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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
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19-1 三幹部の襲来

19-1 三幹部の襲来


怪我人の治療があらかた終わると、行軍が再開された。

戻ってきたウィルとロウランに、さっきサードから聞いた話をすると、二人とも疲れを忘れて仰天していた。


「勇者サードが、生きていた……」


「まだ、サード本人かどうかは分からないぞ。今んとこは自称だ」


「ですが、勇者であることは間違いないんですよね?そして魔王すらも、勇者かもしれない……」


ロウランが眉間にしわを寄せながらうなずく。


「ダーリンたちが見つけた、実験報告書にそう書かれていたんだよね?」


「ああ。正確には、俺のもと居た世界の言葉が書かれていたんだ。これだけ大掛かりな実験なら、少なくとも幹部格以上か、魔王が直接仕切ってる可能性が高いと思う」


「まあ、魔王様が知りませんでしたってことは、ないよねぇ……」


「ですが、それならですよ?レーヴェさんたちにしたような、おぞましい実験は、勇者が望んでいるってことになりますよね?」


「ん、そうだな……サードは、セカンドが何かを企んでいるんじゃないかって言ってたけど。あの実験も、それの一環か……?」


「魔物を、人型にする実験が、ですよね。そして、大勢の人たちが連れ去られている……」


ウィルの言葉を繋げて考えてみると、まるで魔王は、人間を欲しているようにも思えるな。ただしその意味合いは、魔王が魔王なのか、ファーストなのか、セカンドなのかで大きく変わってくるが。


「……攫われた人たちと言えば、みんな心配だねえ。そのことは、何かわからなかったの?」


ロウランの何気ない質問に、俺は思わず顔をしかめてしまった。ロウランの表情が曇る。


「……なにか、あったの?」


「……ああ。みんなは、見つかった。見つかったんだけどな」


あの結晶の部屋のことを話すと、しばらくの間、重い沈黙が俺たちを包んだ。


「……魔王の正体が、勇者だったなら。呪いを解くように説得することは、できるんでしょうか」


「難しいのは、百も承知だ。でも相手が人間なら、まだ話はできるってことだ。俺は諦めないよ」


「……ええ、そうですね。先に進みましょう!」


「そうなの!なんにしても魔王に会ってみないとね」


その通りだ。さあ、次のフロアに向かおう。俺の予想が正しければ、次の部屋で、新たな三幹部が待ち構えているはずだ。




サードが現れた部屋の奥に、次の部屋へと繋がる通路が隠されていた。ぐるぐると回る螺旋のトンネルのような通路で、ずうっと上まで続いている。しばらくその通路を歩き続けると、ようやく次の部屋が見えてきた。


「……今さらだけれど。モンスターたちは、こんな城に仕えてて不満は無いのか?建物としては不便でしょうがないと思うんだけれど」


部屋ごとに敵や仕掛けが待ち構えていて、それらを順々に攻略していくというのは、過去に潜ったダンジョンそのものだ。ここヘルズニルも、魔王の城と言うダンジョンだから、こんな構造をしているのだろうか?


「そもそも、モンスターはこんな城に棲まないわよ」


アルルカがにべもなく言う。


「あんたたちの王城にだって、王様と家来以外はいないでしょ」


「つっても、その人たちは暮らしているじゃないか」


「そうね。でもここは、そういうのともまた違うわ。いわば、象徴、みたいなものかしらね」


「象徴、ねぇ」


けど確かに、勇者が城を登って魔王に決戦を挑むというのは、実に古典的で、そういう意味では象徴的だ。なんだか、そうなることを意図している気さえする。一フロアごとに敵が出てくるっていうのも、あからさまだ。


「なにかの意図があって、こうしているのかな……?」


「考え事もほどほどにしなさいよ。次が見えて来たわ」


っと。もう付くのか。

肝心の次の部屋は、今までと打って変わって、ガラス張りの明るい部屋だった。天窓から明るい日差しがさんさんと差し込んでいる。壁際には本棚と、色とりどりの植物が植えられた鉢が置かれている。


「なんだ、こりゃあ。まるで温室だ」


「わあ、キレイな部屋なの♪」


ロウランがはしゃいだ声を出すと、フランがそれをたしなめた。


「暢気なこと言ってる場合じゃないよ。次の敵、もういるんだから」


「えっ。うそ、どこに……」


慌てたロウランと一緒に、俺も目を巡らせた。

ガラスのパーテーションのような、透明な壁の向こうに、一脚のティーテーブルが置かれている。そこで一人の女性が、お茶を飲んでいた。


「……え?まさか、あいつか?」


「それ以外にいないでしょ。どう見ても人間じゃないし」


そう言われてはじめて気が付いたけど、本当だ。その女の人の肌は、赤色がかった褐色だ。それに、額には角が生えている。どっからどう見ても人じゃないのに、どうして気づかなかったんだろう?きっとそいつが、あまりにも落ち着いていて、あまりにも人間みたいに振舞っていたからだろう。

かちゃん。ティーカップを置いて、その女が立ち上がった。


「みなさま。ようこそおいで下さりました」


女は、頭を深々と下げた……からかわれているのか?兵士たちも呆れたらいいのか、それとも憤ればいいのか、戸惑った顔をしている。


「わたくしの名は、ドルトヒェンと申します。魔王軍における、三幹部の一角を担わせていただいている者です」



つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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よければ見てみてください。


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