元彼は
あれから二人でソファに座って、映画を見ながらおしゃべりをしている。
ただずっと手を握られているというか、抑えられ撫でられたりしている。
今までお付き合いした人たちに強引な人もいたが、まだ付き合っていない状態でここまでの人はいなかったので恥ずかしい。
「神谷さん、あのですね月曜日まだうちの会社ですよね。」
「はい。月曜は一つの工場の見学と火曜日にセットアップの工程見て終わりです。」
「あっ、あっちなんですね。」
うちの会社には、私が今いる工場ともう一つ工場がある。歩いて15分ぐらいだからすぐなのだが。
「もう、会えないですね。」
寂しそうに言う神谷さんが可愛かった。
「セットアップは私も立ち会う予定ではあるので会えるんですが、あのですね。」
とてつもなく言いにくい。
「どうしたんですか。」
「あのですね、月曜日私も会議であっちの工場にいるのですが、私の以前お付き合いしていた方も来られるらしいんですよ。」
私の話を静かに言いてくれていて、少し心が落ち着いた。
「その方なんですけど、株式会社LICENの社長の佐山さんという方なんです。」
「佐山さん知ってます、そんな方とお付き合いされていたんですね。」
「付き合っていたのは、半年ぐらいで私まだこっちにいたので実質遠距離で全く恋愛してる感じはなかったんです。」
本当に、そうだったあの頃は忙しくて本当にお付き合いをしている実感もなかったし、別れても何にも思わなかった。
「全く、未練も興味もないんですけど最近連絡が来るのと、月曜日あっちの工場に来られるらしくて。」
会いたくないし、株式会社LICENの担当からは絶対に外してほしいと営業部全員に話している。
今回は新入社員の対応だったから仕方ないけれど。
「なんで、別れたんですか。」
「結婚するからって振られました。」
「えっ。」
この理由聞いたら皆そうなるから面白い。
「遠距離でしたし、佐山さん凄い自信家で『俺に言い寄られたら誰でも落ちる』みたいに思っている方らしくって。」
「でも、佐山さん俺も知ってますが結婚したなんて聞いたことないですよ。」
そう、結婚するからと別れたのに結婚してはいない。
「そう、結婚せずに別れたらしいです。」
「はー。」
神谷さんは、大きなため息を吐きながら上を仰いだ。
「俺、佐山さんに勝てるかな。」
「えっ」
「だってあの人イケメンですよね、西崎さんだっていい男しかも社長にもう一度言い寄られたら。」
神谷さんは、すごい勢いで私に抱き着いてきた。
「俺なんて顔も普通だし、ただの営業だし、勝てないよ。」
弱気な神谷さんが可愛くて頭を撫でてしまった。
「うー、西崎さん他の人見ないで俺のこと見といてくれますか。」
顔を上げた神谷さんの顔が目の前にきて驚いた。
「顔じゃないですし、神谷さんはとてもいい人だと思いますよ。佐山さんのことはもうどうも思っていませんし。」
「俺でいいんですか。」
「もう付き合っているみたいなセリフですね。」
神谷さんが可愛すぎて、またかってに頭を撫でていた。
「もうこの状態カップルみたいですよね、キスしますね。」
優しく唇が触れ合った。
強引だけど優しい神谷さんのキスはとても心地いい。




