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始まり

 今日の起床時間はかなり早い。


 夜中の二時半にタイマーが鳴り響くと、静奈さん以外は目を覚ました。静奈さんは行かないと言ってたので、今日はマンションに居るらしい。


 まだ、外は真っ暗で、人の数も少ない。こんな時間に起きる事は初めてなので眠いが、付いていくと言ったのは俺自身なので、顔を洗って目を覚ます。


「航、本当に来るの?」


「別に無理をしなくてもいいのだ。我たちだけで、行くのだ」


 眠そうにしている俺を見て、彩と柊は心配そうに聞いてきた。しかし、俺はもう決めていた。


「行くよ……流石に二人だけで行かせる訳には行かないし……」


「けど、中に入ったら結局別々になるよ?」


「そうなのだ。会場は同じだけで、行く場所は違うのだ」


「それは、その時に考えるよ」


 今日は、彩と柊の最大の目的である、コミックマーケット……いわゆるコミケと呼ばれるイベントの日だ。


 コミケットと呼ぶ人も居るらしいが、そこは人それぞれだろう。毎年、夏と冬に開催されるイベントで、三日間で行われる。五十万人以上も来る世界最大の同人誌即売会……らしい。春コミというもの、あったらしいが、今は夏と冬の二回行われている。


 二人に付いていくために、事前に準備をしようと思い、色々調べた。そして、完全に遊び感覚で行く場所ではないのはわかった。


 写真に写っている人の多さを見て、正直なところ絶句した。国内最大の展示場が、人で埋め尽くされているのだから絶句するしかないだろう。


 本来オタクでもない俺が行くような場所ではないが、二人だけでこんな朝早くから出かけさせるのは正直心配だ。過保護過ぎるかもしれないが、何かあってからでは遅いので、行くことにしたのだ。


「とりあえず、始発で行くからもう少し時間あるよ!初めて行くから正直、勝手がわからないけど、ネットで調べて準備したから大丈夫!だと思う……」


「夏だから、絶対に暑いのだ!航先輩も、タオルとか飲み物とか絶対に忘れたらダメなのだ!」


「そうだな……俺も昨日調べたから準備だけはしておいたよ」


 調べてどうにかなる物ではないのは知って居るが、初めて行くのだから調べる以外にないだろう。それに、事前知識があるのと無いのでは大きな違いだ。


「物凄く楽しみだよ!」


「我もなのだ!!一回行って見たかったのだ!」


「それは見てたらわかるから、とりあえず、夜遅いからあまりうるさくしないようにな」


「わかったのだ!」


 本当にわかって居るのか心配になるが……笑顔で楽しそうにしているので、何も言わないようにする。


 行かない静奈さんは寝ているのだから、起こさないように静かにしていた方がいいだろう。


 昨日のうちに買ってきたおにぎりなどを食べて、早めの朝食を終わらせる。そして、始発の時間が近づくと、俺たちは静かに部屋から出る。


 夜の新宿にはまだ灯りが灯っており、人もまばらだが、歩いている。車もまだ走っていて、深夜とは思えない。


 歩いて新宿駅に向かい、駅の中に入る。すでに何人も人がおり、同じくイベントに向かう人や、仕事に向かう人など多くの人が居るのだろう。


「始発が来るまで少し時間があるのだ!」


「そうだね!どこに行くかしっかり見ておかないと!」


「その前に国際展示場の行き方調べないとダメだろ」


 結局、二人は昨日秋葉原で買ったカタログを見ているだけで、俺が行き方を調べた。


「始発に乗って、大崎で乗り換えて……そこからりんかい線に乗ったら着くみたいだ」


「私、ここ行きたい!」


「くくく、我はこの魔界に行くのだ!」


「って、全然聞いてないし……」


 ため息を吐いて、俺は二人の様子を眺める。笑顔を浮かべながら楽しそうにしているので、俺も少し楽しい気分になる。二人を無事に国際展示場まで届けるのが俺の役目だ。迷う事は無いと思うが……そうならないように注意しよう。


