355.飲み直し
「ちょ、ちょっと狭いかもだけど……」
「気にならない」
ロダンを伴い、部屋に帰ってくる。
大丈夫、玄関からして綺麗だ。
余計な品物もないし……。
「ふぁー、帰ってきたぁ」
「きゅーい」
手洗いを済ませ、リビングへ。
なんだかロダンを招くと緊張してしまう。
ロダンの目が水のないルル用水槽に向いて、すぐにルルへ移った。
「きゅ」
「この水槽はルルのなんだよー」
「なるほどな。ペンギンに水は必須か……」
「きゅー」
ルルがふにふにと頷く。
「待ってて、すぐ飲み物とおつまみを出すから」
「手伝うぞ」
「ううん、大丈夫……歩いているうちに酔いが抜けてきたから」
嘘だった。
まだガンガン酔ってて、ふわふわしている。
それでも手は動くので、問題はない。
「それよりフォードを見ててくれると助かるわ」
「わかった」
フォードはまだ眠くはないようだった。ルルも珍しくそうだ。
(……辛めのものだったから?)
わからぬ。普段よりもふたりは目が覚めているようだ。
でもそのほうがありがたいかも。
完全にふたりきりだと……本当にどうしていいか、わからなくなる。
マスカットの白ワインと薄めの紅茶(フォードとルル用)を用意する。
おつまみは簡素なもので。チーズや冷製ソーセージ、ナッツ、クッキーなど。
リビングではロダンとフォードたちが図鑑を広げながら話をしていた。
「へー、この動物さんが竹をたくさん食べるんだー」
「ああ、東方にしかいない白黒の動物で、パンダという」
「本当にこんな模様なの?」
「うむ……しかもずっと竹の葉を食べている」
「はぇ〜〜」
ウォリスにもイセルナーレにもパンダはいないのだが、ロダンは東へ行った時に見たことがあるのだろう。
本当にロダンは色々なものを見知っている。
「さ、飲み直しましょう」
「わーい。ナッツだぁ」
「きゅー!」
先ほどのコースにはデザートがほとんどなかった。
ココナッツミルクに……多分タピオカっぽいもの。
だからさほど甘くはなかった。
なので、甘いという点ではクッキーのほうが断然デザートである。
エミリアはロダンの隣に座った。
ロダンにグラスを差し出し、ワインを注ぐ。
「君にも」
「ありがとう」
グラスを持つとロダンがつつーっとワインを注いでくれる。
うーん、見惚れるくらい格好いい。
これでいてロダンは酒も嗜むのだからたまらない。
「1年の終わりに感謝を」
乾杯して、白ワインを飲む。
エミリアが家に置いているのは、甘めの白ワインだ。
マスカットから作られ、発酵を途中で止めている。そのため口当たりは爽やかで、アルコール度数も5%程度。
お料理にちょっと隠し味で入れるのにも適している。もちろん、ちょっと飲むのにも。
「美味いな」
「……そう?」
「口当たりが良く、こんな風に落ち着いて飲むのには最適だ」
嬉しいこと言ってくれるじゃない。
チーズやソーセージなどをもぐもぐ食べながら、ワインを飲み交わす。
「きゅいきゅい」
「ルル、あんまり食べ過ぎちゃダメだよー」
フォードとルルはクッキーを食べていた。
チョコレートと砂糖入りのクッキーなので甘い。辛いものの後にはぴったりである。
「ねぇ、ロダン?」
「なんだ?」
「このソーセージ、初めて買ったんだけど意外と美味しいわ」
本当に他愛もない話をする。
ロダンは微笑みながら頷いて、テーブルの下からこっそり手と指を絡ませてきた。
「どこのメーカーだ?」
「ええと、確か――」
時間がどんどん過ぎていく。
幸せ過ぎてワインを飲む手と食べる手が止まらない。
実家も含めて、こんなにも幸福な年末はエミリアにとって初めてだった。
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