349.年末の晩餐④
「〜〜っ!」
白身魚は油と香辛料を吸っていながらも、驚くほどふっくらしていた。
口の中があっつあつ。
そこから時間差で舌先に刺激が来る。
爽やかな白身魚の身……これはヒラメだろうか。底側の身が思ったよりも締まっており、弾力もある。
噛むほどに身から辛さと旨味がなだれ込んでくる。辛いものはなぜ美味しいのか、かーっと身体も温まってきた。
油も風味豊かで、ほのかにニンニクの香りをまとっている。食べるごとに絶妙に食欲が高まるのだ。
「うーん、ピリっとして美味しいー!」
「きゅうーん!」
表面はふっくら、底側には弾力。
2層構造によく唐辛子と香辛料が絡む……次の一口は玉ねぎと野菜の部分と身をセットで食べてみる。
「芳醇ね……!」
シャキシャキした玉ねぎと青みある味。みずみずしい野菜の切れ味と香辛料も変えて――そこに身が強く主張する。
野菜の苦味はなく、食感の変化と旨味だけが混ざって際立つ。
見た目よりも遥かに複雑な旨味の構造に違いには驚くしかない。
「単純に魚の中に入れて加熱したわけではなさそうだな」
「そうね、一旦下味をつけて炒めるか……加熱してから魚の中に入れたみたい。手間がかかっているわね」
もっぐもぐ。
話しながらも食べる手が止まらない。
そして数口食べてから、レモネードでぐいーっと炭酸を流し込む。
(最高っ!!)
ワインなどのように上品なものも良いのだが、レモネードやビールでヤってしまうのも非常に良い。
特に油と炭酸の相性は抜群だ。
と、そこでサラダから飲み続けきたグラスが空になりそうになってきた。
「えーと、次は……」
悩ましい。他の炭酸系もチャレンジしたいところだが。
ロダンがエミリアに目配せしてから、メニューを手に取る。
「このレッドルビーというアルコールはどのようなものかな?」
「こちらは上等の冬のオレンジと遅めのザクロを炭酸で包んだ一品です。当レストランのオリジナルであり、東方料理にもよく合うかと」
なぬー!
絶対に美味しいじゃないか。
ロダンから目を向けられたエミリアはこくこくこくと頷いた。
「では、これをふたつ」
「すぐにお持ちいたします」
数分後、本当にすぐレッドルビーがテーブルに到着した。
可愛らしい貝殻の欠片グラスにしゅわーっとした炭酸。健康的で鮮やかな真っ赤な液体。
グラスの縁にはスライスされたレモンが突き刺さっている。
「ふたたび、乾杯」
「乾杯……!」
口の中に辛味が残っている状態で、レッドルビーを飲む。
強めの炭酸と甘めのオレンジ。
アルコールもしっかり感じられ、その上でザクロの酸味がアクセントになってる。
「しっかりとお酒だな」
「でも飲みやすいわね。こちらの料理とはよく合うわ」
白身魚を食べてからレッドルビーを飲むと、一気に心地良いアルコールと旨味が回ってくる。
それと油焼き自体にも慣れて、食べ進めるのが早く――と、ルルとフォードはもうかなり食べていた。
油焼き自体もほとんど残っていない。
「……きゅい!」
「美味しかったね〜」
というところで次の料理が壺に入って出てくる。
漂うのは香ばしい肉の焼かれた匂い、それに砂糖と醤油の甘そうな……ウェイターが傾けて壺の中身を見せてくれる。
そこには赤茶色の肉の塊がいくつも鎮座していた。
「うわぁ、壺の中にお肉がある!」
「きゅーっ!」
ルルはぷるぷる震えながら、肉を見つめていた。
エミリアは壺の肉を見て、ピンと来ていた。
(これは東坡肉では!?)
原作を担当いたしました『禁獄の花嫁』がチャンピオンクロス様でも連載が開始されましたー!!
秋津洲帝国には、人に知られてはならないあやかしがいる。
母を亡くした彼方は、本来は陰陽師にしか見えないはずのあやかしが見えるため、婚約を破棄されて座敷牢に幽閉されてしまった。
そんな彼方を救ったのは黒髪の最強陰陽師様で――!?
↓の画像から飛べますので、 チャンピオンクロス様でもよろしくお願いいたしますーー!







