関係性
扉が開き、白い光に包まれた俺たちは、全く見知らぬ場所に居た。
俺たちが住んでいる場所に少し似ているが……それよりも少し都会な感じだ。先ほど居た東京と比べると天と地ほどの差があるが、決して田舎という訳ではない……中途半端な街だった。
ここから見える物は、駅らしき物と、買い物をする人達……俺たちは商店街のような場所に居たのだ。
「ここはどこだ……え」
声を出してその違和感に気が付いた。なんか、普段聞く声より高い気がする……毎日聞いている自分の声に違和感を覚えるのは可笑しい。それに物凄く視線が低い。
「彩……俺の声なんか可笑しく……え」
近くに居る彩の方向に視線を向けると、そこには確かに彩が居たのだが……身長が小さくなっている。普段も小さいが、それがどうこうの話ではない。まるで、小学生のような身長になっているのだ。
「身長が縮んでるのだ!」
「本当だね……なんでだろ」
柊と静奈さんも彩と同じく小学生のような身長になっている。という事は高い声と低い視線……俺も同じように身長が縮んでいるのだろう。
「どうなっているんだ……」
自分の見た目は見れないが、三人は少しだけ髪型も違う。静奈さんは普段より短いし、柊はツインテールではなく、ショートヘヤーだし、彩は逆にツインテールになっている。どれも似合っていて可愛いが、少し違和感もある。
今まで物語の世界に入っても、見た目が変わる事は無かった。桃太郎とシンデレラ……見た目の変化が必要が無かった物語だ。
「もしかしたら、この物語は見た目の変化が必要なのかもね♪」
静奈さんも俺と同じ考えのようだ。しかし、そこで一つの疑問が残るのだ。
「見た目の変化が必要な物語ってどんな物語なのだ?」
「確かに、そうだよね。聞いたことがないよ」
そう、見た目の変化が必要な物語の想像がつかないのだ。もしかしたらあるのかもしれないが、俺の知識では全く出てこない。
「メジャーな話ではないかもな」
「そうなったら、どの物語か判断するのが物凄く難しいよ」
「今までは、変わりやすい物語だったのだ!」
「そうだね……とりあえず、物語が無いかわからないと動けないよね♪」
「そうですね……ここがどこかもわからないので、とりあえず、歩きますか?」
「それが良いと思うよ♪」
こんな時に六花さんが居れば、何かわかるかもしれないが、今回は物語の世界に居ない。だが、最後に見た六花さんが気になる……それに静奈さんの話もだ。
「静奈さん……六花さんの事ですけど……」
「気になるよね……私もすごく気になる」
それはそうだろう。亡くなったお父さんとお兄さんと一緒に居たのだから。普通ではありない光景……現実では亡くなった人に会うことは決してできない。
「物語に何か関係してそうですね」
「そうだね……あのタイミングで扉が開いたから、全く無関係だとは思ないよね」
となると、この物語の世界に六花さんが居る可能性がある。まずは、街の事を知って、物語の判別をしながら六花さんを探すのが一番良いだろう。六花さんに関係ある可能性があるが、無い可能性も捨てきれない。両方考えて行動した方が良さそうだ。
「とりあえず、駅の方に行くのだ!何かわかるかもしれないのだ!」
「そうだな」
俺たちは駅に向かう事にした。地名などが書いてあれば、この場所の特定と物語について何かわかる可能性がある。
この物語は今までの中では初めての物語だ。前の二つは、物語の雰囲気が出ていたが、今回は完全に現代を舞台にしている。
俺たちの世界となんら光景は変わらない。童話や昔話である可能性は少ないかもしれない。
「それにしても、暑いね……」
「我も同じこと思ってたのだ……」
季節は完全に夏だろう。蝉の声も聞こえ、小さな子供が商店街で遊んでいる光景も見て取れる。夏休み期間なのかもしれない。
それから俺たちは歩いて駅に向かう。見た目は小学生なので、もしかすると周りの人達からは、仲良く遊んでいるそうに見えているかもしれない。
「ここって……」
「どうかしましたか?」
「駅を見て何かわかりましたか!?」
静奈さんが少し驚いた様子で駅を見ている。駅の名前などはなぜか書かれていないが、この場所についてわかったのだろうか?
「ここ、六花が生まれ育った街だよ……話で聞いた雰囲気に似てる……というか完全に一致してる」
「ということは、この物語は六花さんに関係しているかもしれないですね」
「そうだね……けど、断定するのは早いよ。ちょっと待っててね」
そういうと俺たちから離れて、近くを歩いているおばあちゃんに近づいていった。
「どうするんだろ……」
「わからないけど、何か考えがあるんだろ」
「そうだと思うのだ!」
声を聞こえないが、何かを話している見たいだ。そして、話が終わったのか、少し礼をして、こちらに向かって駆けてきた。
「間違いないよ!」
珍しく声を荒げて静奈さんが言った。おばあちゃんに何を聞いたのだろうか?
