表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
800/860

21-3

21-3


「桜下さん、どう思いますか?」


ウィルが耳元でささやいてくる。みんなに気付かれないように、俺も声を潜めた。


「どうって、この成り行きのことか?」


「ええ……桜下さんは、クラークさんと同じように、疑っていたみたいですけど」


「まあな。けど、いいんじゃないか。みんなが安全になるのなら、ちょっとくらい胡散臭くても探す価値はあるだろ」


「ですか……」


ウィルは微妙そうな顔をしている。と、アルルカが首にがばっと手を回してきた。


「うわ!なんだよ、アルルカ」


「あんた、ほんっとに甘ちゃんね!あんなこと言われて、腹立たないわけ?」


「は?何のことだよ」


「だから、あの偉そうなオヤジよ。戦っているのは自分たちも同じだなんて、よく言えたものね」


「わっ、バカ、あんまりそういうこと、大声で言うなよな……」


俺は冷や冷やしながら、後ろを振り返る。幸い将校とエドガーたちは、難しい顔で話し合っていて、こっちの声は届いていないようだ。


「だって、そうじゃないの。実際戦ってるのはあたしたちでしょう。あいつらザコじゃなくて」


「いや、そんなことは……」


「ほんとにお人好しねぇ。けどあいつらだって、きっとそう思ってるわよ」


「は?」


「あいつらは、勇者対魔王になることを望んでるはずよ。それが一番安全だもの」


む……俺たちが、危険を押し付けられているって言いたいのか?そんな風には考えたことなかったが……


「あー。ごほん。諸君ら、少し聞いてくれんか」


俺たちが話している間に、向こうでもまとまったらしい。しかめっ面をしたエドガーが歩み寄ってきた。


「事情は、おおむねわかった。にわかには信じがたい話だ。だが、事実である可能性も否定できん。そうだな?」


エドガーは俺たちに訊ねたというより、ヘイズに確認したみたいだった。ヘイズは何も言わなかったが、それが最大の肯定だ。


「ならば、確かめてみるほかあるまい。異議無いな?」


沈黙。無言は最大の肯定だ。もっとも、クラークは不満たらたらだけど。エドガーはうなずいた。


「よし。では、サード。その鏡とやらの在処、教えてもらおう」


お?エドガーまで、サードをサードと呼ぶことにしたのか。サードは、「初めから素直に訊いておけばいいのに」と言いたげな、ふてぶてしい態度でうなずくと、視線をついと滑らせた。


「この先に、隠し扉がある。そこに隠されているんだ」


「その扉とやらは、どんなだ?」


「巧妙に隠されているから、見つけるのは難しいだろう。その場所まで来たら、僕が報せる。後の判断はそちらに任せるよ」


「うむ、わかった。では、進行を再開するぞ」


話しはまとまったようだ。結局探すことにしたんだな。


(しっかし、ほんとにそんなアイテムがあるのかね?)


ゲームなら、こういうイベントは定番だ。ラスボスを倒す為のキーアイテムが、ラストダンジョンの奥深くに隠されている。勇者一行はそれを手に入れて、魔王をやっつける……いかにもありがち。だけど、今俺たちがいるのは、現実(リアル)だ。ゲームの中じゃない。


(もっとも、勇者が魔王を倒そうとしているってのは、たいがい非現実的だけども……)


魔法や魔王が存在する世界なら、ご都合主義のアイテムがあってもおかしくない、のだろうか?俺たちに降って沸いた幸運が訪れた?嬉しいけど、釈然としないな……




それからしばらく進んだころ。サードが言っていた、隠し部屋とやらは、果たして本当に見つかった。


「あったよ……嘘じゃなかったんだな」


鏡の隠し部屋は、一見すると何の変哲もない通路の途中にあった。サードが立ち止まり、壁をごそごそまさぐると(その時点で、サードの拘束は手首を括るだけのものになっていた)、いきなりぐいと引っ張った。すると壁だと思っていたところが、横にスライドしたのだ。


「なんだ、この空間は……?狭いし、がらんどうだ」


そこは、まるで物置のような場所だった。といっても、肝心の物は少ない。狭いすき間に忘れ去られたように、岩をくりぬいてできた棚や、割れた壺なんかが捨てられている。


「ここは、魔王城のあちこちにある、吹き溜まりのような場所なんだ」


サードはそう言うと、部屋の奥へ進むように指示をする。ヘイズは兵士に命じて、サードと数人の兵士だけを、その奥に進ませた。


「どうだ?何か見つかるか」


「いえ、特には……あ?」


「どうした?」


「鏡が……大きな鏡があります!」


「なんだって?」


マジかよ、本当にあるのか?しばらくして、兵士たちは、一抱えほどの鏡を持って戻ってきた。

ミラー・オブ・ラーは、一言で言えば、ありきたりな鏡だった。楕円形で、大きさは俺の胴と同じくらい。フレームには象形文字のような模様が刻まれていて、骨董品としては値が張ってもおかしくなさそうだ。けどさ、こいつの値打ちに期待しているわけじゃねーんだぜ?

俺たちが疑いの目を向ける中、サードは自信満々に言い切った。


「後は、この鏡を持って、ヴォルフガングとの戦いに臨めばいい。誰が使っても構わないが、正確を期するなら、もっとも実力が高い者が持った方がいいだろう」


馬鹿な……そんなことしたら、叩き割られて終わりじゃないか?やっぱり、こんなのインチキのデタラメだ。

俺がそう思いかけた、その時だった。隊の後方から大きな声が上がり、次いで一人の兵士が、転がるように駆け込んできた。


「てっ、敵襲です!相手は、魔王と思われます!」


「なぁ!?」



つづく

====================


読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


====================


Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、

作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。

よければ見てみてください。


↓ ↓ ↓


https://twitter.com/ragoradonma

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