6話 被検体生活4日目
この日の朝、ドールが肉野菜炒めを持ってアユミの独房へとやってきた
「おはようございます、アユミ。今日は実験の準備が終わるまで
ここで待機しているようにとの指示です、食べてください」
「はい、いただきます」
ベロ博士のことだからロクでもない実験に決まっていると思うが
内容をドールに聞く気にはなれず、黙々と食べた
「ごちそうさまでした」
「では、暫くお待ちください」
そう言うとドールは食器を下げて階段を降りて行った
手持無沙汰になったが、昨日のような実験をする隙は無いだろう
待っている間ストレッチをして過ごした
…雑居房から音が聞こえず、妙に静かだった
***
「準備ができました、まずはこのローブを着て下さい」
それは麻でできた大人用のローブだった。当然アユミにはブカブカである
さらに顔を包帯で巻き、目だけを出した状態にした
「私が背負って行きます、さぁ」
「ふぁい」
ドールに背負われ、商業区域を通り過ぎ、港とは違う方面の別区域にやってきた
そこには魔族が今は誰もおらず、閑散としていた
「ここは第四世代の為に用意された特別な小区域です、今日はベロ博士が
皆をイベントホールに集めたので閑散としてますが…私達もそこへ向かいます」
「ふぁい」
包帯のせいで喋りにくい
「注意点として、今日は所定の位置に着いた後、何があっても
動かないようにして下さい。動くと危険です、不用意な発言も厳禁です
アユミの命は守るので安心して下さい」
「…ふぁい」
もはや嫌な予感しかしないし安心もできない
***
イベントホールに裏口から入り、舞台に到着した。幕はまだ上がっていない
そばにはリークルと軽装歩兵が7人、非殺傷武器で武装して待機しており
舞台中央には、檻に囲まれた椅子が置いてある
包帯と麻のローブを脱がせながら小声でドールが指示する
「アユミ、喋らないように…あの檻の中の椅子に座るのです」
アユミは頷き、言う通りにした。座ると同時に檻の鍵がかけられる
それを確認したリークルが舞台袖から手で合図を送る
自分はこれから見世物にでもされるのだろうか?
確かにこの白い髪と肌は珍しいとは思うが…
程なく、舞台上の照明が点けられ、幕の向こうからベロ博士の声が響き渡った
***
「皆様、ご静聴願います! 第四世代の勇敢なる兵士諸君!
本日は貴重なお時間を頂けて誠に嬉しく思う!
今回、私は非常に珍しい生き物を捕獲した!
この檻と幕の中に置いてある!」
アユミ側からは見えないが、客席側にさらに檻を設置してあるようだ
「この生き物を見た後、感想を書いてもらうだけで充分!
どんな反応をしてもペナルティは一切与えない!
さらに! 今から座ったまま、立ち上がることを我慢できた暁には
諸君らの運動施設に予算を回し、新調することを誓おう!」
会場は大盛り上がり。だがベロ博士のことだから
それが不可能なことだと半ば確信めいたものがあったのだろう
「まずは小手調べ! この生き物の声を聴いてもらう! ドール!」
「アユミ、わーっと大声を上げてください」
それを聞き、大きく息を吸い込んで
「わーーー!!」
上げ終わると、一瞬の静寂の後、またザワついてきた
「うむ! この程度では諸君はビクともしないな!
では本番だ! 幕を上げろー!」
僅かに擦れた音を出しながら、舞台の幕が上がる
そしてアユミの姿を視認した魔族は
「シ…シンゾー…」
「ウマソウ…シンゾー…」
「シンゾー クワセロォ!!」
次々に席を立ち、四つん這いになって檻に向かってきた
「「「シンゾー! シンゾー! シンゾー!」」」
興奮した様子で檻を掴んでガシャガシャ揺らしてきた。間近で見ているアユミは
恐怖で固まっている。やがて席に座っているものは誰もいなくなり
客席側の檻の隙間から一人侵入した所で
「実験終了だー! 幕を下ろせー!」
ベロ博士の合図で幕が下ろされ、侵入した魔族は刺又で押さえつけられ
その間にドールはアユミを連れ出し、舞台の死角で麻のローブを着せ
包帯を巻きつけてイベントホールを出て全速力で駆け出した
***
「残念ながら、諸君らの中で立ち上がることを我慢できた者はいなかった!
