第五十話 昇華
「一つは美徳昇華……【美徳】へと昇華させます。もう一つは大罪昇華……【大罪】へと昇華させます」
一つは純白に輝いており、もう一つは黒く光りしている。どちらがどちらかわかりやすい。
「【美徳】【大罪】は幾つかの技能を犠牲にして創られる技能です。統合され、昇華され、別物へと変わります」
つまり、能力を別物に変えると……最強のアイテムだな。ゲームだったら、真っ先に使っている。
「ただ、これを使うなら、我々と共に化け物を倒す契約をしてほしい。倒した後は、どうしようがお前の自由だが、それまでは契約によって制限さて頂きます」
【魂の契約書】
俺は息をのむ。それは世界最高峰の契約書だったからだ。契約したら、それを絶対順守させる強制力を持つ。それだけ彼らの本気が伝わってくる。
「あぁ、わかった」
俺は指を切って、血を出す。
血が契約書に纏わり、光った。そして、その光は俺の内側に鎖をかけるようにして、結びついていく。神の身体にも同じようになっており、契約が結ばれていく。
「契約完了だ」
神は種を差し出した。
差し出された俺は種を飲み込む。
苦い……どころじゃない。身体中が吐き出そうとする。
【【美徳の種】を認証……承認……】
【【物理損害無効】【魔術攻撃耐性Ⅸ】【爆撃耐性Ⅸ】【孤独耐性Ⅹ】を生贄に、【忍耐】を獲得】
【【大罪の種】を認証……承認……】
【【技能奪取】【技能融合】【多重存在】を生贄に、【暴食】を獲得】
【【美徳】【大罪】を獲得したことにより、権限レベルが上昇……強制アクセス不可能化……【称号】現人神を獲得……セット完了】
頭の中が揺れるようにして、情報を整理しきる。
【暴食】
【分類】大罪
【説明】×××(表示不可)
【能力】
【暴食】
【還元】
【多重存在】
【忍耐】
【分類】美徳
【説明】×××(表示不可)
【能力】
【神撃軽減Ⅹ】
【攻撃無効】
【状態異常無効】
【暴食】はその名の通り、技能を含め、ステータスすら喰らい奪えるようになった。
【忍耐】は様々な無効化を得た。但し、神の攻撃までは無効化できない模様。だが、とても強力だ。
「それでは大丈夫か……」
心配そうに覗き込まれる。俺は答える。
「あぁ、大丈夫だ」
「そうか。ならいい」
神と悪魔は笑顔で俺を見る。
「名前を聞いておこう」
「天野翔だ」
俺が答えたら悪魔が言った。
「そうか。では、盟友よ。我らが同胞と共に世界を取り戻すぞ」




