350.年末の晩餐⑤
いやいや、油断は禁物。
見た目が似ているからと言って、中身まで同じだとは限らない。
「こちら東方の肉料理、イセルナーレ風紅焼肉でございます。じっくり香辛料とともに煮込んだ豚肉になります」
やっぱり東坡肉では!?
肉の入った壺は深さ20センチはある。
「こちらも……その、ペンギン様が取り分けますか?」
「きゅっ」
「うん、やるってー」
ということで、壺がテーブルに置かれる。
フォードが壺に触れた。ルルに取り分けてもらおうとするのを助けるのか。
そこですかさずロダンが腕を伸ばした。
「俺も手伝おう」
「いいの?!」
「もちろんだとも」
ロダンは立ち上がり、壺のすぐそばへ。フォードが壺をぷるぷると傾ける……それをロダンがしっかりと支えていた。
「ありがとうね」
「ふふっ、なんてことはない」
壺が傾けられ、ルルが上機嫌にフォークとナイフを突っ込む。
「きゅきゅきゅー、きゅいきゅいきゅーん」
少しすると壺の口近くの皿に真紅の肉塊が取り分けられる。
フォードが肉を眺めながら微笑む。
「おおー……赤いー!」
「きゅるん!」
取り分けられているだけで、とろっとした肉の柔らかさがわかる。
さらには甘い醤油と酒の風味……これは期待しかない。
「食べようー!」
「きゅー!」
取り分けが終わり、ルルとフォードがまっさきに紅焼肉を食べ始める。
「んん〜、ぷるっとしてるー!」
「きゅ〜ん!」
エミリアは微笑みながら紅焼肉をナイフで切ってみた。
じゅわっと肉汁が断面からこぼれ、焼けた醤油と砂糖の香りが立ち昇る。
そのままエミリアは揺れる分厚い豚肉を頬張った。少しだけ大口で。
だって美味しそうなんだもん。
「これは……んっ、んんっ!」
極限まで煮込まれた豚肉はぷるぷるのゼラチンとほぐれた繊維の集まりに変わっていた。
歯に少し力を込めると肉がほどけ、口の中ですぐ噛み切れる。
厚さの割に、あまりにも柔らかすぎる……!
肉を噛み切るのは原初の喜びであり、本能の楽しさである。
(脂部分もほろっと崩れる〜〜!)
香辛料も八角はかなり少なめで、生姜やにんにく、玉ねぎが中心だ。
そこに――紹興酒だろうか。アルコールを飛ばした酒と醤油の香りがあとから肉から流れ出てきた。
表面に染み込んだ濃厚な大豆と酒の風味がほろっとした肉と恐るべき旨味として襲いかかってくる。
肉が甘い。甘さとしょっぱさがぐーっと来る。
(これは中華だー……!!)
懐かしい。この味は本当にガチの中華だ!
横浜中華街や池袋のマジ中華には及ばないとはいえ、しっかりと中華である。
「イセルナーレにはない肉料理の技法だな……。豚の肩肉だろう? こんなに柔らかくなるのか」
「じっくり煮込めば……そうね、香辛料が肉を柔らかくするから」
酒や醤油や砂糖は染み込みながら肉を柔らかく変えてくれる。
「きゅっきゅっ!」
ルルも大いに紅焼肉を食べており、頬がむっちり膨らんでいる。
「なんだか本当に甘いね。飴みたい!」
「ふむ、飴はその通りかもな。砂糖をふんだんに使うのは東方料理の特徴だ」
ロダンの声も心なしか弾んでいる。本当に美味しく思っている顔だ。
そこをレッドルビーのお酒でくいっと流し込むと最高だ。
オレンジの酸味が肉の濃い味をほどよく中和してくれるから。
「こちら、出来上がりましたおつまみでございます。どうぞ、肉とご一緒に」
と、ウェイターが小皿をいくつも持ってきた。これは本格的にお酒が進んでしまいそうだった。
まったくのローカルネタですが、池袋の中華は凄いのでお近くの方はぜひ一度堪能してみてください!
素晴らしいです!!
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