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オペレーションストーキング!!

 静奈さんとデート(仮)をする日になった。本番のための予行練習のような物だろう。


 実際に静奈さんとデートをしてみて、本番に静奈さんのおじいちゃんに嘘だと見破られないようにするためだ。


 歓迎会の時に行ったイ〇ンに行く事になっている……もう今更隠す必要性は無いと思うので、普通にイオンにしよう。


 集合場所はいつも通りに駅前だ。集合時間は十時になっている。これは、六花さんに提案されて、全て決まって居る。


 遅れないように駅前に行き、周囲を見渡す。二十分前なので、まだ静奈さんの姿は見えない。これで安心して待っていられる。


 デートというのは待ち合わせをする物よ!と六花さんに言われて、駅前に待ち合わせをする事になった。これは今までこうして来たので問題は無いが……問題はこの後だろう。


 六花さんから昨日の夜にメールが来ていた。確認してみると、『本当のデートをしているようにするのよ!わかった!?』と来ていたので、とりあえず、分かったと返事を返した。


 静奈さんの今後の事なので、六花さんが必至になっているのも十分理解出来るが、何か違う意図があるようにも思える……いや、流石にそれは考え過ぎか。


 六花さんは静奈さんと親友だ。その親友の将来が決まるかもしれない状況なのだ。普通に心配している決まって居る。


「航君、おはよう♪」


「おはようござい……」


 静奈さんの方に視線を向けると、俺は息を飲んだ。その理由は静奈さんがいつもと違うからだ。


 フリルの付いたレース袖に、白いスカート……髪型は普段のロングヘアーと違い、サイドテールだ。夏祭りに行った時も思ったが、白いうなじが艶めかしい。正直、物凄く似合っていて、可愛かった。


「ど、どうかな……」


 静奈さんは俺が凝視していると、恥ずかしそうに頬を染めながら聞いてきた。その行動だけで、心臓が高鳴る。


「物凄く似合ってます……普段も可愛いけど、サイドテールも物凄く可愛いです」


 と、そんなありきたりな感想しか言う事が出来なかった。だが、そんな言葉しか出て来ないほどに似合っているのだ。今の静奈さんの姿に言葉は必要ない。


 ただ、静奈さんを見ていれば、誰もが俺の言葉に納得してくれるはずだ。そう思わずにはいられない。


「そっか……ありがとう♪慣れない恰好だから、似合って無かったらどうしようかと思ったよ……」


「静奈さんなら、どんな格好でも似合いますよ!」


 これも本当の事だ。きっと、今以外の恰好をしても静奈さんなら、完璧に着こなしてしまうだろう。


「ありがとう♪それよりも……待った?」


 ここで、六花さんのメールを思い出す。確か、本当のデートのようにするように!と言われている。本当のデートをした事が無いので、全く分からないが、ここは答える言葉は一つだろう。


「全然待ってないです。俺も今来たばかりですよ」


 俺が勝手に二十分前に来ただけで、静奈さんは何も悪くない。それに、全然待っていないのは本当の事だ。


 駅前にある時計に視線を向けると、集合の十分前だ。という事は十分しか経過していないという事になる。待ったとは言えないだろう。


「そっか、ありがとうね♪」


 俺の言葉に満面の笑みを浮かべて、ウインクをする。これは、少し早く来ていた事は完全にバレているな……。


 しかし、何も言わない。言ってしまうと静奈さんの優しさに、横やりを入れてしまうからだ。


「そろそろ、バスが来る時間だし、行こうか♪」


 笑みを浮かべながら静奈さんは手を差し出してくる。その意味を問うほど、俺は鈍く無い。これはデートの練習なのだ。恥ずかしいが、手を繋ぐのは当然の事だろう。


 それに、静奈さんとは何度も手を繋いだ事があるので、温かく、柔らかい感触を知って居る。繋げるのなら、嬉しさを感じても、嫌だとは全く感じない。


「そうですね、行きましょうか、静奈さん」


 柔らかく、小さな手を取り、握りしめる。だが、静奈さんは頬を膨らまし、拗ねている様子だ。一体どうしたのだろうか?