「この物語は七年前だよ……六花の家族が事故で亡くなった年……」
「という事は、この物語は……」
「六花が関係していると思うよ」
だとしたら、間違いなく六花さんはこの街に居るのだろう。それなら、場所を知るより、先に六花さんを探した方が良さそうだ。
「とりあえず、立花先輩に会うのだ!」
「そうだね!それが一番良いと思う!どういう物語なのか知って居る可能性もあるし!」
六花さんを探すのは賛成だ。俺も同じ事を考えていた。しかしーーー。
「今の私たちだったら、六花は知らないと思うよ」
そう、これは七年前だ。物語の世界が作り出した七年前だとしても、出会って居ない俺たちの事を六花さんが知って居る可能性は低い。
物語の都合上知って居る可能性も否定できないが、それは望み薄だろう。見つけるのはいいが、不審に思われるのではないだろうか。
「それに、この時の六花を探すはかなり難しいと思うよ」
「どうしてですか?」
「立花先輩なら、外で元気にはしゃいでるイメージがあります!」
「我も同じなのだ!誰かが作った砂の山とか平気でつぶして笑ってそうなのだ!」
「誰かに、薙ぎ払え巨神兵!とか言って、色んな事させてそう!」
「六花のイメージってそんな感じだったんだね……」
静奈さんが二人のイメージを聞いて、少し苦笑いをしていた。
確かに、今の六花さんを見ていると、そういう事もしてそうだな……と内心思ってしまった。
「けど、違うんだよ♪昔の六花は物静かな子だったよ♪」
「本当ですか……」
「本当だよ。初めは、私のイメージも物静かな子だった♪」
「想像できないのだ……」
「彩も全く想像できない……」
俺も全く想像できないが、静奈さんが言うのならば本当の事なのだろう。
「だから外で遊んでる可能性はかなり少ないよ。それに、日付も六花のお父さんとお兄さんが亡くなる一週間前だったよ」
「それも何か関係しているかもしれないですね……けど、そうなると物語の完結方法が全く想像つきませんね」
「そうなのだ!桃太郎とシンデレラは明確に完結があったのだ!」
「けど、この物語が六花さんが関係している事以外全くわからないよね……関係していても、それがわかっても、その後どうすればいいの?ってなるよ」
物語が完結しなければ、意味がない。だが、今回の物語はかなり完結方法がわかりづらい。物語の概要がわかっても、完結方法がわからなければ、動きようがない。
「とりあえず、どうすればいいのか、わからないのだ……」
六花さんを探しても、俺たちの事を知らなければ、何も変わらない。俺たちの事を知らなければ、物語の事など知って居る訳がない。
となると、物語の完結方法が完全に俺たちの予想になってしまう。シンデレラの時のように、何度も繰り返すのは期待できない。一回きりと考えて、行動しなくてはならない。予想では動けない。何か確定した情報が欲しいが……その情報をどうすれば得られるのか想像も出来ない。完全に八方塞がりだ。
「とりあえず、立花先輩を探した方が良いと思うよ!私たちの事を知らなくても、どこに住んでいるかとか!知って居る方が便利だと思う!」
「彩ちゃんの言う通りだね♪それに、聞いた話では、六花は旅行に行く見たいなの。そこで、事故にあって、お父さんとお兄さんは亡くなる見たいなの」
「多分ですけど、その時が物語の終わりですね」
「そうだと思う。そうなると、物語の完結方法は、事故を起こさない事なのかな?」
「わかりません……けど、候補には入れていて良いと思います」
事故が起きるまで一週間。期間的にもそこで物語が終わると考えて正解だろう。しかし、完結方法が見えない。
「仮に事故を止める事が完結方法だとするのだ?どう事故を止めるのだ?」
「旅行に行かせないようにする?が一番良いと思う!」
「まぁ、その完結方法だと、それが一番妥当だよな」
その他の方法で事故を止めるなど容易ではない。なら、事故を起こさせないという選択を取るしかない訳だが……これもあくまで予想なので、断定はできない。あくまでも可能性があるというだけだ。
「とりあえず、六花を探そう♪六花が、お母さんは近所で美人で有名だったって言ってたから聞き込みすればわかるかも♪」
「確かに、六花さんが美人だから、お母さんも美人で有名でも可笑しくないですね」
俺がそういうと、彩に物凄く睨まれた。
「彩ちゃんが怒ってるよ♪」