 それから、始発の電車の乗り、十五分ほどで大崎の到着した。そこから私鉄のりんかい線に乗るために、駅から出て、掲示板を見て歩き出す。


 しかし、アニメのキーホルダーを付けた人や、トートバックを持った人など、俺たちと同じ行先の人が大勢居るので、心配はなくなった。一応、掲示板も見るが、付いていくだけでどうにかなりそうだ。


 それから、りんかい線の乗り場の着く。すでにそこには多くの人が電車を待っていた。


「やっぱり、人多いね!」


「くくく、我の魔力で吹き飛ばしてやるのだ!」


「つかさ、やめて!痛い発言したから周りの人が私たちを見てるよ!」


「痛くないのだ!!」


 否定する柊だが、周りを一度見渡して、俺たちが見られている事を理解したようで、すぐに大人しくなった。


「それにしても、男の人ばっかりだな……」


「それは仕方ないよ。男の人の方が、オタクは多いから」


「我たち見たいに始発で来る女の子は珍しいと思うのだ!」


 確かに、電車を待っているのはほとんど男の人だ。女の子も居るには居るが、少ない。


「それに、女の人は二日目に行く人が多い見たいだよ」


「どうしてだ?」


 確か、昨日調べた時は、三日間でジャンルが決まっているらしい。一日目は何で、二日目は何で、三日目は何で……という感じで、何日目かによって、内容が異なるみたいだ。


「二日目はBLボーイズラブ系が多いからだよ!」


「腐女子はみんなそっちに行く見たいなのだ!」


「なるほどな……」


 女の子が好きな分野が今日は無いからという訳か……彩と柊はそっちには興味なさそうなので、行かないのだろう。


 それから少しすると、アナウンスが入り、電車が到着した。そして、駅で待っていた大勢の人が電車の乗り込む。


「物凄い人だな……」


 前の方だったため、柊と彩は椅子に座ることが出来た。俺は座れなかったので、二人の前に立つ感じになった。これなら、二人が何かされることも無いだろう。


「こんなに電車に人がの乗ってるところ見たことがないよ」


「これが、始発の電車なのだ……」


 大勢の人が電車の乗り込んだので、電車の中はいっぱいだ。正直、ほとんど体を動かすことが出来ないレベルで人が乗っている。


携帯を見たりするのも場所によっては出来ないのではないだろうか。俺は比較的に楽な場所に居るので、見れるが。


 そんな今までに経験した事がない満員電車を二人と話ながら乗り切り、目的の国際展示所に着いた。


 椅子に座ったために電車を降りるのは最後の方になる。二人もその事に焦った様子はないが、電車の中はそうではない。


 ドアが開くと同時に雪崩のように電車から人が降りていく。まるで、一人でも多くの前に行こうとしているようで、これが世界最大の同人誌即売会なのかと心の中で思った。


「ゆっくり、転ばないようにしてくれよ」


「わかってるよ!」


「わかっているのだ!」


 駅の中は電車の中と同じように、人しかいない。多くの人が居るので、進行ペースもゆっくりだ。そして、改札の前までくると、また違った光景が広がっていた。


「これが噂の始発ダッシュなのだ!」


「私たちが後ろの方だから、かなり緩やかだけどね!」


「けど、ずっと生で見たかったのだ!」


「私もだよ!ネットに上がっているのしか見た事ないし!」


 二人の会話を聞いていると、これはコミケの度に毎回起こっているもの見たいだ。


 大勢の人が改札から出ると、急いで出ていく。もちろん、走って居る人など大勢いる。それに、りんかい線で降りて来る始発組を携帯で撮影している人が多く居る。これも毎年の恒例なのだろう。