諸君らの運動施設新調の話は無しだ!」
「きたねぇぞ博士! どんな手を使いやがった!?」
「薬でも使ったのか!? 何も覚えてねぇぞ!」
「何見せやがった! 俺らが気絶するような奴か!?」
「まぁ待ちたまえ、タダで帰すことはしない。例の肉を配れ!」
「何だこれ…美味い! 美味いぞ!」
「美味い…頭もすっきりしてくる…俺らの知らない香辛料が使われているのか?」
「本当に美味しい…どんな肉を使ったの?」
「フフフ…これは新たに発見された珍獣と香草を使ったソテーだ
まだ市場には出回っていない肉だが、今回特別に用意した物だ
今回のお詫びに大量に用意した! 食べ放題だ! 存分に楽しんでいってくれ!」
「よっしゃあ! 食うぞ~!」
「いいとこあるじゃねぇか博士ぇ!」
「これならいくらでも食べられるわぁ!」
(フフフ…効果は上々…人間を生きたまま蒸し焼きにし、心臓を取り出して
形が分からないように薄切りにしてから、香辛料は使わず
植物油だけでソテーした物だ…やはり人間の心臓はよく効く)
***
独房に戻り、ローブを脱いだ所でようやく一息ついた
「ドールさん…結局何の実験だったんですか?」
「昨日アユミが第四世代に襲われたことを聞いて、博士は一つの仮説を立てました
彼らは精神的に不安定でしたが、決定的な原因や治療方法が不明のままでした
今頃博士は新たな治療方法を試している所です」
「それは一体…」
「アユミは知らないほうが良いかと」
「…はい」
何が使われたのかは「研究成果」を見ているから、ある程度予想はできる
下の雑居房区域の人数が少なくなっていた
恐怖で疲弊した今、これ以上は考えたくはなかった
「今日は第四世代が落ち着くまで外出禁止です。昼は持ってくるので
ここで過ごして下さい」
「はい」
ドールが下りていき、入れ替わりに見張りの魔族が2人やってきた
昼食が届けられてからも動かず、食べている最中もずっと見張っていた
第四世代が乱入する可能性を危惧したのだろうか?
アユミはというと、食事を済ませ、安心したことで強烈な睡魔に襲われ
毛布をかぶって寝てしまった
***
「アユミ、起きましたか」
「ドールさん…うーーん、寝ちゃってました」
軽く背伸びをする。昼寝というには長く寝すぎたようで
すっかり日が沈み切っていた
「かまいません、夕飯をどうぞ」
「いただきます」
寝てた事は咎められず一安心
「ドールさん、この後は何をするんですか?」
「寝るまでの間、部屋の中でできる軽い運動をして過ごすように、との事です」
「わかりました」
食べ終わり、ドールが食器を持って下りて行ったのを見届け
運動を開始した。そこまで種類を知っているわけではないが
簡単なストレッチとラジオ体操位なら知っている
***
アユミは言われた通り真面目に運動を続けていた、軽く汗も出ている
その間ずっと魔族が代わるがわるアユミを見続けていた
第四世代の事があったとはいえ、さすがに警備が厳重すぎると感じた
逃げるチャンスが一切無い。そろそろ船に乗っていないといけないのだが
今回は諦め、次の船を待ったほうが良いかもしれない
そう考えていると、新たな魔族が飲み物を持ってきた
「おっ、頑張ってるな。差し入れが届いているぞ」
「あー…ありがとうございます」
それはマナポーションと同じ形の瓶に入った黄色い液体だった
何の疑問も抱かずに蓋を開け一口飲むと
カチャリ
何かの金属音がしたと思ったら、魔族の見張りが急に全員撤収していった
おそるおそる触れると、牢の鍵が開いている
「な、何で…むぅ」
ここまであからさまだと罠を疑う、いかに「透明化」できるとはいえ
通路はあの下り階段一箇所しかない。罠を設置するのは容易だ
脱走に失敗して透明化がバレたら逃げるチャンスはもう永遠にやってこない
失敗は絶対に許されないのだ
「…こんなので逃げるほど愚かじゃないよ」
