表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
790/860

19-3

19-3


俺とライラが前に進み出ると、後ろからだみ声が追いかけてきた。


「待て、桜下!」


「ん……エドガーか。なんだ?アドバイスでもしてくれるのか」


「こいつめ!いいから、少し待てい!」


「それに、僕もいるぞ」


おん?後ろを覗き込むと、エドガーの他に、クラークも一緒だ。連中の顔を見るに、あんまりいい話じゃなさそうだけどなぁ……後が怖いし、ここは素直に話を聞くか。エドガーはどかどかと大股でやってくると、ガシッと肩を掴んできた。


「おいおぬし、気は確かか?それとも、本当におかしくなってしまったのか」


「前者だ、エドガー」


「そうだろうな。おかしくなったやつは、決まってそう言うのだ」


「……」


じゃ、どうすりゃよかったんだよ?俺はがっくり肩を落とした後で、クラークを見る。


「で、お前は?」


「だいたい、総隊長さんと同じ意見かな。が、君の考えも、何となくわかる気がする。あの、狼みたいな女の子。あの子が言っていたことと、何か関係があるんじゃないのかい?」


おや、珍しく察しがいいじゃないか。俺がうなずくと、クラークも真面目な顔でうなずく。


「だと思ったよ。でもそれなら、僕の方が適任じゃないのか?自惚れに聞こえるかもしれないけど、僕の方が、総合的な能力は高いと思うけれど」


ま、そうだな。俺はうなずこうとしたが、それよりも早く、ライラがむっとして言い返した。


「そんなことない!桜下は、強いよ!誰よりも!」


「え?あ、ああ、うん。えっとね、僕は彼を、弱いと言いたいわけじゃないんだよ。ただ、僕の方が……」


あいかわらず、クラークは女の子に弱い。ライラに睨まれて、とたんにたじたじになってしまった。そんな彼を遮るように、再びライラが言い返す。


「それに!お前は一度、ライラたちを殺そうとした。今までだって、たくさん殺してきたんでしょ。そんなやつ、信用できないよ」


「っ」


おっと、これは……ライラの幼さゆえの鋭さは、クラークの胸を深くえぐったようだ。ナイフを突き立てられたような顔をしている。


(正直な所、俺が危惧していたのもまさにそれだし)


相手はどうあれ魔族だ。クラークに任せたらさいあく、ドルトヒェンは殺されてしまうかもしれない。そう思ったんだ……でも。


「ライラ、その辺にしといてくれ。クラークの言ってることは、そんなに間違っちゃいないよ」


「でも、桜下!」


「な?後は任せてくれよ」


俺が言い含めると、ライラは頬を膨らませた。ははは、フグみたいだな。ほっぺたをぷにぷにつつく。

俺は別に、クラークが間違っているとも思わない。殺しを避けるのは、あくまで俺たちの信条だ。俺はそれが正しいとも、善いことだとも思っちゃいない。ただそっちの方が好みだから、そうしているに過ぎない。で、その好みを人に押し付けるのは、違うだろ?だからクラークを悪く言う気も起きないのさ。

となれば、俺が口にする言葉は、おのずとこれ一つになってくるわけで。


「悪いな、クラーク。これは、俺じゃなきゃダメなんだ。なんたって、俺がやりたいことを叶えるために、名乗り出たんだからな」


「なに……?」


「俺が、やりたいんだよ。お前じゃなくてな。わがままだって思うか?なら、貸し一つって考えといてくれ」


「いや……そういうことじゃなく……」


クラークはしばらくの間、面食らった顔でぼーっと俺の顔を見ていたが、やがてふうっとため息をついた。


「……隊長さん。どうやら彼は、この役目を譲ってほしいそうです。そして僕も、彼に任せてみようかと思います」


「へ?いやしかし……ううむ」


「確かに、彼に力が無いわけじゃない。勝ち目が薄いとは思わないでしょう?いざとなったら、僕が駆け付けますよ」


エドガーは唸っていたが、武人らしく、決断は早かった。


「わかった。桜下、おぬしに任せよう。だが油断するな。ああ言ってはいるが、どんな罠があるか、分かったものじゃないぞ」


「ああ。せいぜい、フェアプレイに徹してくれることを祈ってくれ」


エドガーは忌々し気に舌打ちした後、にやっと笑った。クラークは頭をぽりぽりかくと、くるりと背中を向ける。


「せいぜい、僕の手を煩わせないでおくれよ」


ちぇっ、憎まれ口を。激励のつもりか?ライラはやつの背中に、いーっという顔をした。


「まったく。じゃ、行ってくるな。エドガー」


「おっとそうだ、忘れておった。桜下、一つ助言があるぞ」


「へ?なんだ、ほんとにアドバイスしてくれるのかよ」


「まあな。私からではないが」


「は?」


「ほれ、あいつだ。あの、胡散臭い男」


「胡散臭い男って……まさか、サード?」


あいつからの助言だって?エドガーはあんまり言いたくはなさそうだったが、それでもサードからの伝言を教えてくれた。


「あいつ曰く。あの魔族は、魔天のドルトヒェンと言うらしい。簡単に言えば、魔術師だそうだ」


「魔術師?へえ、そうか。それなら、魔術師対決になりそうだな」


俺はライラをちらりと見る。しかしエドガーは、そうではないと首を振った。


「人間の魔術師と同じではないようだぞ。魔物が使う魔法は、人間のものよりもはるかに古く、原初に近いんだとか」


「うん?……つまり、どういうことだ?」


「知るか、私も魔法のことはさっぱりだ。だがあの男は、そこに注意をしろと言っておった。同じと見積もっては、痛い目を見るかもしれんぞ」


「ずいぶんアバウトだな……」


できればもっと具体的なアドバイスがよかったけど。まあ少なくとも、あの女の正体が実はドラゴンでした、とかはないってことは分かった。相手の武器が分かっただけ、まだマシか。


「あいよ。なんにせよ、注意はするさ。俺だって、みすみすやられるつもりはねーよ」


「うむ。ならば、気張れよ」


「言われるまでも。よし。行くぞ、ライラ!」


「うん!」



つづく

====================


読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


====================


Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、

作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。

よければ見てみてください。


↓ ↓ ↓


https://twitter.com/ragoradonma

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