「私たち、本当に来たんだね!」


「そうなのだ!物凄く嬉しいのだ!」


 時間もまだ早朝だ。世界最大の同人誌即売会と言われているらしいが、これほど人が集まる物なのだろうか……駅を出て見える光景はまさしくそう思わせるには十分だった。


 みんな、この日のために準備をしたりしているのだろう。きっとこの中に、目的も無しに来ている人は一人として存在しないだろう。そう考えると、急に自分が来ている事が場違いな気がしてきた。


「見て!物凄く大きいよ!」


「逆三角形なのだ!!」


 駅からしばらく人の流れに沿って歩いていると、巨大な逆三角形が姿を現した。俺も流石にこの逆三角形については知って居た。


 しかし、こうしてみると、本当に大きい。だからだろうか、普通に歩いている人も居るが、彩や柊と同じように写真を撮っている人も居る。毎年撮っている人も中には居るだろう。


「これを見ると、コミケ来たって感じするね!」


「物凄くわかるのだ!!」


「おい、離れないでくれよ……」


 二人はテンションのあまり、大勢居る人の間をすり抜けて行こうとしたので止めた。もし、二人を見失えば、探すのが大変だからだ。それに迷子になったら困る……いや、この場合俺は迷子という事になるか。なんせ、二人が心配だから付いてきただけだし。


 そう考えると、俺は二人から離れないように、人の間をすり抜けて行く。だがすぐに二人は辞めて、先ほどと同じようにゆっくり歩く。


「もう、すごい列が並んでいるな……」


 見えるだけでも物凄く長い列が形成されている。俺たちはスタッフの指示と、大勢の人についていって、なんとか列に並ぶ事が出来た。


「これって、ずっと立ってる物なのか?」


「違うよ。しっかりと列が形成されたら、座っても良くなるよ!荷物とか置いて、違う場所に行っても大丈夫らしいよ!」


「逆に、今違う場所に行くと、この場所には絶対に戻ってこれないのだ!」


「まぁ、私たちも来たこと無いから、ネットに書いてあった事を言ってるだけだけどね!」


 そう言う彩だが、実際にしばらくすると、周りの人たちが座り始めた。俺たちもそれに合わせて、座る。


「航、トイレとか大丈夫??」


「大丈夫だけど……どうかしたのか?」


「コミケのトイレは物凄く並ぶのだ!」


「一時間待ちとかもある見たいだから、出来るだけ行かないに越したことはないと思って!」


「トイレに一時間か……」


 トイレに行きたいと思ってから、一時間並ぶのは苦痛以外なんでもないだろう。熱くなってきても、出来るだけ水分を取らないようにしよう。倒れない程度にだけど。


「せっかくだし、ヤクド行こうよ!かなり時間あるし」


「良いと思うのだ!」


「買った物食べないと腐るぞ?」


「大丈夫だよ!」


 そういうと、彩と柊は買ってきたコンビニの袋を自分たちが座っていた列に置いた。携帯と貴重品は、持ち歩く。


 念のため、持ってきていたトートバックも列に置いて、列を抜ける。俺たちの周りの人も何人か同じようにしている人が居たので、場所を取られたりする心配はないのだろう。


「物凄く人が居るのだ……」


「並ぶしかないよ……」


 人の多い会場だ。当然のようにヤクドにも多くの人が居る。地元にも存在しているが、これほど多くの人が居るなど見たことがない。それにーー。


「見て!コミックマーケット、特別セットだって!」


「そんなのがあるのか……」


「そんなに食べきれないのだ」


 そこには、チャレンジセットと書かれており、その名の通りに内容もかなり重たい物になっている。三人で食べる分には大丈夫そうだが、それを一人で食べるとなると、かなりきつそうだ。


