前に用を足しておこうと、トイレに向かった。
男子トイレは、俺の教室からだと廊下のほぼ反対側まで行かなければいけないのが毎度面倒だ。
生徒の近くを通るだけで、未だに視線が痛いからな。
ちなみにだが、逆に、女子トイレはすぐ近くって構図になっている。
トイレから出て、教室に戻る途中、廊下で昇が友達二人と話しているのが見えた。
まあ、ただ単に、昇の体がこっちを向いていたから気づいただけで、他意はないからそのまま通り過ぎる、つもりだったんだが―――。
「でさ、ぶっちゃけ桃瀬さんとはどこまでいってんだ?教えてくれよ」
俺から接近しているんだから当たり前だが、途中から昇達の話し声が聞こえた。
そして、昇以外の男子生徒が出した名前に、思わず歩くスピードを緩める。
「望愛とは、その……。も、もちろん最後までいってるけど?」
昇の声、だ。
他の二人が、「おおーーっ!」とテンションを上げる。
「マジで羨ましいヤツだなぁ。あんな美人の幼馴染がいてさ。確か、小さい頃から両想いだったんだろ?」
「一年のときから、桃瀬さんを狙ってるヤツ多かったもんなぁ。でも、いくら告白されても、浅野のために全部断ってさ。すげえ良い子だよな」
「可愛くて巨乳で健気で一途ってか?マジ最高だな!そんな子といつでもエッチし放題とか、羨まし過ぎんぞ、コノヤロー!」
男子二人は好き勝手に喋り、昇も満更でもなさそうな感じでそれを肯定して、一層盛り上がっていた。
そういうのは、もっと人のいない場所でやれよ。
少なくとも廊下なんかで、そんな声量で話してていい内容じゃねえだろ。
俺は昇達にイラっとしていた。
自分でもどうしてこんなにイラつくのかわからないくらいに。
「望愛の裸マジでヤバいから。してるときの声もいつもと違ってめっちゃ色っぽくてさ。すっげー気持ちいいんだぜ?」
昇は調子に乗っているのか、望愛とヤったときの話を自慢げに語りだした。
……わからなくはねえ。わからなくはねえんだ。
望愛は、エロ漫画のヒロインだけあって、可愛くてスタイルも抜群だからな。
そんな彼女がいたら自慢したくもなるだろうよ。
それは普通の感情だと思う。
一方で、男同士で話す内容としては、エロ話ってのも、まあ定番だとは思うぜ。
けどよ、お前が今エロ話のネタにしてんのは、お前の彼女なんだぞ?
それをちゃんとわかってんのか?
確かに、高校生男子にとって、望愛みたいないい女とヤれる男ってのは、それだけで羨望の的だろうからな。お前は今、さぞ優越感に浸れているんだろう。
だが、本来彼氏の前でしか見せない、見せたくないはずの彼女の姿について、楽しそうに話してるお前は、彼女を、望愛のことをちゃんと大切だと思ってるのか?
もしもお前にそんな話をされていると知ってしまったら、望愛がどう思うのか、望愛の気持ちをちゃんと考えてるか?
しかも、そもそもの話、お前の言ってることは嘘ばかりじゃねえか。
お前は、初体験の失敗を望愛のせいにしただけだろうが。
……昇ってこんなクソ野郎だったのかよ。
いや、ダメだ。俺が勝手に決めつけるのはよくない。
漫画では俺が寝取りさえしなければ、付き合い続けてたはずの二人なんだ。
そう思おうとしても、俺の中で昇へのヘイトがどんどん溜まっていくのがわかった。
学校の、こんな誰がいつ通るかわからねえ廊下で、望愛のことを下ネタとして面白おかしく話されていることに、無性に腹が立ってしょうがなかった。
そんな心の赴くままに、俺はわざと昇達に突っ込むように進み、三人の目の前で止まった。
「龍賀……!?」
体の向き的に最初に気づいたのは昇だった。
「なあ、浅野」
たぶん、俺は今、前世の記憶を思い出して以降、最高に極悪な人相をしてんだろうな。
そう自分で思うくらい、俺は昇を睨みつけ、威圧していた。
声も格段に低く、怒気を孕んだものになっている。
「な、なんだよ?」
「俺が言うことじゃねえのはわかってるが、付き合ってる彼女のことはもっと大切にしてやれよ。少なくともこんなところで下ネタにする相手じゃねえはずだろ」
「なっ!?……おま、やっぱり…………」
あん?やっぱりって何だよ?
疑問に思ったが、昇は目を見開いて固まってしまっているため、とりあえず無視だ。
他二人の男子生徒も、さっきまでの高いテンションが嘘みたいになっている。
「お前らもよ」
俺は、そんな二人の男子生徒に鋭い視線を向けた。
「ひっ!?」「は、はいぃっ」
二人とも、全身に力の入った、綺麗な直立不動の姿勢になった。
「こんなところで話す内容じゃないってのはわかるよな?女子に聞かれたら、お前ら軽蔑されるぞ?それとも、そうやって女子に嫌われてえのか?」
普通の男子高校生にとって、それは絶対に嫌なことだろう。
俺の言ったことがちゃんと伝わったのか、二人は頭を下げて謝ってきた。
ため息が零れる。
俺に謝ったってしょうがねえっての。
まあ、言いたいことは言った。
そもそも、本当なら俺はこいつらを怒るような立場にないしな……。
何とも言えない気持ちになったが、俺はそれを振り払った。
望愛をあまり待たせるのも悪いから、俺は教室に戻ろうと、歩き出したんだが―――、数歩進んだところにある階段前で立ち止まることになった。
特徴的なピンク色が視界に入ったからだ。
「っ!?」
バッと顔を向ければ、そこにはやはり望愛が立っていた。
「玲旺くん……」
望愛も俺を見つめていた。
なんで鞄を持ってそんなところに?
いつから?
まさか、昇達の話を聞いてたのか?
俺の頭はフル回転していた。
昇達の位置からでは、死角になって望愛は見えない。
けど、望愛の位置からなら、昇達の会話は余裕で聞こえていたはずだ。
「……望愛。ちょっと移動しよう」
「ぁ……」
辿り着いた仮定に、舌打ちしたくなったのをぐっと堪え、俺は痛くないように望愛の手首をそっと掴み、階段を上り始めた。
今は早くこの場を離れなければという一心で。
だって望愛は、今にも溢れてしまいそうなほど瞳を潤ませていたから。
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