アユミは憤慨しながら黄色い液体を一気に飲み干した
柑橘系だろうか、少しすっぱいが運動した後の体には心地良い
もう寝てしまおうか…眠くないが…瓶を置きベッドに腰かけた、その時である
2人の人影が階段を上ってくるのが見えた、1人はリークル
もう1人は…全裸の12歳程度の人間の男
「お…お姉さん…僕…もう…」
「頑張って♪ もう少しだから♪」
男は股間をガチガチに固めて悶絶しながら歩いて来た
アユミは何故か男の股間から目を離すことができない
徐々に心拍数も上がってきたと感じる
「ほら、さっきやった通りに…♪」
「あ、アユミチャンカワイイ!」
心臓が跳ね、頭の中が「好き」という文字で埋め尽くされていく
男は牢の扉を勢いよく開け、中に入ってきてアユミをベッドに押し倒し
鍼灸ワンピースを破いた。乱暴に扱われても、触れ合った箇所から
快感が際限なく押し寄せてきた
「はうぅ…あんっ…やめて…あっ…」
「イイニオイ…カワイイ…」
アユミの汗の臭いが男の欲情をさらに掻き立て
そのまま即入れられた、細くてあまり痛くない
そして即出された
「アユミチャンカワイイィー!!」
「ふあぁぁぁぁ…」
体が反り返り、棚の上の銅鏡が目に入る、とても淫らで可愛らしい女の子が映っている
あの激痛を伴う出産と比べたら
快感だけを感じられ、そのまま2人は繋がったまま跳ねていた
***
ややあって
「アユミチャンカワイイ…アユミチャンカワイイ…」
「あうっ…あうっ…あうっ…」
2人は繋がったままおとなしくなっていった
それを確認したリークルとドールが牢に入ってきて
2人を引き離し、アユミの股間に栓をし、ドールが漏れないように担ぎ上げ
「あうっ…やめて…あっ…あっ…」
そのままベロ博士の所の手術台に運ばれ、寝かされた後
博士は栓を外して、あふれ出た液体をドールが容器で受けとっていた
出が悪くなったら、タンポン状の装置でさらに掻き出していた
「ひどいよぉ…はかせぇ…」
「そう言うな…お前の卵子だって立派な研究材料だ、今採れたのが人間男との受精卵
そして…フン!」
アユミの下腹部を押すと、さらに液体がにじみ出てきた
「これで取れるのが無精卵だ、あの薬全部飲んだそうだな?
まだまだ出るゾオォーッ!」
ベロ博士は嬉々として下腹部を連続で押す。あの時飲んだ黄色い液体が
媚薬であり、排卵薬であったと気付いても後の祭りである
「博士、そろそろ私の活動限界です」
「何っ…もうそんなに酷使したか…仕方ない、後は私がやるから
ドールは整備室に行け」
「はい、失礼します」
「あうぁ…ドールさ…」
最後の良心と呼べる存在が失われた気がした
「さて、もちろん魔族男との受精卵も採取する。わかるな?」
ベロ博士は自分のズボンを下ろし始めた
***
先の少年よりも小さく、負担は少なかった
「あうっ…うぁっ…」
「ふぅ…中々良かったぞ…」
液体をかき出しながら言ってくる、全く嬉しくない。だが快感は感じた
そんな自分に嫌悪感を抱きつつも、されるがままに卵子を搾取されていった
「よーし取れた、もう戻っていいぞ、また明日なー」
「ふぁい…」
何とか起き上がり床に立つ。ボロボロになった鍼灸ワンピースが脱げて床に落ち
全裸のままフラフラと外に出た。外には相変わらず美しい夜空が広がっている
「死にた…」
い、という言葉が出る前に頭が急激に冴えていく
あの大天使にされた時と同じ状態だ
そしてアユミには自殺願望の代わりに一つの考えがよぎった
あれ? これ…逃げられるんじゃない? と
次の瞬間、アユミの姿は夜の闇に消え失せた
***
同刻、12歳程度の人間の男は、女に変えられてアユミと同じ運命をたどっていた
「おっ、おっ…おへえはん(お姉さん)…ほうひへ(どうして)…」
「次に使う人にはあまり痛くない方法で…って言われたけど
処女膜を痛みなく破るのは想像以上に難しいわ…私もまだまだね」