「航はそれで決まりだね!」


「頑張るのだ!航先輩!」


「無茶言うなよ……」


 キラキラした目で見て来る二人だが、今回はそれに騙されない。流石に俺もあれは食べれる気がしない。それにこの量を朝に食べると、動けなくなるだろう。


「冗談なのだ!」


「私は本気だよ?」


「それなら、彩が食べてくよ。彩ならそれぐらいペロリだろ?」


「航は彩の事、どんな風に思ってるの……」


「冗談だよ」


 彩は比較的食べる方だと思うが、あくまでも女の子ではだ。男子に比べると全然食べない。


 暫く列に並ぶと、ようやく俺たちの番になった。自分たちの食べたい物を頼んでから気が付いたが、席は空いているのだろうか。


「席空いてるよ!」


 しかし、そんな心配もすぐになくなり、俺たちは商品を受け取り、席に座った。すると、店員が席まで来た。


「こちら、お席は三十分間になりますので、お願いします」


 そう言うと、時間の書かれた紙を机に置いていき、元の場所に戻った。


「やっぱり、時間制限があるんだな」


「ずっと同じ人が座ってると、他の人が座れないもんね」


「仕方がないのだ」


 それから、早朝から少し辛かったが、なんとか食べ終えた。それから、時間が来たので、俺たちは席を後にして、元の場所に戻る事にした。


************


「急に熱くなってきたね……」


「汗が止まらないのだ……」


 日が完全に昇ると、急激に気温が上昇した。全身から出て来る汗を持って来たタオルで拭きながら待っていた。


「そろそろ、列が動きますので、準備の方お願いします!」


 スタッフの人がそう言うと周りの人達が準備を始めた。時刻は午前九時前で、コミケ開催が十時となって居る。


「人が多いから動き出しが早いのだ!」


「もうそろそろだね!」


 二人は、何度も会場の地図を確認している。場所を間違えないためだろう。


 コミケは企業ブースと、同人ブースの二つに別れている。企業ブースは、その名の通りに企業が出展する場所だ。同人の方は、個人で作ってきた物を披露する場所だ。二人は企業の方に行くみたいだ。


 そして、列が動き出し、大勢の人が前に進む。


「前の方の人たちは物凄く朝早いんだろうな」


 始発でこの位置なのだから、大層早い時間からこの場に居たに違いない。


「早いと思うよ。けど、徹夜はダメだよ。周りの人に迷惑かけるし、何かあればコミケ自体が開催されない可能性も出て来るしね」


「けど、始発では買えない物があるのも事実なのだ!ダメだけど、買えるならって言う人が多いのだ!」


「なるほどな……」


 確かに、これだけの大きなイベントだ。当然のように目的の物が買えない人も出て来る。それは仕方がない事だろう。だから欲しい物を確実に手に入れたいという気持ちもわかる。しかし、そのせいでイベント自体が開催されないようになれば、元も子もない。


「まぁ、私たちは始発でも十分買えると思うし大丈夫だよ!それに買えなくても企業だから通販とはやってくれるしね!」


「そういうことなのだ!」


 そんな話をしながら俺たちは、列を進んでいく。そして、列が止まり、時計を見ると、コミケ開催まで残り数分になっていた。


 そして、残り一分になり、十時になると同時に放送が流れる。夏のイベント、コミックマーケットが始まった。


**********


「本当に疲れたのだ……」


「暑かった……」


「でも、買えてよかったじゃないか」


「良かったのだ!」


 俺たちは、コミケで自分たちの買い物が終わると、同時に静奈さんが待つ、マンションに戻ることにした。


 そして、行きと同じく人が多い電車に乗って、今、部屋の目の前まで帰ってきた。


「みんなおかえり♪」


 下で連絡をして、静奈さんに開けてもらった。鍵を預かる訳にもいかないので、こういう風にするしかなかったのだ。


「戻りました」


「帰ってきたのだ……」


「疲れました……」


 コミケを終えた二人は、行きとは違い、かなり眠そうだった。俺は自分の場違いさに気が付き、速攻で人が少ない場所に逃げ込んだ。それでも、十分な人の多さだったが、あの人ごみの中で俺が出来ることはそれしかなかったのだ。


