348.年末の晩餐③
「うぐっ、なんだこの魚は。結構辛いが美味いな」
ガネットはキャレシーの心など知らず、優雅に魚をナイフとフォークで切り分けて食べていた。
普段のガサツな部分など感じさせない手つきだ。
(こういう部分は……ちゃんと貴族で育ちがいいんだよね)
キャレシーはガネットの様子を見ながら、おっかなびっくりナイフを使っていく。
(と言うか、この魚は何? どーいう調理をしてるの?)
魚の原型は残っているが、単純に焼いているわけではない。
ムニエルやソテーとも全然違う。
白身魚ではあるが……ソースは真っ赤でやや刺激的な香り。
腹の部分には揚げられた野菜がある。
「よく迷いなく食べられるわね」
「ふむ……これは東洋の技法で、高温の油を直接かけたものだ。パリっと瞬間的に加熱して味を閉じ込める」
何気なく語るガネットにとって、さしたることでもないのだろう。
これが東洋の料理というのも初めて知った。
「玉ねぎやチリペッパーを組み合わせたのは初めてだが、うーん……なるほど」
「何?」
「東洋の一部は常に暑いという。暑い地域の料理は辛いものが多い」
ガネットの説明を聞きながら、キャレシーはもぐもぐと魚を食べた。
イセルナーレの料理には珍しいほどの辛さだが、非常にちょうどよい。
舌を刺激しながら魚の身は香り高く、ふっくら。身に香味野菜やハーブが染み込み、辛さを中和している。
たまに玉ねぎなどを口に運ぶと、これも辛さが移っており、香気が鼻に抜ける。
辛い中にも旨味がきちんと存在し、噛むごとに主張してくるのだ。
(レモネードとセットで食べるといい感じね)
ガネットをまねて2口、3口食べるごとにレモネードで辛さを洗い流す。
そうすると本当によい。
食べながらキャレシーはふと思う。
この食事会は……ガネットから誘われたものだが、どのように位置づけされるのだろう。
ありていに言えば、ふたりの関係は……。
「お前は意外と顔に出るんだな」
「は?」
「少しわかってきた」
ガネットが苦笑しながら魚の切り身を口に運ぶ。
「俺は別に、適当に食事へ誘ったわけじゃないぞ」
「それって……」
つまり、どういうこと?
キャレシーの知性が急回転し、ガネットの言葉の意味を探る。
(えっ? マジで、それって)
考えながらもキャレシーは手を止めずに食べ続けようとする。
止めたら負けな気がするからなのだが……。
◆
「きゅいきゅい、きゅきゅいきゅい」
同じ頃、キャレシーたちの頭の上の階でルルは魚を取り分けていた。
ノリノリで、ルンルン歌いながら。
「ご機嫌だね〜」
「きゅうーん」
ふにふにふに。
ルルは器用にナイフとフォークを使い、すすっと白身魚を小皿へと分けていく。
不思議なことなのだが、料理の時だけルルの器用さが増しているような。
いや、普通の時はだるんだるんで器用さを活用しないのだろうか。
ルルの羽が止まり、お手頃サイズの白身魚の切り身を見つめる……。
食べたそう。
先にすごく食べたそうだ。
「きゅー」
「ルル、つまみ食いはだめだよ」
「きゅっ! きゅるん!」
はっとしたルルが頭を振って誘惑を跳ねのけ、取り分けを再開する。
ちょっとドキドキした、が……ルルは見事に魚の取り分けを完了した。
そしてルルがやっている間に、ちょうどよく油の温度も下がってくれたのではないだろうか。
「美味しそうね……!」
真紅の油、香辛料と唐辛子にコーティングされた魚の切り身。
お腹に詰められた香味野菜がさらなる彩りを添える。
ごくりと喉を鳴らしながら、エミリアは油焼きの魚を口へと運んでいった。
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