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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
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「すみません……少し、よろしいでしょうか」


うん?ぞんがい丁寧な声だな。怒られるわけじゃなさそうだぞ。

振り向いた先に立っていたのは、硬い顔をした傭兵の少女、アルアだった。


「なんだ、アルアか……てっきり兵士に見つかったかと思ったよ」


「……見つかったら困るようなことをしていたのですか」


アルアの目が、途端に冷めたものになる。はっ、し、しまった。隣のフランが肘で小突いてくる。ぐぅ、余計なことを言った……


「ええっと、アルア。これはだな……」


「まあ、それはいいんです」


「え?いいのか」


見逃してくれるようだぞ。ずいぶん恩情な、と思ったが、どうやらそうでもないらしい。アルアはひどく思いつめたような顔で、早口に問いかけてきた。


「その……すみません。皆さんが話していたことが聞こえてしまったんです。それで……」


なに?それはつまり、俺たちとレーヴェの会話をってことか。で、その内容と言えば……


「あー……なるほど、分かった。ただ、ここじゃなんだ。場所を変えよう」


「……はい」


ぎこちなくうなずくアルア。先に歩き出そうとしたところで、俺ははたと振り返った。


「アルア。いちおう、これだけは訊いておくけど。つまり、あんたが知りたいのは……」


「ええ……祖母の、夫の名が聞こえました。どういうことか、詳しく教えてくれませんでしょうか」




ひとまず、連合軍の糧秣が積んである荷車のわきへとやって来た。ここは牛と馬ばかりで人気が少ないから、盗み聞きされることもないはずだ。


「さてと……しかし、アルア。いつから話を聞いてたんだ?全然気づかなかったぞ」


「いえ、実は話の内容は、ほとんど聞こえていません」


「え?」


「皆さんの唇の動きを読んでいたんです。ただ正直、確証は持てていませんでした」


「ん?つまり……カマを掛けてたのか!」


「そうなりますね。ごめんなさい」


アルアがしれっとそんなことを言ってきた。こ、こいつ……アルルカが呆れた顔でため息をつく。


「ったく、あんたもまだまだねぇ……だとしても、あんた。小娘のほうよ」


小娘呼ばわりされたアルアは、ムッと顔をしかめる。だが食って掛かって、せっかくの機会をふいにするようなことはしなかった。


「なんでしょう」


「あんた、なんであたしたちの動きを監視してたのよ。それほどまで興味を引くことかしら?」


「……捕虜と親し気に話すことは、かなり注目を集めると思いますが」


「あたしだって馬鹿じゃないわ。もしそれだけの目が向いてたとしたら、先に気付いたはずよ。なにが言いたいかって言うとね、あんた、気配消してたでしょ」


なに?アルアの眉が、わずかにぴくりと動く。


「あんたも傭兵でしょ、気配の殺し方ぐらい知ってるはずだわ」


「おい、アルルカ。さっきから何が言いたいんだよ?」


「つまりこいつ、最初からあたしたちに目を付けてたのよ。あたしたちがファーストの話をしたから注目したんじゃないってこと」


「うん?それじゃあ、前後がぐちゃぐちゃになるじゃないか。アルア、お前もなんか言えよ。全然否定してもらっても……」


「いえ……その方の言うことは、間違っていません」


「なに?」


「初めから、あなたたちに目を付けていました。噂の真偽を、確かめたかったのです」


「うわさ、だって?」


どういう意味だ?一体何の噂があって、俺たちに結びつくって言うんだ。


「実は……魔王の正体が、勇者であるという噂が流れています」


「は、はあ!?」


馬鹿な!それは、俺たちとヘイズたち、ごく一部の人間しか知らないはず!嘘だろ、あれだけ他言無用だって言われてたのに、もう漏れてるのか!?


「いったい、誰から……?」


「はっきりとした出所はわかりません。私も、風の噂を耳にしただけですから。ですが、どうしても気になってしまって……その勇者とは、かつての大戦で戦死した三人、セカンドとサード……そして、ファーストのうちの誰かだというのですから」


そ、そこまで伝わっているのか……信じられないな。一体どこのバカが言いふらした?まさか、尊が何も考えずに誰かに話したんじゃ……さすがにそれはないと思うけど。


「あの、本当なんですか?本当に、魔王の正体が勇者なんですか!?」


「いや、それは、その……」


ど、どうしよう。これは秘密ってことになっているんだが……


「ちょっと、どうするの」


フランがひそひそと耳打ちしてくる。


「……どうしよう?」


「わたしに訊かないでよ。あなたが主でしょ」


く、あくまで俺次第ってわけか。うーん……


「はぁ……わかった。決めたよ」



つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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よければ見てみてください。


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