それは夢か現か(美涼)
本日2話目の投稿です&一部胸糞な内容となっていますので、二重の意味でご注意くださいm(__)m
正しくあること。
幼い頃から、両親に言われていた言葉だ。
これは、警察官の父と看護師の母が共に、信念としている言葉なのだと教えてくれた。
私にとっても、それは大切な言葉となり、自分の行動原理になった。
そんな私が、正しくあろうと、児童会、そして生徒会の執行部に入って皆のために働くようになったのは自然な流れだったと思う。
けれど、私が頑張れば頑張るほど、それと比例するように私のことを疎む人や怖がる人が多くなっていった。
あれは忘れもしない小学校六年生のとき。
当時から、私は女子にしては身長が高く、加えて、小学校卒業まで合気道をみっちり習っていて、髪を短くしていた。
きっと、だから、なのだろう。
ある男子グループから、「男女」、「ゴリラ女」と揶揄された。
そして、ある女子グループからは、体育で着替えているときに「アンタって女だったんだ?」と嘲るように言われた。
悲しかった。苦しかった。本当に辛かった……。
それでも、そういった一部の人からの心無い言葉に対し、私は毅然とした態度を取り続けた。
私を信頼してくれる人はそれ以上にいたから。
傷ついた心がジクジクとした痛みを発していることには、ずっと気づかないフリをして。
中学生になり、私は一層精進して、生徒会活動に励んだ。そして、合気道については道場に時々お邪魔させてもらう程度になった。
と同時に、少しでも女の子らしくなりたくて髪を伸ばし始めた。
私だって人並みにおしゃれや恋愛にも興味がある。
私には似合わないってわかってるけど、小さい頃から可愛いモノが好きだし、窮地のお姫様が白馬に乗った王子様に助けられて幸せになるような恋物語が好きだったから。
すると、それと呼応するかのように、私の体に大きな変化があった。
まあ、ただの成長期なんだろうけど……。
胸やお尻といった女性を象徴する部分が一気に成長してきたのだ。
でもそれは、自分で見ても、女性的な可愛さや綺麗さに繋がるものではなく、各パーツが大きくなったことで、高身長と相まって全体的な迫力が増しただけのように感じた。
実際、男子から胸など体の一部を性的な厭らしい目で見られるようになったのが、ただただ不快なだけで、私に好意を寄せ告白してくるような人はいなかったし。
ただ、相変わらず一部の生徒からは毛嫌いされていたけれど、学年が上がるにつれ、後輩女子から慕われることはすごく増えた。
私はこれでいいと思った。
この頃にはもう恋愛というものを諦めていたから。
好きな男子も全然できなかったし。
私にはきっと恋なんて無縁なんだ。
私は、正しく、凛とした人間でありたいとだけ思うようになっていた。
高校生になっても生徒会執行部に入った。
全校生徒の模範となれるように努力し、少しでも皆の力になれるようにと真面目に仕事をこなした。
その甲斐があってか、二年生のとき、9月の選挙で生徒会長になれた。
厳しくも頼りになる、多くの生徒が私のことをそう評してくれていた。
自分でも、まさに順風満帆といった日々を過ごせていたと思う。
そうして、12月のある日のことだ。
その頃生徒会は、文化祭も終わって、ようやく前年度の書類整理をしていた。
その日も私は、書類がいっぱいまで入った段ボールを運んでいたんだ。
少し重いけど大丈夫だろうなんて思っていたが、途中で腕がパンパンになってしまって、限界を感じた私は、一度段ボールを下ろして一息吐いた。
「さすがに一人で運ぶのは厳しかったかな……」
周囲に生徒がいなかったからか、苦笑とともにそんな言葉が口をついて出てしまった。
慌てて首を振って、自分の言葉を否定する。
弱音を吐いてなんていられない。
他の役員だってそれぞれ自分の仕事を頑張っているんだから、これくらい一人でできなければ。
そして、もう一度段ボールを持ち上げようと下を向いたとき、横からスッと手が伸びてきてヒョイと段ボールを持ち上げてしまった。
驚いてそちらを見ると、見知らぬ男子生徒がいた。
「あ、やっぱ結構重いな。青葉会長、これは僕が運びますよ」
「君は……?」
「一年の久住です。どこに運べばいいんですか?」
「あ、ああ。生徒会室に……、って、そうじゃなくて!私が運ぶから大丈夫だ、久住君」
