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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
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21-1 魔法の鏡

21-1 魔法の鏡


「じき、夕暮れだな」


次の階層を目指しながら、時折窓の外に見える空を眺めて、俺はつぶやいた。

遠くに見える山々の峰が、だいぶ下がってきたな。かなり高い所まで登ってきたってことだ。西日を受けて赤く染まる峰の、ギザギザのラインが燃える炎に見える。背筋がぶるりと震えた。


「もう、そんな時間ですか……」


ウィルが物憂げな表情で相づちを打った。


「エドガーさんの話では、確か、今日の内に決着をつけるつもりなんでしたよね?」


「そんくらいのつもりではいるみたいだな……つっても、もうすぐ陽が暮れるわけだけだが」


夜になったら、戦うのはずいぶんと難しくなるだろうな。魔王城にライトが仰山用意されているなら話は別だが。


「ふぅ……真っ暗闇で戦えるのなんて、フランくらいじゃないか」


話しを振ると、フランがこっちを向いた。


「けど、悪いことばかりじゃないかもよ。闇夜に乗じれば、奇襲ができるかもしれない」


「ほう、なるほど……けど、それは魔物が鳥眼だったらの話だろ。モンスターは目がいいんじゃないか?夜行性っぽいし」


「忘れたの?少なくとも魔王は、人間っぽいんでしょ」


「あ、そうだった」


こと魔王戦においては、暗い方が有利か?まだ何とも言えないけど、ヘイズがその辺を考慮に入れていないとは思えない。夜戦の準備は当然してあるだろうな。


「……あら?」


ん?ウィルが遠くの方を見て、首をかしげた。


「ウィル?」


「いえ、なんだかこっちに向かってきている人がいるみたいで」


「ん?またエドガーの使いか?」


「ああ、そう言われればそうかもしれませんね」


どういう意味だろう?しばらくすると、その意味が分かった。


「桜下くん。何度もごめんね」


「ああ、尊か」


兵士の合間を縫ってやって来たのは、またも尊だった。まさかエドガーのやつ、また尊を使いっぱしりにしたのか?あいつも大概に……って。あれ?


「……尊?」


「ん、なにかな」


「いや……どっか、調子でも悪いのか?」


「え?」


尊は少し驚いた様子で、ぱちぱちとまばたきする。


「どうして?」


「なんだか、いつもより表情が硬く見えたんだ。腹でも痛いのかと思って」


いつもぽやーんとしている尊の顔が、今はずいぶんと強張って見える。もうちょっと言えば、イライラしているみたいだ。尊に限ってそれはないだろうから、だとしたら疲れているのか、どこか痛むのか……


「ううん、大丈夫だよ」


だけど尊は、首を横に振った。


「ただ、ちょっと疲れただけ。ほら、もうすぐ日没じゃない」


「ああ、そうだったのか。戦闘が続いてるしな。あ、それで、何か用だったか?」


「うん。また、桜下くんに来て欲しいんだって」


「え?またって、まさかエドガーか?」


尊はこくりとうなずく。おいおい、またか?


「ふぅー。今度は、なんの用件だって?」


「それが……次に戦うことになる、魔王軍のことみたいなんだけど」


「なんか情報があるのか?」


「う、ん。いちおう、そうみたい」


「ん?なんだか煮え切らないな」


「色々あるみたいで……私は頭悪いから、うまく説明できる自信ないや。とにかく行こ。そこでお話を聞かせてくれるはずだよ」


それはそうだ。俺はうなずくと、仲間たちと一緒に、尊の後について行った。




「悪いな、何度も呼び出して」


俺たちが到着すると、すでにクラークたちも来ていた。そして、俺たちを呼び出した張本人のエドガー、ヘイズ、それから縛られたサードもいる。こいつがいるってことは、情報の出所はやつか?


「いいけど……なんだって、こんなとこに?」


ヘイズたちがたむろしていたのは、通路と通路の間の、なんとも中途半端なスペースだった。踊り場じゃないし、なんと言えばいいんだ?パイプとパイプの継ぎ目の部分、みたいなところだろうか。連合軍の進行も、そこでストップしている。


「休憩をするにしちゃ、狭すぎないか?これじゃ弁当かごも広げられないだろ」


「だよな。オレたちもそう思うんだが」


あん?ヘイズたちも?となると、残るは必然的に、一人しかいない。そいつに目が集まると、自分から口を開いた。


「僕が、止まってくれと頼んだんだ。大事な話があると言ってね」


その男、サードは、確信を持った様子で言う。縄でぐるぐる巻きになっているのに、妙に堂々としているから、なんとも笑える光景だ。


「これは、特に君たち勇者に聞いてもらいたい、重要な情報なんだ」


俺たちに?勇者をやめた俺はもとより、クラークと尊も、目を見合わせている。


「いいかい。この後に待ち構えるのは、三幹部最後の一人、ヴォルフガングだ」


「あいつか……!」


とうとう、あいつとかち合う時が来たか。


「彼は、三幹部の中では最強だ。とても一筋縄ではいかないだろう」


「ああ、分かっているとも……」


クラークがイライラと首を振る。


「それでも僕らは、そいつを倒すんだ!で?敵を褒めたたえる為に、僕たちを集めたのか?」


「そ、そういうわけじゃない。呼び出したのは、助けるためだ」


「助ける?どうやって」


「ヴォルフガングは強い。だけど、弱点がないわけじゃないんだ。僕はそれを知っている」


弱点?呆れたな。そりゃそうだろ、人間は水の中では溺れ死ぬし、魚は地上じゃ干からびる。ゲームじゃあるまいし、弱点の無い生き物がいるもんか。俺は茶化してやりたい気持ちをぐっとこらえて、サードの続きを待った。


「この先の隠し部屋に、あるアイテムが隠されている。そのアイテムが、奴の弱点だ」


……はあぁ?

隠しアイテム?ふ、ふざけているのか!



つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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