338.大学をあとにして
多分、フォードが生まれる前ならここで武勇譚を披露してしまったかもしれぬ。
前のめりというよりは、恐らくは淡々と。
しかしフォードもぽよぽよペンギンもそばにいる中では、得策ではない。その程度の判断はできるようになってきた。
「こほん、まぁ……魔力量を競うのは魔術師の本質ではありませんから」
「す、すごい……」
エミリアの話題そらしにルールーが手を合わせる。
「昨今、技術面より魔力の絶対量が作業量を決めるとされるのに――格好いいです!」
そうなの?
わからぬ。どのような風潮がもてはやされているのか、エミリアにはわかっていなかった。
とはいえガネットもキャレシーも魔力量で抜きん出てはいた。
(あの試し合いでも……魔力量の多い学生は確かに自信ありげだったかも)
ただ、ロダンは魔力量を絶対視してはいなかったと思う。
魔力量の少ない学生にはそれに合わせた戦い方に変えていたからだ。
ルールーの瞳からはキラキラキラ……と、エミリアへの尊敬の光があふれていた。
「ひとりひとりの生徒の特性に合わせて教えられるのは美徳じゃ。教師としての素質も豊富にあるように思うのぅ。問題がなければトリスターノへ伝えておく」
「どうぞよろしくお願いします……!」
「恐らく来年早々にトリスターノから連絡があるじゃろう。年始からは忙しくなるやもしれん」
「わかりました!」
「精霊魔術については……深く繋がることは悪いことではない。実演できないのが残念じゃが。しかし気になるのぅ……」
「失われた部分があるかも……ということですよね」
「うむ、家に帰って資料をちと見返してみよう」
ガンツは慎重だったが、これは仕方ない。下手をするとウォリス政府との約束に抵触するかもしれない。
でも恐らくルルを通じてダイトとの記憶に深く接触できたのは事実だ。
それから採点作業も進展し、夕方前には解散となった。
採点した用紙を教務課へと渡し、ガンツとルールーとも別れる。
「きゅーきゅー」
「お腹空いたの、ルルー?」
今のフォードはルルを前に抱っこしながら歩いていた。
こうなるとほぼぬいぐるみである。
「きゅーい」
まだだよー、というルルの返事。
しかしエミリアは知っていた。
のほほんとしたルルのこの表情……!
『今はお昼ご飯がまだお腹にあるから夜のご飯までは考えられないよぅ。でも夜になったら炭水化物がとっっても食べたくなるかも……?』
の顔だ!
だが炭水化物は範囲が広い。
ルルの顔からはまだ具体的な……ピザやパスタやパエリアやラザニアなどの品名が出るところまではいっていない。
「夕食はどうしようか?」
ふにふに。もみもみ。
ルルを抱えるフォードがルルの頭に顎下を埋める。
「ううーん……」
むにむに。
フォードが顎を動かして、頭の下半分でルルを味わっている。
今度、まねよう。
「お魚と貝とか――」
「きゅい!」
おお、まずは外側から?
ルルが活発な反応を示した。メーデー、これはいけそう!
「ハムやお肉もたっぷり――」
「きゅきゅい!」
これもオーケー!
さすがフォード、ルルの求めるところを的確にわかっている!
「チーズもたくさん……スパゲッティ」
「きゅー!」
ふにっとルルが左右の羽を掲げる。
やったぁ! 大当たりだ。
フォードとルルが望む今夜の夕食が決まった!
「ふふっ、じゃあ買い物をして帰りましょう」
「はーい!」
「きゅーい!」
しかしエミリアは気がつかなかった。
ルルは具沢山なところに惹かれたということに。
これはエミリアのおかげでもあるが。エミリアの作ったものなら、ルルは何でもお腹いっぱい食べたいし、それで満足できるのだ……!
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