351.年末の晩餐⑥
小皿はエミリアも見たことがあるものばかりだった。
メンマ、酢でパリっと焼き上げた鶏肉、きくらげの炒め物……。
「硬めだけど美味しい〜」
「きゅきゅー」
メンマはタケノコの一種を発酵させたものだ。
(微妙に味が違う気もするけど、やっぱりメンマね)
ウェイターから説明を受けたフォードが首を傾げる。
「そうだ、竹ってなにー?」
「すごーく早く伸びる植物よ。しかもすっごく硬いの」
「へぇー。この辺りにはないよね?」
「ウォリスやイセルナーレには生えていないわね」
そうだ、竹はこの辺りには生えていない。だけど図鑑では見た気がする……。
「帰ったら図鑑を見てみましょうか」
「わーい!」
フォードは知的好奇心旺盛だ。親として応えてあげなくては。
「竹は東方の不思議な植物だな。俺も少し見たことがあるが、不思議な植物だ」
「あら、ロダンも見たことがあるのね」
「うむ……東の諸国では竹が増えすぎて困っているらしい」
エミリアは少し苦笑した。
竹は繁殖スピードが凄く、現実世界の地球でも問題になっている。
(つくづく同じような世界なのね)
「イセルナーレは温暖だ。竹は自生していないが、持ち込まれる可能性はある」
「きゅるーん」
ルルがフォークでメンマをごっそりつまみ、もっきゅと食べる。
「食べちゃだめなのってルルが聞いてるー」
「食べられる竹はほんのちょっとなの。大半の竹は硬すぎて食べられないわ」
「そうなんだー」
「ほう、なるほどな……」
ロダンもさすがに東方の植物まではそこまで知らないようだ。
少しだけ得意気になってみる……のはアルコールのせいもあるだろうか。
(この酢で焼いた鶏肉も美味しい〜)
鶏肉は半口サイズだ。
皮は音が鳴るほどパリっと、中は……酢の酸味が染みつつも肉自体はジューシー。淡い醤油の味が素晴らしい。
「お酒にはよく合う……!」
紅焼肉はしっかり濃厚甘め、メンマはさっぱりしてやや硬め。
酢の鶏肉は三品目としてふさわしい酸味がある。
レッドルビーをパカパカ飲み進めて、もう空になってしまった。
(ちょっとペースが早い……? いえ、大丈夫なはず!)
年末で明日も明後日も仕事はない。
今日を逃したらいつ飲むんだーいという感じだ。
「なかなかのペースだな」
「ロダンも同じくらいじゃない」
見るとロダンのグラスも空だった。
「酒に合うので、つい飲んでしまう」
「そうね。次のお酒は――」
東方の酒があるとのことで、いい酒がないか頼んでみる。
やってきたのは赤みがかった壺入りの……まさか紹興酒!?
「数日前に入荷いたしました特別なお酒でございます。紹興酒という名前で熟成されておりまして、良い飲み頃かと」
う、うおー!
飲むしかなーい! 飲んじゃえー!
ということで頼む。
東洋モチーフの歪んだ白い杯に氷が入れられる。その後、とくとくと紹興酒が注がれていった。
(イセルナーレでは普通はやらないんだけど……)
氷に酒入れるのは邪道的な扱いを受ける。まぁ、ワインとビールが主な国でロックの飲み方は流行らないか。
しかし紹興酒のロックなら苦味も抑制され、飲みやすくなる。
東方の酒に慣れていない人への配慮だろう。
ほのかなナッツの香りが漂い、琥珀色の液体が揺れる。
「うーん、いい感じね……」
紅焼肉をフォークでつまみ、頬張る。その後に紹興酒でくいっと……。
芳醇な香りと甘みによって引き立つ甘み。久し振りの紹興酒が旨味を持って暴れ回る。
コクと甘み、氷のキレが中華料理の濃さをほどよく中和してくれる。
これならもっと飲んで食べられそうだ……!
今日はとことんまで飲んでしまおう、とエミリアは(紹興酒を飲んでから)決意するのだった。
飲んでから、さらに飲むことを!?
よくあることですよね……。
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