「私、やっぱり不自然だと思うの!だから、静奈さんじゃなく、静奈でいいよ♪」


 確かに、付き合い始めて一ヵ月という設定だ。静奈さんとおじいちゃんにデートを見られる時はさらに時間が経過している。流石に、いつまでも『さん』付けは不自然だろう。


 しかしーーーあくまでも、これはカップルの振りをしているのだ。俺からすれば静奈さんは先輩でーーー。


「航君がそういうの気にする良い子だっていうのは知ってるよ♪だから、デートする時だけでいいから♪ダメぇ?」


 手を強く握りながら、上目遣いで言う静奈さん。それは流石に反則だろう。そんな顔で頼まれたら、男は決して断る事は出来ない。


「わかりました。静奈さんがそう言うなら……」


「やった♪ありがとう!」


 嬉しそうな笑顔をして、腕にしがみついてくる。大きな一部分が腕に当たり、柔らかな感触がする。


 そんな役得を体験しながら、俺たちは近くにあるバス停まで行き、前からバスに乗る。


**************


「大成功よ!これなら大丈夫よ!」


 航と静奈がデートの練習をしている時に、怪しげな影が、二人の背後に居た。


 明らかに怪しい恰好をしている三人組ーーーもとい、六花、彩、つかさは二人の後を付けていた。


「本当にこんな事していいんですか?物凄く申し訳ない気持ちになります……」


 普段着ないよう黒い服に、深く帽子を被って、サングラスをしている彩の顔は物凄く申し訳なさそうだった。


 航と静奈のデートの練習は、静奈の今後に関わる事だったので、決まった時は無いも言わなかったが、やはり気になる物は気になるし、嫌な物は嫌だ。しかしこれはーーー。


「彩は物凄く気になるでしょ?それに、あくまでも、これはデートの練習よ!私たちがしっかり、デート出来ているか見る必要があるわ!デートをした事が無い二人だけの採点なんて信頼できないでしょ?」


「確かに……それはそうですけど……」


 気になるのは事実だし、六花さんが言うのでなれば、いいか、と申し訳なさを感じながらも納得した彩は、少し嫉妬交じりの視線を向けていた。


「我は物凄く楽しいのだ!まるで、スパイのようなのだ!」


 一方、物凄く申し訳なさそうにしている彩とは違い、現状を物凄く楽しんでいるつかさ。尾行するのが楽しい見たいだった。


「つかさは物凄く乗り気だね……」


「我も少しは申し訳なさを感じるのだ。けど、六花さんの言う通り、本当に付き合って居る訳では無いのだ!だったら、楽しんだ者勝ちなのだ!」


 今は楽しんでいる六花と、つかさも、もし静奈と航が本当に付き合って居るカップルであれば、こんな事は決してしないだろう。あくまでも、カップル(仮)だからしているのだ。


 この尾行を提案したのは六花だが、静奈の事を心配しているのは本当だ。もし、デートがうまく行かずに、静奈が全く興味の無い人と結婚させられる事になるのは避けたいと心から思って居る。


 勿論、楽しんでいるという事も否定できないのだが……しっかりデート出来ているのか?というのも見るもの本当の事だ。


「それにしても、どうやったのだ?静奈さんと航先輩の声が聞こえてくるのだ!」


「確かに……彩もそれは思ってました」


 そう、ここに来る前に六花さんに渡された物を耳に付けると、二人の声が聞こえてくる。こんな事普通は出来ないだろう。


「これは、静奈のおめかしを手伝った松本さんに頼んだのよ!そしたら、快く引き受けてくれて……さっきまで、それを取りに静奈の家に行っていたわ!」


「だから、バラバラの集合だったんですか……」


 静奈の着替えなどを手伝った松本と、あらかじめ話を付けていて、そうするように頼んでいたのだ。


 服に小さな機械を付けてもらい、静奈が出たすぐに仙道家に行き、話し合った通りにしてもらい、今の現状になる。ようするに、使用人も関わっているからこそ、こういう現状になった訳だ。


