347.年末の晩餐②
「ここは東洋の料理をフィーチャーしている。今日のコースもそのはずだ」
「なるほど……!」
やはりそうだった。
というより前世を含めれば(日本人ではあるので当然)エミリアは東洋料理に親しんできた。
変に思われても嫌なので、あまり表には出していないが……。
「前のアンドリアの時も、君とフォード君は東洋料理が好きそうだったんでな」
「わぁ、覚えててくれたんだ!」
フォードが海鮮の油焼きをにこにこ見つめながら、ロダンに答える。
そう、フォードは結構色々な味が好きで、複雑で苦味があるのも大丈夫。
なので中華にも適応できそうなわけで……ルルはもちろん戦闘態勢に入っていた。
「きゅっ」
テーブルから立ち上がり、力強い(食欲に満ちた)眼差しで油焼きを見つめている。
ウェイターがすすっと油焼きの後ろに立つ。
「こちらの料理は飛び跳ねますので、取り分けさせて頂きます」
「きゅい!」
慣れた様子で油焼きを解体しようとするウェイターに、ルルが羽を掲げる。
「きゅいきゅいきゅ、きゅい!」
「えーと……ペンギン様はなんと……?」
「ルルは自分でやりたいんだって」
パチパチ弾ける油は段々と収まりつつある。
まぁ、ルルは串焼きも自分でやるくらいではあるが……。
エミリアはこそっとロダンに囁いた。
「珍しいわね。自分で焼きたがることはあるけれど……他の人の料理を分けたがるなんて」
「初めて見る料理だからじゃないか?」
「確かに。何か刺激したのかも」
これまでのルルにはあまり見られなかった側面だ。
「ルルが分けたほうがフォード君にも刺激があるかも。俺は構わんぞ」
「ありがとう。じゃあ――こちらで分けるから大丈夫よ」
ということでルルが油焼きを分けることになった。
ルルが高らかに羽に力を込める。
「きゅい……!!」
「おお、やる気ー」
ルルの瞳は未知の料理をバラす決意に燃えていた。
◆
その頃、同じ建物の1階下で。
キャレシーとガネットは向き合いながら食事会をしていた。
上の階からのふとした音にキャレシーが目線を上げる。
「今、なんだか鳴き声が……」
「何のだ?」
「……ペンギンみたいな」
「おいおい。室内の音楽の聞き間違いだろう」
ガネットが楽団のほうを見やる。
そこでは海の音楽――クジラの鳴き声や海鳥の鳴き声に似たさざ波の音楽が奏でられていた。
まぁ、このような場は本当に慣れない。
キャレシーは思った。
確かに海をイメージするこのレストランで、頭が聞き間違いすることはありえる。
(てか、そうじゃなくて!)
なぜこんな状況に……?
いや、それは決まっている。
ガネットと食事会をする予定を組んでしまったからだ。
自分で決めたことで……なのだが。
(めっっちゃ高そうなレストランだし! ああ、もう……っ!)
キャレシーはもっと軽い店だと思っていたのに、ガネットの用意した店はこうだった。
彼基準ではお手頃なのかもしれないが……ああ、うぅ、食事はとても美味しいのに。
このサラダも絶品だ。
チーズのサラダは多分、店で食べた中で今まで食べた中で一番美味しかった
かも。
とろけるような濃厚チーズ、葉のひとつまで調和した野菜……。
要は食べる量まで計算して盛り付けてあるのだ。
さらに次に出てきた白身魚の唐辛子焼きは――味こそ未知だが、これも旨味と油、辛さがちょうどよく調和している。
ただ、美味しすぎるのだ。
自分が食べて良いものなのかもわからなかった。
「なんだ、どうした? 口に合わなかったか」
「……そうじゃないよ。とても美味しい」
これは本音だ。
でもやっぱり思う。ガネットは遠い世界の人間なのだと。
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