356.仕切り直し
それからどれだけ飲んで、食べただろうか。
おつまみはほとんどなくなり、ワインだけが消費されていた。
「ん〜……」
「きゅうんー……」
いつの間にかフォードはルルを抱え、眠りに落ちそうになっていた。
ルルは――目を開けたり閉じたりしている。寝てはいないが、その直前だった。
「ふたりはもう限界そうだな」
「そうね……先に寝かせてこようかしら」
「手伝う」
「ありがとう、じゃあ……そっちのタンスにフォードのパジャマがあるから――」
エミリアはフォードとルルを連れて歯を磨かせ(ルルは鳥なので歯はない。くちばしのみ)、寝支度を整えさせた。
「もう寝る時間だっけー……」
「きゅう」
「まだ早いよね。でも眠いかも」
「きゅい」
それは多分、外で夕食をしてきたからだ。自覚していなくてもフォードは無意識に疲れていたのだろう。
ロダンの出してくれたパジャマにフォードが着替える。
「すぐ行くからね」
「んー、大丈夫だよ〜」
フォードが眠そうな目をしながら、ロダンを見ていた。
「ロダンお兄ちゃんはまだお話ししたいみたい……」
「ま、まぁ……」
エミリアもロダンも酔っているだけで、まだ眠くはなかった。
さすがにいい大人なので。
「お母さん、してあげてね」
「……う、うん」
どう答えていいかわからず、とりあえず頷いておく。
「おいで、ルル」
「きゅっ……」
ぺた、ぺた……。
眠そうな足取りのルルを伴い、フォードが寝室に向かう。
「おやすみなさい〜」
「きゅうん〜」
結局、フォードとルルは抱き合ってベッドに入った。
残されたのはエミリアとロダンだ。
ワインも残り少なくなっており、おつまみはもうない。
まだ飲み足りない気もする。
「買いに行くというのもひとつの手だな」
「……そうね」
「買ってくる。少し待っていてくれ」
「わかったわ、ありがとう」
ロダンは言って、外へ買い物に出かけていった。
残されたエミリアはすることもなく――ぼんやりとロダンの出ていった先の扉を見ていた。
「ふわふわする……」
本当は皿を片付けても良かったのだろうが、する気がおきない。
テーブルに腕を乗せ、そのうえに頭を乗せる。
黒髪が床に広がり、時計の針の動きがじりじりと感じられる。
15分ほど経って、ロダンが戻ってきた。
「おかえりなさい〜……」
「ただいま。……眠いのか?」
「んー、ちょっとだけ」
顔を上げないでいても、ロダンは気にしていない。だるんだるんに振る舞ってもいいくらいの関係だ。
ロダンは皮の袋に色々と買い込んでいるようだった。
「何を買ってきたの?」
「甘めの赤ワインだ。あとは……チーズの詰め合わせとアンチョビの小瓶など……」
ロダンがテーブルの上に色々と並べていく。
かなりの量だが、どれも保存ができるもの。余ったら後日食べればいい。
「……ちょっと待って」
「うん?」
エミリアは並べられた小瓶の中に、紫色の粒が入ったものを発見した。
酔った頭でも理解できる、輝くおつまみだ。
「これって――キャビア!?」
「うむ、売ってたから買ってきた」
「家で食べるには高価ね。いい感じよ」
ちょうど塩気が欲しかった、ということにしておこう。
エミリアはキャビアの小瓶を持ち上げ、ぽんと開ける。
「ふんふふーん♪」
かなり調子外れの鼻歌を奏でながら、おつまみを皿に並べていく。
もちろん中央にはどばーっとキャビアだ。キャビアの山盛りにワイン。
仕切り直しには、なかなか豪華ではないだろうか……!
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