不死鳥
明確な切れ目がないので色々迷いましたが、二章はここまでにします!
二章終わり!
「よっしゃ! 今日こそランクアップ目指すぞ!」
「誰か臨時で入ってくれる荷物持ち、居るか!?」
「俺空いてます!」
「受付嬢、ギルド登録したいんだが!」
「は、はい! ただいま!」
「……賑やかになったものです」
【黄金の剣】の元ギルドマスター・テクノは、冒険者達の様子を微笑んで見つめていた。
彼は自分の意思でギルドマスターをガラムに譲り、自分は退職しようと考えていたところを、元々【黄金の剣】に居た冒険者達に引き止められ、副ギルドマスターという形でギルドに残ることとなった。
「一度は畳むしかないと思っていたこのギルドですが、荷物持ちが入るだけでもここまで変わるとは。お陰でまた夢を見れそうですよ。ガラムさん」
「当然です。荷物持ちの不足はあれど、冒険者の質は決して低くありませんでしたから。冒険者達が互いに切磋琢磨してくれれば、いつか三原色に匹敵するギルドになるかもしれません。お力添え、よろしくお願いします」
「こんな老いぼれにできることがあれば、何でも申し付けて下さい」
その会話を横で聞いていたヒューズは、ガラムの発言に顔をしかめていた。
「甘いですよ、ガラムさん。三原色と並ぶんじゃない。三原色を超えるんです」
「……はぁ。どの口がいってんだ、ヒューズ」
「いけると思いますよ。少なくとも俺は、ここが【赤い不死鳥】の環境に劣るとは思っていません」
どうやら本気でそう思っているらしいヒューズに、ガラムは大きなため息を吐く。
「道のりは険しいぞ。【碧の息吹】には勇者がいるし、【蒼い彗星】には頭がおかしい荷物持ちがいるからな。あいつらを上回る業績を出さなきゃなんねぇ」
「勇者はともかくとして、アイラさんは……個々で対抗するのはまず無理ですね。全体で勝ちましょう」
「無理無理。全員で逆立ちしても勝てないわ」
「……居たのか、ネイ。頼むから、君はもう少しやる気を出してくれ」
「私が今までどれだけあの人のイカれ具合を間近で見てきたと思ってるのよ……」
ネイの一言に、2人の表情が浮かないものになる。
アイラがどれだけ規格外な男なのかは、関わりがあった人間ならば誰でもわかることだ。
「そういえば、ネイは正式に【堅守の砦】の一員になったそうだな。何か心境の変化でもあったか?」
「なんか、色々と吹っ切れました。いつまでも怯えているだけじゃダメな気がしたんです」
「……今まで、俺らに怯えてたのか?」
「あー……うん。ヒューズ、顔がいかついから」
「か、顔!? そ、そうか、顔か……」
「冗談よ、ヒューズ」
(……言えない。人間だから警戒してたなんて)
ガラムにこそ真意は伝われど、ネイの事情を知らないヒューズにとっては字面通りの意味でしかない。
どうやら本気で真に受けていたらしいヒューズは、冗談という言葉を聞いてほっと胸を撫で下ろす。
「そういや、お前らはなんでここで油売ってんだ?」
「遅刻魔が今日も遅刻したからです。……あ、噂をすれば来ましたね。ようやくクエストに行けそうです」
「遅れた! すまん!」
【堅守の砦】3人目のメンバー・ギッシュが、タイミング良くギルドへ駆け込んでくる。
「遅い。この遅れはダンジョンで取り戻すぞ!」
「おう!」
(変わらねぇな、あいつらだけは。他の奴らは、ようやく目が覚めてきたか?)
ヒューズ達がギルドを去ったのを見届け、ガラムは再び自分の業務へと戻る。
(こんなにやることが山積みなのも、いつ以来だろうな。……だが、これほど心が躍るのも久しぶりだ。あいつらなら、本当にやってくれるかもしれん)
現状最高ランクの【堅守の砦】を筆頭に、冒険者達は打倒三原色の野望に燃えている。
そして、腐った環境に慣れ切ってしまっていた元【赤い不死鳥】の冒険者達も、【堅守の砦】や元々【黄金の剣】に所属していた冒険者に触発され、本来の姿勢や意欲を取り戻しつつあった。
【赤い不死鳥】は無くなったが、その良き魂を継いだ冒険者達は、【黄金の剣】で存在を知らしめていた。
神話では、不死鳥は生命の終わりが近づくと、香木に火をつけ、自らの体を焼いて死ぬとされる。
……そして、そこから次代の不死鳥が誕生するのだ。
やがて、人々は口々にこう言うようになる。
ーー此処に、不死鳥は転生した、と。
第二章「不死鳥の低空飛行」
ーー完ーー
順調にいけばこの話は三章で終わる予定です。
ようやく3分の2……
まずはここまで読んで下さってありがとうございます!
全ての読者の皆様への感謝を忘れずに。
引き続き頑張って書きますので、応援よろしくお願いします。




