331.帰宅と夕食
お茶会が終わり、お店でお土産を買って……エミリアとロダンは別々に帰宅する。
「すまんな、家まで送りたいがまだ大学で事後処理が残っている」
「いいわよ。そんなにまだ暗くはないし」
よくよく考えると日が落ちてからロダンと一緒にいると、家まで送り届けてくれている気がする。
自身がついてくるか、馬車を手配されるか。そんな気がする。
エミリアはあまり意識していなかったが、ロダンは申し訳なさそう。
そこまで子どもではない……つもりなのだが。女性にしてはエミリアは背が高いし、護身術も心得ている。
手加減しなくていいなら、道端の暴漢に遅れをとったりはしない。
が、ロダンはやはり心配なのだろう。
喫茶店の出入り口――人の気配はない。
すっとロダンの腕が伸びて、エミリアを抱きしめる。
「むぎゅ」
「落ち着いたら連絡をくれ」
「……うん、もちろん」
温かい。
ロダンの言葉がすっと心に入ってくる。
ロダンの魔力は凍てつく冬と雪。
何もない純白。
でも、彼の中には私がいる。
お互いに仕事と責務があって。
いつでも会えるわけじゃない。
それでもこうしているのが嬉しい。
エミリアはロダンの背に手を回し、抱き返す。
少しの間、そうして。エミリアはロダンと別れるのだった。
そして帰宅途中、エミリアはお買い物をしてから家に戻ってきた。
「おかえり、お母さん」
「きゅきゅい!」
「おかえりなさいですー」
フォード、ルル、セリスに出迎えられてエミリアはほっこりする。
(今日はなんだか……たくさんあったわね!)
試験と試し合いとお茶会と。
ロダンは癒しにはなったが、前半でたくさん働いたのも事実だ。
夕食をセリスと用意し、4人で食べる。
今日のメインはブイヤベースだ。あまり手の込んだ料理はしたくなかったので、まぁまぁの手間のチョイスである。
しかし魚介類にはこだわり、鯛やヒラメ、タコ、オマールエビ、ムール貝を投入。かなりの具沢山だ。
そこにジャガイモやトマト、タマネギで野菜の旨味も引き出す。
胡椒やサフランなどのハーブ類で味を整え、完成……!
(確か本場フランスではカサゴ類なんかを使うんだけど、イセルナーレでそういうルールはないしね)
つまりこれはブイヤベース風の具だくさん海鮮煮込みスープだ。
香味野菜を炒め、魚介と野菜を投じる。それがブイヤベース。
イセルナーレでもそこは同じ。同じ調理法が使われているだけ。
深めの皿に盛りつけをして、パンを添える。
「きゅー!」
ルルはスープをすすりまくっていた。
「ルル、おいしい?」
「きゅっ!」
不思議なことにルルがスープをすくっても飛び跳ねない。
串でもそうだったが、急いでも綺麗に食べるのがルルだった。
エミリアも一口、ブイヤベースを口に運ぶ。
にんにくのピリっとした味わいに、トマトの酸味。そこにムール貝の弾力ある食感が絡んでいる。
エビも身そのものに味が染み込んでいる。
(やっぱり寒い季節はこーいうのがいいのよねー)
イセルナーレに日本の鍋文化はない。説明できないので、エミリアも和食を作ることは控えているのだが……。
他の料理に似せることで、巧妙に和食を食べることは可能かもしれない。
セリスもはふはふと食べる。
「いやー、魚と貝の身が贅沢ですね」
「ちょっと奮発しちゃった。セリスもどんどん食べてね」
「お言葉に甘えさせて頂きます……!」
お腹が空いていたのか、セリスもハイペースで食べていく。
セリスの髪がやや乱れているのはルルと遊んでいたからか……。
(いつもありがとう……っ!)
そう思いながら、家族でぺろりとブイヤベースを平らげてしまうのだった。
本場のブイヤベースには憲章があり、定められた種類の魚を使うこととされています。
エミリアの作ったブイヤベースは、魚介類についてまっったく憲章に従っていません! ☆(・ω<)







