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王様ゲーム

車に乗ってから一時間程度が経過した。三時間置きぐらいにサービスエリアで休憩すると向こうから連絡があったので、後の時間は車の中に居るということになる。


 車の構造上、俺たちが居る場所には窓が付いて居ないので、外の風景を見ることは出来ないのが残念だが、それ以外は物凄く快適なので文句は言えない。


 関東には初めて行くので景色を見ながら行きたいというも少しはある。しかし、車ならではの長時間同じ態勢で居るという状態にはならないので、そちらの方がありがたい。


 実際に普通の乗用車で東京に行くのではあれば、八時間は車の中に居なくてはならないので、かなり体に負担がかかるはずだ。広々と使えるだけでもかなり助かる。


「東京まで時間があるけど何かする?」


「何かって何をするですか?」


 静奈さんの言葉に、周りを見渡しながら彩は質問を質問で返した。確かに、広々としていて、快適に過ごせる空間だが、特別何かある訳ではない。四人で何かをするものはあるようには思えない。


 誰かが気を利かせてトランプなどを持ってきて居るのであれば、かなり楽しく時間をつぶせる気がするが、持ってきて居れば出しているだろう。


 この一時間も、ほとんどテレビを見ながら静奈さんが持ってきたおかしや、飲み物を飲み食いしているだけだ。それでもみんなと話をしているので、楽しいのは変わりはない。


「実は私……一回やってみたかったゲームがあるの♪」


「ゲームですか?」


 静奈さんが自分からゲームをしたいと言ったのは初めてな気がする。六花さんも特にゲームをしているイメージはないが、静奈さんが言うのは少し意外な気がした。


 ちなみに、彩は柊は現在も携帯アプリなどをしながらお菓子を食べている。今はほとんどオートで周回出来るらしいので、オートで回しているらしい。


「気になる??」


「気になるのだ!」


「そうだよね!!」


 静奈さんがしたいゲーム……想像も出来ないので確かに気になると言えば気になる。テレビゲームという線は絶対にありえないと思うので、何か違ったゲームだろうか。


「気になるならやってみよう♪」


 自分が持ってきた鞄をあさり、白い箱を取り出した。それを机の上に置き、静奈さんは楽しそうにそれを振る。


「それって……何ですか?」


「何って、白い箱なのだ。見たらわかると思うのだ」


「それは知ってるよ!何をする箱なの!ってことだよ!」


「そういうことなら早く言うのだ。紛らわしいのだ」


「まさか、そんな捉え方されるなんて思ってもなかったよ……」


 彩はため息を吐きながらつぶやいた。


「心配しなくても、俺と静奈さんには伝わった」


 逆にそんな捉え方の方が出てこなかった。まぁ、柊は少し変わってるところがあるので、という自己完結をしておく。


「くくく、我は普通の者とは違う。貴様見たいな矮小な存在とは違うのだ!我の域には人間では到達する事は不可能なのだ!」


「そのドヤ顔少しうざいよ?」


「ひどいのだ!!」


 ジト目をしながら言う彩に、胸を押さえながら傷ついた様子の柊。とにかく話が全く進まないので、俺は口を開いた。


「それで、どういうゲームをするんですか?」


「良く聞いてくれました!!」


「なんだか、立花先輩見たいですね」


「付き合い長そうだし、似て来るじゃないか?」


「きっとそうなのだ!!」


 普段は全く似てないが、こういう楽しそうに笑う顔……というか、何か考えている時に笑っている二人は少し似ている気がする。


「これはくじだよ!!そして、このくじでやるゲームはーーー♪」


 鞄から四本の割りばしを取り出し、白い箱の中に入れる静奈さん。中身は見えないように工夫されている。


「王様ゲームだよ♪」


「「王様ゲーム!?」」


「息ぴったりだな……」


 両手を頬の横まで上げて驚く二人。タイミングも仕草も全く一緒だった。少し微笑ましい光景だった。


 王様ゲームとは、くじを引き、王様になった人が、他のくじに書かれた番号を言い、王様の命令を行うレクリエーションだ。


 聞く話によれば合コンなどで盛り上がるゲームらしいが……王様ゲームをするには人数が少なすぎるのではないだろうか。王様になる確率がかなり高くなり、運が良ければ連続で王様になる可能性も高い。