「こういう力仕事は男にやらせとけばいいんですよ。さ、行きましょう?」
「あ、ちょっと待ってくれ、久住君!?」
ちょっと強引だけど、笑顔で私を気遣ってくれた一年生の男子生徒。
これが久住慎也君との出会いだった。
それから彼は度々私の仕事を手伝ってくれるようになって、よく話もするようになったんだが……、私は最初戸惑いが大きかった。
だって、彼は私がまるで普通の……、そう、女の子らしい女の子であるかのように接してきたから。
頼るでもない。性的な目で見る訳でもない。
今まで同年代の男子とそんな風に仲良くなったことなんてなかったんだ。
だから戸惑った。けど、同じくらい嬉しくもあった。
そうして先輩後輩として親しくなっていき、二年生の終わり頃だった。
「青葉先輩。いえ、美涼さん。好きです。僕と付き合ってくれませんか?」
突然彼から告白された。
初めての経験だった。
「か、揶揄わないでくれ、久住君。女らしくもない私を好きだなんて」
冗談としか思えなかった。親しくなってわかったことだが、彼は成績優秀で品行方正だ。いつも笑顔を絶やさず、穏やかな性格で、他の生徒や教師からも信頼が厚い。加えて顔立ちだって悪くないのだから、さぞ女子にモテるだろう。
そんな彼がわざわざ私みたいな女を好きになるなんてあり得ない。
「揶揄っていませんし、美涼さんはすごく素敵な女性だと思っていますよ」
「なっ!?……いや、しかし……」
気持ちはありがたいと思ったし、伝えてくれた勇気もすごいと思ったけど……、正直、困惑と羞恥でいっぱいだった。
それに、私が男子と付き合っている姿というのも全然想像がつかなかった。
「僕のことは嫌いですか?」
「いや、そんなことはないぞ!?君はよく私の仕事を手伝ってくれるし、話してるのも楽しいし……」
「ありがとうございます。それでも付き合うのは嫌ですか?」
「そうじゃない、が……。すまない、正直わからないんだ……」
「なるほど……。じゃあ、お試しで付き合ってみるのはどうですか?それで判断してくれたら僕としては嬉しいんですけど」
彼がそんな提案をしてきて、その後色々話した結果、私には彼を拒みきることなんてできなくて、彼―――慎也君とお試しという形で付き合うことになった。
こんな形で、私に初めての彼氏ができるだなんて、思いもしなかった。
嬉しいとかっていうのではなく、何だかすごく不思議な気分だった。
彼はあくまでお試しだし、周囲から勘ぐられるのは私が好まないだろうから、付き合っていることは内緒にしましょう、とも提案してくれた。
これにはさすがに気を遣わせ過ぎて申し訳なく思ったが、恥ずかしさが勝って、結局ありがたく乗らせてもらうことにした。
それからデートを何度かした。もちろん、私にとってはすべて初めての経験だ。
彼はいつも紳士的で、デートは毎回楽しむことができた。
ただ、手を繋ぐより先のことはしていない。
これは私からのお願いで、キスやそれ以上をするなら、正式に付き合ってから、というか、少なくとも高校を卒業してからの方がいいという考えがあったから。
……そう説明したのだが、本当は慎也君とそういうことをしている自分が全くイメージできなかったというのが大きかったかもしれない。憧れていたものとは何か違っていて、どうしても踏ん切りがつかなかったんだ。
だから、慎也君が笑って、そういう気持ちになったらでいいですよ、と言ってくれたことに、私は安堵した。
月日が経ち、6月のある日のこと。
夕方、慎也君から電話があった。
『美涼さん、今日生徒会休みでしたよね?』
「ああ、そうだけど、どうかしたか?」
『実は、大切な話があって……。二人っきりで話したいので今から会えませんか?』
「今から?大切な話って?」
『電話ではちょっと……。どうしても直接伝えたいことがあるんです』
「わ、わかった。私はどこに行けばいい?」
あまりにも真剣な声にちょっと狼狽えてしまった私は、誤魔化すように話を進めた。
慎也君が指定したのは廃倉庫だった。
どうしてそんなところに?と疑問に思ったが、本当に大切な話で、誰にも聞かれたくはないし、邪魔が入るのも避けたいのだと答えが返ってきた。
なぜか、漠然とした不安を抱いたが、彼氏からのお願いにそれはいけない、と振り払った。
そして、告白、ではないだろうし、大切な話って何だろうとあれこれ考えながら私は廃倉庫へ向かった。
…………。
あ……、れ……?
