表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷点下を操りし剣聖  作者: 氷菓
PR
16/16

転校生

 楓の斬撃が廃墟区域辺り一面を氷で埋め尽くす。少女はその攻撃を能力で避ける。

「どうして、さっきまでとはまるで別人と戦っているみたい」

 少女は大きく空に跳び上がった。しかし、楓が生み出した氷は少女を追うように空に昇っていく。やがて、少女の腕を捕らえようとした。少女は刀で氷を引き裂く。しかし、その反動で体勢を崩した所に別の氷が襲いかかる。が、目の前で氷は砕け散った。そのまま少女は何事もなかったように着地する。

「やっぱりその能力が厄介だな。いくら不意をついたとしてもその能力に邪魔される」

 楓は一瞬の隙をついて氷を少女に向けて撃つがやはり少女の近くで砕け散る。

「それでも貴方は私には勝てない、この能力がある限り。全ての攻撃は無意味になる」

 そう言って少女は楓との距離を詰める。

「そしてこの能力は、攻撃にも使える。よって絶対不可避の攻撃が生まれる」

 少女の刀が楓の脇腹にめがけて向かってくる。瞬時に氷の壁を形成して斬撃を防ぐ……そのはずだった。少女の刀はすでに壁の内側にあった。楓は咄嗟に後ろに下がる。腹部に少女の刀の剣先が迫る。しかし、刀はギリギリ楓に届くことはなかった。

「今のは確実に腹を切り裂いたはずなのに」

「その答えはこれだよ」

 楓は地面に自分の剣を突き刺す。その足元にはうっすらと氷の膜が張ってあった。

「この氷は重心を少し後ろに置くだけで数センチなら後ろに下げれる。正直、壁の内側に刀があった時は驚いたけど」

 楓は剣を地面から抜く。

「私の能力は確定、未来を変えるもの。それに伴って私自身も少し先の未来なら見える。私が確定させた未来はあなたが斬られる未来。それは変えられないはずなのに」

 少女は再び刀を構えて楓に斬り込む。

「悪いけど、今ので斬れなかった以上もう次はないよ」

 少女は今までの中で最も速いと思われる速度で楓に斬りかかる。縦、横、斜め、ありとあらゆる方向から楓を少女の刀が襲う。どの攻撃も一流の剣術家が生み出すような一太刀全てが楓に届いていた……が、楓はその全てを往なしていく。

「おかしい !おかしい !おかしい !どうして一撃も当たらないの。こっちは……」

 初めて少女が声を荒らげた。

「能力を使って当たる未来を確定させて攻撃してるのに、って言いたいの ?」

 少女は苛立ちを感じて能力を限界まで使用する。眼に浮かんだ幾何学模様が徐々に光が増し始める。

「君も気づいているんじゃないの。今までの攻撃は一撃ずつだったのに、どうしてさっきは何度も攻撃したか。それは、君が見たうっすらと見た未来で俺を斬れる未来が確定出来なかったから」

 そこまで話すと少女の刀が楓の目の前に向けられていた。

「それ以上喋らないで。私の能力は絶対。私が選べない未来なんて……あるわけない !」

 少女は刀を前に突きだした。楓はその攻撃も間一髪で避ける。その直後少女の身体が氷に包まれる。少女は驚きの表情を浮かべる。しかし、すぐに笑みに変わった。

「こんなもの、すぐに」

 だが、少女を包み込んでいた氷は砕けることはなかった。

「何をしたの」

「まだ誰にも話したことないから、知っているはずもないか」

 楓は剣を一度鞘に納めた。

「どういうこと ?」

 楓は少女に近づいていく。少女の顔を見たとき、楓はあることに気がついた。

「いや、もう終わりにしよう。この勝負は俺の勝ちだ」

 剣に手をかける。剣を抜こうとした瞬間、大きな爆発が起きた。爆発の中から一人の人物が姿を現した。

「やれやれ、一体何をしているんだ。これだから、新人は嫌いなんだ」

 現れた人物は男だった。ロングコートに顔の右半分に火傷を負っていた。

「おい、早く立て。ここから退くぞ」

 氷から解放された少女は、じっと地面を見たまま黙りこんで一向に立とうとしない。

「いい加減立ったらどうだ」

 痺れを切らした男が手を差し出した。が、少女はその手を振り払った。男は驚愕の表情を見せる。

 カチッ

 少女の首に付いていた首輪がバラバラになって地面に落ちる。

「どういうことだ」

「もう命令に従うつもりはありません。私は、自由です !」

 少女が男に向けて刀を振るう。男は急いで後ろに下がる。だが、咄嗟のことに反応が僅かに遅れ腹部を斬られる。

「チッ、そこの小僧、何をした。貴様の剣が届く前に爆発を起こしたはずだ。なぜだ」

 楓の剣はまだ鞘に納められたままだった。

「桐原流剣術ニノ型居合い 八百轟やめどめ。さすがに今のは見えなかったようだな」

「未来確定の能力と手練れの剣術使いか、一人で相手をするには少々分が悪いか」

 男は斬られた腹部を抑えながら廃墟区域の奥へと下がっていく。

「そいつを庇っても無駄になるぞ。組織を抜けた人間が只で済むはずがない。貴様ともまた会うだろう」

 そう言って男は姿を消していった。少女が楓の方にゆっくりと歩いてくる。

「あの、助けて頂きありがと……」

 少女は言い切る前に倒れた。楓はすぐに駆け寄った。

「なんだ、気絶しているだけか。ひとまず連れて帰るしかないな」

「それなら安心して下さい、桐原君」

 聞き慣れた声が後ろの方から聞こえる。振り返ると、そこにはいるはずのない人物がいた。

「先生、どうしてここに」

「先生の勘ってやつ ?まぁ、本当は白石さん達があなたが廃墟区域に向かったって伝えてくれたから心配して見にきたのよ」

 中里は楓の抱えていた少女を見る。

「その子が通り魔の犯人ね。安心して、学校が責任を持って対処するから」

「まさかそれは、この人を警察審問につき出すってことですか ?」

「君は随分と我々教師を低く視ているようだな、桐原楓君」

 中里の後ろからもう一人の人物が姿を現す。見た覚えのあるスーツ姿の男だった。

「あなたは、加西かさい恭也きょうや理事長。その節はお世話になりました」

「覚えていてくれたのか。安心したまえ、その少女は我々が安全を保証することを約束しよう」

 加西は屈んで楓と同じ目線に合わせる。

「我々も面倒なことは避けたい。警察審問につき出すよりも良い方法がある。それに、彼女は恐らく狙われる危険がある上で一番いい方法だ」

 楓は中里を見る。中里は微笑んでいた。



 翌日


 俺はいつも通り学園に行く。教室に入ると、結斗達が心配そうにこちらを見てきた。問題なかったと伝えに行こうとした時、先生が教室に入ってきた。

 先生の後ろにはもう一人、制服を着た少女がいた。

「突然のことですが、新たに転校生を紹介します」

小華河こはるかわ凛音りおんです。よろしくお願いします」

 小華河と名乗った少女は、昨日戦った少女だった。

「席は、桐原君の横でいいですね。桐原君、小華河さんのこと頼みましたよ」

 先生は意味深な笑顔を俺に向けた。

「(あの先生、まさかこんな事をするとは)」

 小華河が俺の方に向かってくる。席には座らず俺の前で立ち止まる。

「よろしくお願いしますね !楓さん」

 小華河は満面の笑みで挨拶してきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