「怒ってないですよ!拗ねてるだけです!」
「同じだろ。それに彩には彩の可愛さがあるから大丈夫だよ」
「…………」
「彩が真っ赤になったのだ!」
柊が言う通り、彩の頬は林檎のように真っ赤になっている。
「それぐらいにしておいて、探そうか♪」
「そうですよ!」
顔を真っ赤にした彩が早歩きで歩き出す。それに付いて行く俺たちだが、彩はどこに向かっているのだろうか。
しばらくすると、駅の近くにあるスーパーが見えてきた。この付近に住んでいるのであれば、スーパーの人に聞けばわかるかもしれない。
「とりあえず、聞き込みしようか?」
「そうだね♪何か知ってる人居るかもしれないし♪」
子供の姿なので、流石に男の俺が聞き込みしてもあまり不審に思われる事もないだろう。小学生の言う事にいちいち気を遣う大人は少ないはずだ。それに、みんなも居るので問題ない。
「各自で行動した方が良いと思うのだ!」
「私もそう思う!一緒に聞くより効率が良いし!」
確かにその通りだ。みんな一緒に聞くより、多くの人に話を聞けるからだ。
「私は一緒に方が良いと思うよ♪」
「どうしてなのだ?」
「一応、私たち小学生の姿な訳だし、一人で歩き回ってたら店員さんに声かけられる可能性あるよ♪」
「それは確かにそうなのだ……」
という訳で、俺たちは一緒に店員に聞くことにした。レジに居る人に聞けばいいかもしれないが、流石に仕事中なので、声をかけづらい。そうなれば、まだ声を掛けやすい、品出しをしている店員の方が良いだろう。
「あの……」
俺たちはさっそく聞く事にした。あまり忙しそうではない店員に声を掛けたのだ。
「どうかした?」
店員も俺たちが小学生の姿なので、優しい笑みを浮かべていた。男の人ではなく女の人に声を掛けたもの、正解だったかもしれない。
「この辺りに住んでいる、立花さんって知りませんか?」
「立花さん……流石にお客さんの名前まで把握してないからわからないわ。ごめんなさいね……何か特徴はある?」
「えっと……」
ふと、六花さんのお母さんを見たことが無い事に気が付き、言いよどんだ。美人なのはイメージできるが、その他の事が全く分からない。六花さんのような性格なのだろうか?
「髪は金髪で……優しそうな顔をしています。後、物凄く美人です♪」
困って居た俺の隣から、静奈さんが助けてくれた。静奈さんは六花さんの仲が良いので、会った事あるのかもしれない。
「そうね……見た事あるかもしれないけど……ごめんね。まだ、このお店に来たばかりだから……それにしても、どうしてその立花さんを探してるの?」
どう答えればいいのだろうか?本当の事は言えないし……。
「娘さんと仲良くなりたくて、探してるんです!学校は今夏休みだし、この休み中に仲良くなりたいなって!」
「なるほどね。わかった。少し待ってて」
彩の答えに笑みを浮かべて、どこかに行く店員さん。少しすると、男に人を連れて、戻ってきた。
「どうかしたの?」
「立花さんって知ってますか?金髪で、美人らしいんですけど……」
店員さんが男の店員さんに聞いてくれている。もしかしたら、このお店に長く居る人なのかもしれない。
「知ってるよ。さっき、お父さんと子供さんで来てたよ。ついさっき、買い物を終えて出て行った見たいだけど……」
「だってさ、この周囲の人達は、商店街を抜けた住宅街に住んでるから、もしかしたらそっちの方面に行ったかもしれないよ」
「ありがとうございます♪」
どうやら、先ほどまで六花さんはこのお店に居たらしい。商店街の方面に行けば会えるかもしれない。
俺たちは店員さんに礼をして、再び商店街の方に向かうことにした。俺たちの事を覚えていない可能性が高いが、とりあえず声を掛けてみても良いと思う。
低い可能性になるが、もしかしたら覚えている可能性もある。どちらにしても、覚えているか、覚えていないかぐらいわからないと、動けない場面もあるかもしれない。
それがわかるだけでも、大きいかもしれない。それなら、出会って話かけるだけでも十分効果があるはずだ。
「あれって……!」
商店街に付くと、静奈さんが指をさしながら声を出した。
そこには、東京で六花と一緒に歩いていたお父さんらしき人と、金髪の髪をした女の子が手を繋いで歩いていた。
「立花先輩かもしれないのだ!」
俺たちは駆け足で、二人の後ろを追った。