「四人でやるゲームではないと思う!」


「確かに、もう少し人数が居る方が良いと思うのだ」


「そういうものなの?私、あんまり王様ゲームの事知らなくて……テレビでやってるの見て、みんなでやりたいなって思って……」


 急にしょんぼりしてしまった静奈さん。彩と柊も思った事を言っただけで、静奈さんをしょんぼりさせる気はなかったのだろう。


 二人はどうしたらいいのかわからずに、お互いの顔を見つめ合い、そしてなぜか二人揃って俺の方を向いてきた。


 なんとかして!!というのが視線だけでわかってしまう。俺もしょんぼりしている静奈さんを見たくはないので、口を開く。


「とりあえず、せっかく用意してくれた見たいだし、何回やってみましょう!」


「そうです!みんなでやれば楽しいですよ!」


「それに、少人数でやってはいけないということもないのだ!我も一回やってみたかったのだ!」


 俺の言葉に、二人も合わせてくれる。別にしなくないという訳では決してないのだ。せっかく、くじまで用意してくれたのだから、やってみてもいいだろう。俺も王様ゲームという概要は知ってるが、やるのは当然初めてだ。


「みんな……そうだよね♪とりあえず、やってみて、盛り上がらなかったら、やめたらいいしね♪」


 しょんぼりしていた静奈さんも、いつも通りに戻ってくれた。とりあえず、一回やってみることになった。


「このくじには王様と一から三までの番号が書いてあるよ♪それで、王様になった人が、番号を言って、その番号の人は言われたことを絶対にするんだよ♪」


「わかりました」


 彩と柊も同時に頷いた。ようするに、四分の一で入っている王様を引けばいいのだ。人数が少ないので、連続で王様になる可能性も高い。自分の運に掛けてくじを引く以外に方法はない。


「掛け声があるまで、引いたくじは見せたらダメだよ♪」


 静奈さんはそう言いながら、くじを混ぜて机の上に置く。上からはくじの結果がわからないので、これで平等だろう。


 一斉にくじを引き、みんな各自のくじに書かれた内容を確認する。俺は三番と書かれたくじだった。どうやら王様になれなかった見たいだが、まだ一回目だ。これから王様になる可能性もある。


「王様だーれだ♪」


 静奈さんの掛け声とともに、柊がくじを前に出した。そこには王様と赤い文字で書かれていた。どうやら一回目の王様は柊のようだ。


 人数は少ないので、何番と何番であれをしてください、という内容だったら何もしないでいいのは一人しかいない。ほとんどが王様の命令に巻き込まれるというハードなゲームになっている。だが、イベントを何もしないという時間が少なくなるので、もしかしたらいいかもしれない。


「我なのだ!!えっと……」


 柊は顎に手を添えながら考える。遊びなのだからそんなに深く考えなくても良いと思うが……。


「良いのがあったのだ!!」


 少し考えて、何か良いのがあったようで、楽しそうな顔をしている……物凄く嫌な予感がする。


「三番の人はこのゲーム中、ずっと中二病になる!でいくのだ!」


 柊が指定してのはよりにもよって、三番……俺の番号だ。しかも、内容が絶対に思い出しくないあの時の事を思い出すないようだった。


「まじか……」


 みんなにくじを見せて、俺が三番だというのを伝える。これから恥ずかしい時間が続きそうだ。


「おかえり、シナプス♪」


「頑張れシナプス!!」


「…………」


 絶対に言われると思った……。この内容はどうしても回避したい物だったが、三番を引いた自分を恨むしかない。ルールなので、やらないもの問題なので、腹をくくる。


「我はシナプス!次の遊戯を行うのだ!」


「かっこいいのだ!!」


 全然格好良くない!柊は輝いた瞳で俺を見て来るが、彩と静奈さんは下を向いたまま、笑っている。物凄く恥ずかしい……。


「そ、それじゃ、くじを箱の中に直して♪」


 俺が言った言葉でまだ笑っている静奈さんは、言葉を途切れ途切れにさせていた。柊は良くもこれを全く恥ずかしがらずに言えるものだ……。


 くじを箱の中に直して、再び静奈さんが振る。早く王様になり、命令を受けない安心感が欲しい。まだ、一回しかやっていないのに、すでにそう思うようになっていた。


「王様だーれだ♪」


 くじを引いた俺たちは再び静奈さんの声で王様はくじをみんなに見せる。今回の王様は静奈さんだ。ちなみに俺のくじは再び三番だ。


 連続で王様なのは嬉しいかもしれないが、二回連続で同じ番号でも全く嬉しいとは感じない。顔に出ないようにしたが、もしかすると気が付かれている可能性も捨てきれない。


 地味に静奈さんはそういうのに気が付いたりする。気が付かれていない事を祈るばかりだ。


「王様は私♪それじゃ……一番と三番は一分間ほっぺたをくっつけて♪」


 楽しそうに笑う静奈さんだが、内容は物凄いものだった。それに、笑いながら俺に視線を向けてきている事から、多分だが、俺が再び同じ番号を引いたというのがばれているのだろう。次は絶対に顔に出さないようにする。


