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精霊の記憶①

ランキング復帰が見えてきた(あと30p!)

ダメ押し……ってわけでは無いんですが、字数的にもキリ悪かったので間隔空けずに投稿しちゃいます。


精霊は、無から生まれた存在。


……そう、「無」から。


自分が格の高い精霊だと自覚したのは、生まれてすぐのことだった。

私以外の精霊は、人型ではなく光の玉のような見た目をしていた。

意思の疎通はできても、言語は話せないようだった。


「あーあ、退屈な世界だなぁ」


精霊の住む世界……天界と呼ばれる場所に住んでいる種族は、数えるほどしか無い。


精霊。


神。


その神に仕える、天族。



ここで言う神とは、精霊の王のことだ。


私は退屈だった。

無属性の精霊は、恐ろしく数が少ない。

……その中でも特に、空間の精霊は。

天界での私は、浮いた存在だった。


私が生まれた時には、既にマスティマの手によって空間魔法の遺伝子は潰されていた。

だから、下界に降りても出来ることはたかが知れていた。


精霊王クラスになればともかく、私のような普通の精霊は、適性の無い人間にゼロから魔法を与えることはできない。

あくまで、私たちは適性のある人間の魔法の手助けをするだけ。


魔王に対抗するため、精霊が魔法を授けた?

……違う。

人間が、元々備わっていた魔法の適性をうまく使えなかっただけ。

精霊は、それを手助けしたに過ぎない。


「はぁ」


何度目かも分からない、大きな溜息。

どうして私は、空間魔法なんていう魔法の精霊に生まれてしまったんだろう。


精霊は本来、天界の住人。

下界で実体を得て活動するためには、下界の魔力を体に取り入れなければならない。


魔力を取り入れるためには、精霊と同調できる人間の協力が不可欠なのだが、精霊魔法の使い手ですら、私の存在には気づいてはくれない。

……その魔法の適性を持つ者でなければ、下界の生物が精霊を捉えることはできないから。


空間魔法の適性は、長いようで短い歴史の中に葬られてしまった。

……また、何らかの原因で人間に空間魔法の適性が発現するまで、私はあとどれだけ待てば良いのだろう。


今となっては、空間魔法は御伽噺の中に登場する魔法、という認識でしかないのに。



天界でも、下界でも、私はずっと一人だった。


私はしばらく、気まぐれに下界を旅していた。

人間を観察したり、モンスターを観察したりして、空虚な日々を過ごしていた。


ある時は、魔王城に一人で乗り込んでみた。

……偉そうに王座に座る魔王も、四天王と呼ばれていたモンスターも、水面下で謀反を企む部下も、誰も私に気づいてくれなかった。


天界では、仲間外れ。

下界では、何者にも干渉されなければ、何に対しても干渉できない。

どうしても拭えない孤独さから、私は生きる意味を見失っていた。


(……誰にも必要とされない魔法の精霊なんて、存在する意味はあるのかな?)


ふと頭をよぎったのは、「自殺」の2文字。

……でも、死に方が分からない。


精霊は、どうしたら死ねるのだろう。

そんなことばかりを、考えていた。


そこから、数百年が経ち。

私に、「転機」が訪れた。


「おねえさん、どうしてないているの?」


『え……?』


ありえない。

私は、耳を疑った。


幼い子どもが、私に話しかけてきた?

そんなはずはない。

きっと、後ろに誰か知り合いが……いない。

彼以外、ここに人間は居なかった。

この子は今、明らかに私に向けて言葉を放っていた。


「あれ、おねえさん……? いなくなっちゃった」


精霊の姿が、一瞬だけ目視できる。

それは、「精霊魔法」の資質を持つ人間が、最初に経験する第一歩。


精霊魔法の適性と、空間魔法の適性。

この二つを併せ持つことが、私が目視できる条件。


こんなふざけた条件に合致する人間など、あと数万年は生まれないだろうと考えていた。

私は、これから数万年の間、ずっとこの孤独に苛まされるんだと、思い込んでいた。


涙を堪えきれなかった。

そして、悟った。

私は、この子に会うために生まれてきたんだと。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



(……やっと、やっとだ。10年にも満たない時間がこんなに長く感じたのは、初めてだなぁ)


アイラの寝顔を見ながら、私は彼との出会いを思い返していた。


(今も、アイラが目を覚ますまでの時間が、狂おしいほど長く感じる)


精霊として何百年も過ごしているうちに鈍ってしまった時間の感覚が、少しずつ戻っている実感がある。

やっと、私の中で凍りついていた時間が、動き出したような。


アイラが空間魔法を受け入れてくれるかどうかは、まだ分からない。

……それでも、アイラから魔力を貰えば、私が実体としてこの世界に干渉する力を得ることには変わりがない。


指を加えて見ていることしかできなかった()()()とは、状況がまるで違う。


(もう二度と、貴方に惨めな思いはさせない)


決意を胸に、私は私の「主」が目覚めるのをじっと見守っていた。



評価・ブクマ等よろしくお願いします……!

評価・ブクマ等よろしくお願いします……!

寒すぎて布団から出られない……!


大事なことなので3回言いました。

是非お願いします。

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