「思ってたより早かったよ♪」


「二人の買い物が直ぐ終わったので、帰ってきました」


 二人の買い物は本当に一瞬だった。並んだ時間を考えると、どうしてあの時間に行ったのか疑問に思う事だが、そうしなければ買えない可能性があったのだろう。


「三人とも、お昼食べた??」


「食べてないですよ」


「どこか食べに行く?」


「俺は良いですけど……二人はどうする?」


 買ってきた荷物を置いて、ソファーでぐったりしたいる二人に聞いた。


「私は行くよ!少し休憩してから」


「我も行くのだ!少し休憩してから」


「それじゃ、もう少しゆっくりしようか♪」


 そして、俺たちは汗をたくさんかいたので、お風呂に入る事にした。先に二人に入ってもらい、上がってくると同時に俺が入った。


 大勢の人の中を、汗だくで歩いていたので、正直かなり気持ちが悪い。体調の話ではなく、服に汗が染みこんで気持ちが悪いのだ。


 なので、お風呂に入るとすっきりした。


 それからしばらくすると、俺たちは遅めのご飯を食べに行く。あまり遠くに行きたくない見たいなので、近くにあったうどん屋で食事をすることにした。


「安定のおいしさなのだ!」


「私もここのうどん好きだよ!」


 初日に気が付いて居ればよかったが、少し分かりにくい場所にあったために気が付かなかった。


 そして、食べ終わると、俺たちはそのままマンションに帰る事にする。


「みんな、気になってたんだけど、六花から連絡来てる?」


「私は来てませんけど……」


「我も来てないのだ!」


「俺も来てないですね……」


確かに、六花さんからの連絡は一切ない。こっちから返事を送っても全く帰ってくる気配はない。


「私もね、全く返信がないの……こんなこと初めてだよ」


そういう静奈さんはとても心配そうだった。その様子を見ているだけで、六花さんが連絡を返していない事が可笑しなことだというのがわかる。流石の六花さんでも、静奈さんには返信を返しているはずだと思って居た。しかし、そうではないとなると……何かあったのかと心配してしまう。


「あれ……」


「どうかしたのか?」


 彩は目を見開き、ある方向を向いていた。俺も視線に合わせて、そちらの方向を向くとーーー。


「六花さん……?」


「何言ってるの?六花は東京にはーーー」


 静奈さんも、俺と同じ方向に視線を向けると、固まった。それもそのはずだ。間違いなく、六花さんが目の前で歩いているのだ。それも知らない男の人と笑いながら。


「先輩も別で東京に来てなのだ?」


「違うよ……だって、おかしいもん……」


 だが、静奈さんは俺たち以上に驚いていた。


「どうしたんですか?」


「そんな訳ないよ……あの二人って……」


「あの二人の男の人ですか?」


 静奈さんは異常なほどに驚いていた。しかし、その理由は俺たちでは全く理解する事が出来ない……とりあえず、六花さんと一緒に居る二人組の男に何かあるのだろう。


「もしかして無理やりーーー」


「違うよ!けど、おかしいよ!だって、あの二人は……」


 急に辛そうな顔になり、静奈さんは小さくつぶやいた。


「六花のお父さんとお兄さんは、七年前に亡くなってるんだよ……」


「え……」


 驚きの言葉と共に、目の前の視界が大きくゆがむ。物語の世界に行く時のような強烈な眩暈ではなく、もっと別の何か。


 だが、先ほどまで視界に写っていた新宿の街並みは白いモヤにかき消され、まるで世界が歪んでいるように見える。


 そして、しばらく、それが続きーーーモヤが晴れると、目の前には一つの扉が現れた。まるで、初めからそこにあったかのように、何事もなく存在していたのだ。


 そして、誰も触れていないのに、そっと扉が開きだしーーー俺たち四人は強烈な眩暈に襲われた。


 そう、物語が開いたのだ。


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