透き通る、未来
お久しぶりです。
忘れてしまった人は初めまして。
新作に着手するにあたり、過去作品を完結させないまま執筆することに自分の中で納得がいかず……
半ば強引ではありますが、一応この話を以てこの作品を「完結」としたいと思います。
長らくお待たせしました。もし期待に添えない結末だったら本当にごめんなさい。
それでは、どうぞ。
数年経ったある日、ついに危惧されていたスタンピートが訪れた。
ネフィルの思惑では数ヶ月で起きるとのことだったが、どうやらイレギュラーな事態が起こったらしい。
行方をくらませた勇者アランが、命と引き換えに魔王に重傷を負わせたのだ。
「結局誤差は2年3ヶ月と2日でしたね。頼りにならない精霊ですこと」
『引退したはずの勇者がリスポーンした魔王のハメ殺しを目論んでいたなんて、一体誰が予想できるのよ。多分、このためだけに引退という形で単独行動を選んだんでしょうね。勇者アランはモンスターに並々ならぬ恨みを抱えているとは聞いていたけど、まさかこれほどとは……』
「やっと、私が殺されかけた理由がわかりましたよ。半魔だから。あの人にとっては、殺そうとする理由なんてそれ以上でもそれ以下でもないんでしょう」
『よくあの勇者から逃げ切れたわね。体売ったの?』
「…………結局私の目を見て人間だと判断したようでしたよ。隙を見つけてはアイラ様にセクハラしている精霊様の考えることは違いますね」
「や、やめようよ二人とも! もうモンスターが来るよ!」
「うん、クゥの言う通りだね。この量じゃ、いくら皆でも油断してると怪我しちゃうよ。それに……」
『魔王様も無事に復活されたみたいねぇ。じゃ、下等生物に上下関係をわからせに行きましょうか』
「……アイラ様に仇成す存在は、一匹残らず細切れにします。全てが済んだら、決着をつけましょうか」
『望むところよ、バカ吸血鬼。2度と歯向かってこれないようにボッコボコにしてやるわ』
(最近、なんだか闇シアルの割合が増えたなぁ。ネフィルもやたら噛み付くし……はぁ)
とはいっても戦闘中のコンビネーションは息ぴったりなので、今更とやかく言うこともないんだけど。
2年と少し。
僕たちは、かつてとは比べ物にならないほど強くなった。
パーティーランクは【赤い不死鳥】の頃のSランクを追い越したし、並のモンスターにはもう苦戦しない。
その自信は、かつての大魔王を前にしても揺るがなかった。
「思えば、大魔王が1回目に襲撃してきたのって、数千年前なんだよね。今の魔法の技術はその頃とは比べ物にならないほど発展してるし、もしかして無効化能力も貫通できるんじゃ……」
「試してみますか?」
「あー……」
シアルなら……間違いなく装甲をぶち抜くだろうなぁ。
なにせ、最近は魔断石をサンドバッグ代わりに魔法を打ち込んでるし。
「私が斬るよ!」
クゥは……うん、斬る。絶対に斬る。
刃物を持たせたこの子はあまりにも危険すぎる。
魔断石製の剣を更に改良した結果、ついに僕の結界まで易々と切り裂くようになって手がつけられない。
『私が封印するに決まってるでしょ。前もそうして倒したんだし、前例がある方が確実だわ。アンタらは下がってなさい』
「下がるのは貴女です」
「んー! 斬る!」
あーあー、また始まった。
こうなったらもう、対処法は一つしかない。
「はいおわりー。そこまで! 魔王マスティマは僕が倒すから、皆は援護お願いね」
「……はい。アイラ様のご指示ならば」
「しょうがないなぁ」
『……』
……3人とも根は素直だから、誰とも対立していない僕が調停するのが一番手っ取り早い。
「じゃあ、皆は中で戦闘体制に入っていてね」
……中。
これこそが、僕が2年間に渡る修行で習得した集大成。
…………禁忌スキル【生命の運び屋】。
命あるものは収納できないという【収納】の制約を根本から破壊する、紛れもない【空間魔法】だ。
それは僕が、【収納】というスキルから再び【空間魔法】を再構築することに成功したという証だった。
目の前の視界は、下半分がモンスターの黒い影で埋まっていた。
しかし空はーー
「……こんな日でも、空は青いんだなぁ」
溢れるモンスターは、ギルドの頼もしい仲間たちと、ディノさんを始めとする竜族の皆さんが対処してくれている。
僕が、僕たちがすべきことは、ただ一つ。
『勝負は一瞬よ、アイラ』
「うん。そのつもりだよ。……魔王を10秒で片付けて、後ろの防衛戦が済んだら、今夜はご馳走にしよう」
『『待ってました!』』
……慣れないなぁ、頭の中に皆の声が響くの。
「じゃあ、行くよ。【空間転移】!」
◇ ◆ ◇
後にこの戦いは、人類の歴史上最も早く決着した人魔大戦として語り継がれることとなる。
しかし、そこに立役者となった荷物持ちとその仲間たちの名前は残されなかった。
……歴史の教科書には、こう記されている。
戦争終了後、莫大な量の食料や宝物が町の外れの邸宅※1に運び込まれ、「メリーズの歓喜※2」と呼ばれる豪勢な祝勝会が執り行われた。
※注釈1:なぜ町外れの邸宅で執り行われたかは不明。一説には、町の代名詞である空間魔法誕生の地で勝利を祝いたいという住民達の希望からと言われている。
※注釈2:この防衛戦で大活躍したメリーズの【蒼い彗星】(現在の【透明な彗星】)は、ギルドランクを1位に押し上げ、「蒼の時代」と呼ばれる一時代を築くこととなった。
かなり強引に終わらせたので、不自然な点や回収されなかった伏線が残ってしまいましたが、予め決めていたオチには辿り着けたので、反省するべきところ、自信を持っていいところをしっかりと噛み締めたいと思います。
初の長編作品で10000P以上も獲得させて頂いたのは、ひとえにここまで読んでくださった皆様のお陰です。
以降の作品もこの作品を超えるクオリティを出せるように精一杯書かせて頂きますので、お付き合い頂ける方は今後ともよろしくお願いします。
ありがとうございました!
【追記】今後の活動予定や新作については活動報告にあります。
【更に追記】活動予定を投稿した気になっていて、なんも考えず新作アップしちゃいました。手違いで既に新作はアップされてます。大変申し訳ございません。だから履修登録ミスるんだよ(自戒)