「六花さん……本気過ぎますよ」


「我もそう思うのだ……」


 二人の動きを見ているだけでは、デートをしているのか、詳しい事までは分からない。二人で遊びに行くだけで、デートだと言う人も居るが、そういう言葉の気づかいがあってこそのデートだと六花は思って居る。


(とは言っても、デートなんて私もした事無いけどね)


「当たり前よ!本気と書いてマジよ!」


「カッコいいのだ!」


「そうかな……」


 一定の距離を保ちながら、二人の様子を見守る。


「あ、静奈さんが航の腕に抱き着いた!?」


「静奈……意外と大胆ね……」


「ふぅ~~なのだ!」


 手を繋ぐ事は想定していた三人だったが、腕に抱き着くのは想定外だった。早速、想定外に出来事が起こり、少し戸惑う三人だが、それでもする事は変わりない。


「それでは、オペレーションストーキングを開始するわ!」


「なんだが、物凄く、嫌な名前だよ!」


 確かにしている事は物凄く類似しているが、それでもその作戦名は無いだろうと思う彩だが、つかさは目を見開いていた。


「カッコいいのだ!!」


「ええええ!?全然カッコ良くないよ!絶対にずれてるよ!可笑しいよ!」


 と、言う彩だったが、つさかがずれて居るのはいつも通りだと言う事を思いだし、二人の後を追う事にする。


 始めの難所はバスだ。勿論、バスも同じ物に乗らないと、追跡は困難を極める。見失ってしまえば、ミッションは失敗に終わる。


「ここを乗り切るわよ!成功しなければ、国に帰れなくなるわ!!」


「それは嫌なのだ!絶対に成功させるのだ」


「つかさは知ってたけど、六花さんもかなりノリノリですね……」


 二人に申し訳なさを感じている自分が馬鹿らしくなり、彩も二人に合わせる事にする。実際、ここまで来てしまえば、申し訳なさを感じていても一緒だと開き直った。


 静奈と航は前からバスに乗った。この時間のバスは人は多い事もあり、後ろからも乗り込めるようになっている。六花は知って居て、この時間を提示したのだ。


 物凄く怪しげな変装をしている二人は、周囲から冷たい目線を集めながら、どうにか二人にバレないようにバスの中に乗り込む事に成功した。


「成功したのだ……」


「そうね……第一難関は突破したわ」


 小さなバスの中、声でバレないように小声で話す二人。航は察しが良いので、感づかれてしまう可能性がある。慎重になるに越した事は無い。


『航君は、見たい所ある?』


『特にないですよ。静奈はありますか?』


『なんか、名前で呼ばれてるので、敬語だと違和感があるから、普通で良いよ♪』


『わかりまし……わかった。だから、そんな頬を膨らまさない』


『分かればいいよ♪』


 三人の耳に、静奈と航の会話が流れる。そして、三人とも物凄く微妙な顔になった。


「なんだが、後を付ける必要性が無い気がします……」


「奇遇なのだ。我もそう思って居たのだ」


「奇遇ね、私もそう思ってしまったわ」


 早速、追跡する必要性が無いと思った三人だが、それでも国に帰るために、途中で投げ出す訳には行かない。


せっかく付いてきたのに、そうそうに退散する事はあまりしたくなかった。そもそもする気な無かった。


 デート自体がうまく行くのは物凄く良い事だ。しかし、今ここで帰ってしまうと、もしかすると、面白い事が起こった時に、見ていなかったなんていう事になりかねない。六花はそう思っている。


「それでも行くわよ!私たちのオペレーションストーキングは始まったばかりよ!」


「やっぱり、その名前嫌だよ!」


 静奈と航の様子を見ながら、三人が乗るバスはイオンに向かう。



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