わたし……どう……?
うっ……くる、しい……?
「あれ?ようやくお目覚めかな?美涼」
「し…んや……くん?」
体が上手く動かせず、頭もぼんやりしていた。
慎也君が私の腰の辺りに立っていて、そこから一定のタイミングで私に衝撃を与えてくる。
そして、下腹部にすごい異物感があることがわかった。
これ、は……?
「そうだよ。おはよう、美涼。今日は今まで無駄に我慢させられてた分も含めていっぱい楽しませてもらうからね?」
慎也君が今まで見たことのない醜悪な笑みを浮かべていて、私の全身に悪寒が走った。
頭が少しずつ状況を理解し始めてきて―――。
「ぇ……ぁ、う、そ……なん、で……。い、や……いや……やめ……っ……いたい、いたいよ!やめて!」
「ん~そういう抵抗のされ方も嫌いじゃないけどさ。暴れられるのはちょっと面倒かなぁ」
「っ……やだ、やだ、やだ!おねがい!やめて!」
必死に体を動かそうとするけど、うまく力が入らない。
「おい、慎也~。早く俺らもヤらせてくれよ~」
そこに知らない男の声が響いた。
慎也君一人じゃなかったんだ。見たこともない男が他に二人もいた。
「仕方ないなぁ。じゃあ、もう一本打ってから、口使っていいよ」
「お、マジで?じゃあ俺からな!」
「あ、ズリーぞ、お前!」
「ははっ、早い者勝ちってな」
「しょうがないなぁ。僕が一回終わったらこっち使っていいよ。僕は動画撮影もしなきゃいけないからね」
「やったぜ!サンキュー慎也」
何の会話かわからない。わかりたくもなかった。
そもそもどうして私は今こんなことになっているのか……、それもわかりたくなかった。
一人の男が私の顔の方に近づいてきて、手に持った注射器で乱暴に私の腕を刺してきた。
「ひっ、やだ!助けて!誰かぁ!助けてぇぇぇ!!!」
「声でけえなぁ。はいはい、すぐよくなっから、よっと」
意識が朦朧としてくる。
何も考えられなくなる。
口にまで異物が入ってきた感覚があった。
……もう何も考えたくなかった。
「っ!?」
目を覚ました私はガバっと勢いよく上体を起こした。
額から―――いや、全身から嫌な汗が出ていて、息が荒い。
それに、鼓動がすごく速くて胸が苦しい。
「……何?……どうして?」
自分の身体がどうしてこんな状態になっているのかがわからず混乱する。
何か夢を見ていた気はするが、内容は全く思い出せない。
ただ、心の中に恐怖や嫌悪といった負の感情が渦巻いていた。
……もしかして、夢の内容がとんでもなく悪いものだった?
私は、無意識に自分を抱き締めるように腕を回していた。
「いったいどんな夢を見たらこんな風になるっていうの……?」
結局、落ち着くまでには相当の時間を要した。
スマホで時間を確認してみると、もうすぐ元々起きようと思っていた時間だ。
私は一度大きく息を吐いた。
思い出せない夢のことなんて、これ以上考えたって仕方がない。
それに、これはそう思いたいだけかもしれないけど、思い出せなくてよかったって思ってる自分がいる。もし夢の内容を覚えていたら何かもっと致命的なダメージを負っていたような、そんな気が……。
だから、昨日は色々あったからきっと疲れてたんだ、そう思うことにした。
それよりも、今日はお弁当の準備にいつもより時間が掛かるんだから、早く起きて始めないと。
そのために目覚ましもいつもより早くしたのだから。まあ、結局目覚ましは不要だったのだけれど。
そんなことを考えていたら、ふっと気持ちが軽くなった。
そのまま今日の昼休みのことをあれこれと妄想してしまう。
どんな反応をするだろうか。喜んでくれるだろうか。
思いを馳せていると、どんどん気持ちは軽くなっていって、温かい気持ちが広がっていった。
「ふふっ、単純だな、私は」
そうして、私はまず、汗でベタベタする体と疲弊してしまった心をリフレッシュするために、シャワーを浴びに部屋を出た。
今日のお弁当は、しっかりと心を込めて作りたいから。
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