「な、何を言ってるのだ!流石にそれは……我は恥ずかしいのだ!」


 一番のくじを引いたのは柊だったらしく、頬を真っ赤にしながら顔の前で両手を振っている。


「そうですよ!そういうのはダメですよ!」


 彩も内容が内容なだけに、テンパっている。ちらちら俺を睨むのはやめてほしい……俺にはどうする事も出来ない。それはこういうゲームだ。


「くくく、我に出来ない事など存在しない!我はシナプス!これぐらい簡単にやってみせよう!」


「本当にこの内容でやるのだ!?恥ずかしいのだ!」


「つかさちゃん、王様の命令は絶対だよ♪」


「わ、わかってるのだ……」


 柊は諦めたように俺の隣に来て、体を寄せてきた。普段近づかない距離に、急激に体温は高くなり、心臓の鼓動は激しさを増す。柊は頬を真っ赤に染めている。かくいう俺も真っ赤になっているだろう。


 そして、目をつぶりながら柊は俺の頬に可愛らしい頬をくっつける。柔らかな感触と共に、甘い匂いが鼻孔をくすぐる。今まで触れ合った事のない熱に何も考えられなくなる。


「航先輩……頬が熱いのだ……」


「そりゃ、こんに顔が近くにあったら……」


 思わず柊が一回目に言った中二病の事を忘れて返事をしてしまった。だが、柊はそんな事を全く気が付いて居ないかのように、少し体を俺に預ける。力が抜けているようだ。


 それと同時に柔らかな感触は頬だけではなく、体全体に感じるようになった。甘い香りもより鮮明に感じられるようになった。申し訳ないが、柔らかな頬が気持ちがいい。


「一分経ったよ!一分経った!!」


 彩が俺たちの方を見ながらそう言った。くっつけていた頬を離した俺たちは顔を合わせるのが恥ずかしくて、自然と目線を背ける。


 だが、そんな様子を見ていた彩は、頬を膨らめせて拗ねていた。すまん、これはちょっと普段通りで居るのは男である以上きつい。


 そもそも、柊ほどの可愛さを持つ女の子とこれほど接近すれば、男なら誰でも照れてしまうだろう。


「つかさちゃん良かったね♪それならやろうか♪」


「やりましょう!次こそ私が航と!」


「もう、あれだけは勘弁してくれ……」


 みんなが見ていなければ理性が持たなかった可能性がある。それほどにあの一分間は魅力的な時間だった。


「つかさも頬を赤くして呆けてないで!早くくじを箱に入れて!」


「わ、わかったのだ!」


 慌ててくじを箱に入れる柊は、まだ頬が赤い。ふいに柊と視線が合い、お互いにさらに赤くなり視線を外す。


「やるよ♪くじを引いて♪」


 再び俺たちはくじを引く。今回で三回目になるが、俺はまた王様になれずに、二番のくじを引く。


「王様だーれだ♪再び私だよ♪」


 自分で言って、笑顔でくじを出す静奈さんは再び王様のようだ。これで二連続になる王様……さっきの内容の事もあるので、少し警戒する。


「くくく、次はもっと楽しい内容がいい。我も少し世族というものを体験したいのでな、ハハハ。だが、我に出来ない事はない!どんなものでも受け入れよう!」


「シナプスはやる気だね♪それなら……一番と二番がハグをする♪」


 またもや俺の番号が入っていた。内容もさっきと同じか、それ以上の物になっている。男子が俺しか居ない段階で、こういう内容の物に俺が選ばれると異性とすることになる。


「ま、また我なのだ!?しかも次はハグなのだ!?」


 再び同じ面子になってしまった。静奈さんが二回目の王様である段階で、そうなる確率はかなり高くなってしまうが……よりにもよって、再び柊となってしまった。


 先ほどの事があるので、まだ顔を見るのは恥ずかしいが……楽しそうに笑っている静奈さんを見てしまうと、どうしても断ることが出来ない。


「つかさばっかりずるい!!」


「できれば変わってほしいのだ!我も好きでしている訳ではないだ!!」


「ダメだよ?ルールなんだから♪それに、つかさちゃんも口ではそう言ってるけど、嫌がってないよね♪」


「恥ずかしいだけで、そりゃ……嫌じゃないのだ……」


 モジモジしながら恥ずかしそうに言う柊。その仕草はとても可愛く、ハグするのも悪くないと思ってしまった。


