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21・偽英雄

 城下は既に至る所が火の海となっていた。

 第二王子邸宅など既に跡形もなく、そこには巨大な穴が地獄の入り口のようにぽっかり空いているだけだ。

 だが、そんなことを気に掛ける人間などいない。

 それよりも、気にかけねばならぬ、あまりにも強大なものが眼前に現れていたからだ。

 魔王グロステク。

 それは人間と近しい四肢を持つが、竜の鱗にも似た鋼の体皮に、尾の代わりに生えた数限りない竜の首を備えている。空想上の神獣に玄武というものがいるが、あれは亀から蛇が生えている姿で、まさにそれが直立したような姿だった。

 おそらくは人格を有していると思われる頭部は、金属でできた怪獣を思わせ、ルビーのような瞳が暗い憎しみの炎を映していた。

そして、何より特徴的なのは、封じられていた祠のサイズを全く無視するかのごとき巨体である。

 砦ほどもあるその巨躯を揺るがし、昆虫とも竜ともつかぬ瞳からは黄金の光を漏らし、街をねめつける。

 その視線が定まった先に――

『LAAAAAAAAAAAA!!』

 複数の竜首が歌うように声を上げ、その魔唱が爆炎の魔法へと変換され、炸裂した。

 火柱が吹き上がり、建物が一瞬にして灰と石くれへと変ずる。

 凄まじい火力に、王都守護のために出動したフォトン使いたちも、尻ごみし、前に出ることが出来ない。

 命知らずに飛び出して行った者であれば、既に街を舞う灰の一部となっている。

 魔王本体に近づく前に、おびただしい竜首が感知し、焼き払ってしまうのだ。

 詠唱のスキが魔唱の弱点であり、だからこそそのスキが存在しないフォトンによって人類は魔王に勝ったはずである。

 しかし、竜首の同時詠唱により、魔唱のラグは消え、スキは微塵も存在しない。

「こんな化け物……どうやって封印したんだよ……」

 一人か、それとも全員か。

 絶望の声を漏らす中、ただ一人足を止める事なく進む者がいた。

「ハハハハハ! 下賤で邪悪なる魔王よ、このハンドレッドウィザードが相手だ!」

 そう、オールド・フェイスである。

 ローブの下から見える手足には、びっしりとフォトンが書き込まれ、光を放っていた。それは強化のフォトンであることは、飛来する火炎や瓦礫を華麗にかわし、あるいは多少当たったところでまるで意にも介していないところからも明白だ。

『GAAAAAAAAAAAA!!』

 魔王が叫んだ。

「大トカゲめ、我が討ち滅ぼしてくれん!」

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