354.年末は家族で
一方、エミリアたちはキャレシーたちより少し先んじて夕食を終えて塔を出た。
「きゅいきゅい」
「えっ、誰かいたの?」
「きゅー」
エレベーターが止まった時、フォードはロダンへ話すのに夢中で、誰がいたのか気にしてなかったようだ。
フォードの胸元にいるルルがふにっと羽を振る。
「お母さんの知り合い?」
「うーん……いたかも知れないわね」
もにゅもにゅ。
首を傾げながらごまかす。
エレベーターでばったりと会ってしまった……。
まさか、こんなところでというやつだ。
(アルコールが入ってなければ、ちゃんと対応できた気がするのに)
今のエミリアはがっつり酔っていた。パカパカ飲み過ぎたのである。
エレベーターで反応ができなかったのもそれが理由だった。
「まぁ、あのふたりは先日の夜会にも同席していた。何ということはあるまい……」
「そうね、うん」
ロダンもやや声が高い気がする。
彼も結構なハイペースで飲みまくったので、アルコールが入っているのだ。
まだ真夜中というにはほど遠く、道には人が行き交っている。
年末の騒がしさ、忙しさ。
去りゆく年に別れを告げる人々で街は混雑していた。
とてもよい。
誰もが楽しそうな顔をしている。
きっとエミリアたちも含めて、高揚していた。
「家まで送っていく」
「助かるわ、いつもありがとう」
足元はしっかりしているが、ふわふわ感はある。
フォードと手を繋いで歩いていてもまったく問題ない。
反対側の隣にはしっかりとロダンがおり、指先がちょいちょい当たる。
さすがに手を繋いで歩いたりしないが、彼の体温が伝わってくれるのは嬉しい。
「今日はいっぱい食べたね〜」
「きゅー」
「明日から運動頑張らないと!」
「きゅっ!」
ルルは運動すること自体は拒まない。よく食べてよく動くタイプだ。
真冬の風は冷たいが、身体の芯は暖かくて寒くはなかった。
馬車を乗り継ぎ、エミリアの自宅の前へ――普段ならロダンとはここで別れる。
でもなぜだろうか。
もっともっとロダンと一緒にいたかった。
(……ここで別れたくない)
家にはまぁまぁのワインもある。
乾燥イカとかクッキーとか、そういうおつまみも。
エミリアはロダンの顔を見上げる。
ふと、視線が交差する。
お互いの指の先がわずかに絡んだ。
熱い。
ロダンも同じように思ってくれている。そう、信じることができた。
「ねぇ、家に上がってもうちょっと飲んでいかない? ワインがあるの」
「さんせーい! 僕もロダンお兄ちゃんともっと話したいなぁ」
「きゅーい」
ルルはふにっと夜食への熱意を燃やしていた。それは駄目です。
食べ過ぎだから。
ロダンの瞳がエミリアを捉える。
彼の瞳の奥の心が燃えるようで、エミリアを見ていた。
「……もちろんだとも。お邪魔させてもらう」
「仕事は――大丈夫なのよね?」
言ってからはたと気づく。
ロダンは王都守護騎士団を預かる団長。とても多忙だ。
「問題ない」
ロダンの手がエミリアの頬に触れる。
「あと2日で年の終わりだ。さすがに騎士団も休暇だから」
「そう、良かったわ」
本当に良かった。
(……あれ?)
熱に浮かされるまま言ってから。
もしかして家にロダンが来るのって、初めてなのでは……!?
(大丈夫、大丈夫、大丈夫)
アパートの階段を登りながら、エミリアは祈っていた。
家は常に綺麗なはず。
それはエリスが来るからだし、エミリアも整理整頓を心掛けているからだ。
家にルル用の水槽やらがあるのは、これはもう仕方ない。
可愛いペンギンだから。色々と必要なのだ。
家の扉の前に来る。
鍵を取り出してドアノブに差し込もうとするが、あれ?
手元がふらついて上手く入らない。
ロダンの手がエミリアの背後から伸びて、エミリアの手に重なる。
「焦らなくていい」
「う、うん」
ロダンの手はしっかりとしていた。
ふたりで鍵を差し込み、回す。
カチャリと音が鳴って……ロダンはそのままドアノブへエミリアの手を導いた。
手が重なり合いながらドアノブを回す。
「ど、どうぞ」
「お邪魔する」
なんだか色気を含む声音で言われて――どきりとする。
だが何はともあれ、エミリアたちは家へと帰ってきたのだ。
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