「早くハグだよ♪三十秒だよ!」


 再びと隣に来た柊は恥ずかしそうにして、小さくしていた。元から小さいが、今は丸くなっているため、余計にそう見えてしまう。


「い、いくぞ?」


「航先輩ならいいのだ……」


 いや、その言葉のチョイスはちょっと色々まずい気がする。だが、その事にも柊は気が付いて居ないようだった。


 俺はゆっくり、柊に腕を回し、抱きしめた。先ほどよりも鮮明に柊の体の柔らかさを感じられ、心臓が高鳴る。こんな経験は今までしたことがない。


 柊も俺の背中に腕を回してきて、互いに抱きしめ合う。そうすることによって、柊の胸の感触も感じられ……これは本当にダメだ。早く三十秒経ってくれ。


「三十秒経ったよ!つかさ!航!早く離れて!!」


 少し泣きそうになっている彩の姿を見て、申し訳なくなった。それは、静奈さんも一緒のようで、申し訳なさそうに口を開く。


「自分から初めてあれだけど、こういう内容は無しにするね。なんか、こういうのは遊びでする事じゃないもんね。ごめんね」


「そうですね……」


「恥ずかしかったのだ……」


「むむむぅ……」


 彩だけは拗ねているが、割り切る以外にない。拗ねさせた俺が言うものあれだが……。


「それならやろう♪」


 それから俺たちは再び王様ゲームを始める。くじを引くと一番と書かれていた。確率的にそろそろ王様になっても良いと思うのだが……まぁ、仕方ないか。


 先ほどのような内容で無くなった以上、そこまで警戒する必要はないだろう。だが、王様になるに越したことはないので、早くなりたい物だ。


「王様だーれだ♪」


「私だよ!」


 彩は王様と書かれたくじを俺たちに見せる。彩は初めての王様で、どんな事を言うのか全く分からない。


「私はね……三番が私を妹扱いする!このゲーム中だけ!」


「妹扱いか……」


 妥当な物だろう。これで何かが起きる訳でもないし、ましてやこのゲーム中だけの話なので、問題はない。まぁ、初めて俺は命令から逃れられたので、あまり関係ない内容だ。


「彩はそんなに我に妹扱いして欲しかったのだ?存分に妹扱いしてやるのだ!」


 多分だが、俺を狙って言った命令だったのだろうが、まさかの年下である柊が三番だったようだ。


「嘘だ!!!」


「嘘じゃない!!本当の事だ!すべて本当のことなのだ!現実から目を背けるのはいけない事なのだ!!!!前に進むためには、背けていてはいけないのだ!」


「はっ!そうだね……そうだよ!現実から目を背けてはいけないよ!彩はやっと思い出したよ!


「良かったのだ……これでまた、前に進めるのだ!俺とお前……二人で進めるのだ!」


「はい!ありがとうございます!!」


 手を掴み、握手をする二人……その二人の様子を見ていた俺と静奈さんは苦笑いを受けべていた。多分だが、静奈さんも同じ事を思って居たに違いない。


 これはなんなのだろうか……二人の様子を見ていた俺はそう思わずにはいられなかった。


 それからしばらく王様ゲームを行った。初めは人数が少ないからあまり楽しめないのではないかと思って居たが、そんなことはなく、四人でも十分に楽しむことが出来た。


 結局、俺は何十回もくじを引いたが、一回も王様になる機会はなかった。さらに、ほとんどの命令に俺は巻き込まれ、散々な結果になった。


 逆に言えば、静奈さんは半分以上が王様になり、王様以外の時も王様の命令にかかることはほとんどなかった。


 俺の結果は散々だったが、初めてやる王様ゲームは楽しい結果に終わったと言えるだろう。この場に六花さんも居ればさらに楽しくなっただろう。


(さらにカオスになった可能性も十分にあるけど)


 というかその確率の方が遥かに高いのは言うまでもない。


 途中で、なんどかサービスエリアで休憩をし、周囲が夕日に染まったであろう時間帯に俺たちは東京圏に付いた。


 後、少しすれば車から降りるから準備してください、と松本さんから連絡が入り、俺たちは荷物をまとめ降りる準備をする。


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