第82話・対応策
更新が遅くなって申し訳ありません。
昨晩、新話投稿作業中に、パソコンの画面が真っ暗になって書いた分が全部パアになってしまい、その上パソコンが動かなくなったので、本日改めて投稿しました。
これからもがんばっていきます!!
ドラゴンこと、ダリアさんとの会話が始まって早、数時間。
ダリアさんの話を聞いたり、聞かれるままカイトがその質問に、答えたりしていた。
ノゾミは興味がないのか、欠伸をかみ殺しながら、実に眠そうにしている。
この会話に花が咲いてしまい、いつの間にやら日付をまたいでしまった。
空は白み、辺りは明るくなり始めていた。
「やべ!! もうこんな時間!? ノゾミ、帰るぞ!!」
「・・・・ん、帰るの?」
一拍ほど間をおいて、ノゾミが俺に『不思議』って感じの表情を向けてくる。
何でそんな顔するの?
「むう・・・二人とも帰ってしまうのか??」
ドラゴンことダリアさんが、とても残念そうに、寂しそうに顔を向けてくる。
「すいません、少し待たせている人がいるんです。 早く帰らないと・・・・」
ここまで言ったところで、カイトは自分でもよく分からないが、体の震えを感じた。
不可抗力とはいえ、『朝帰り』になってしまった・・・・・・・・・
『探して来い』と言ったのはアリアだが、誰も朝までドラゴンと話してろ、とかは言っていない。
『朝までノゾミを探してました』とか言えば何とかなりそうだが、その嘘がバレた時が怖い。
そもそも、カイトはまだベアルに到着すらしていないので、『朝帰り』という言葉を使うのはいろいろと疑問だが、カイト的には問題はそこではなかった。
「カイト、震えてるよ? 大丈夫?」
大丈夫。
きっとアリアも分かってくれるさ。
笑顔を取り繕う俺。
ダリアさんは、そんなカイトに気にした様子もなく、顔を覗き込んできた。
「カイト殿、ノゾミも連れて行ってしまうのか??」
ダリアさんが、カイトに念押しみたいなのをしてくる。
なんだろうか?
何か連れて行ってまずいことでも・・・・
・・・・あ・・・・・・・・・・・・・。
ここでカイトは、そもそもなぜ、ここにドラゴンがいるのかを思い出した。
そう。
このドラゴンが、昨晩ノゾミと一緒にいたのは、ほかでもない。
『一人じゃ寂しいから、一緒にいてくれる者が欲しかった。』である。
いくらドラゴンとはいえ、一人(?)は堪えるらしい。
だったら、群れに戻れば?と思うが、そうはできない理由があるのだとか。
かといって、ノゾミをここに置いていく事なんてできない。
俺が、ここに一緒に残るなど論外だ。
だから彼女には、暇を見つけて時々遊びに来ると、言っておいた。
ここへは、次からは転移で来ることができる。
うまい事いけば、毎日だって来られるかもしれない。
それでも、渋い顔をするダリアさん。
はっきり言って、ドラゴンの渋い顔って、メチャメチャ恐い。
なんかこう、肉食獣ににらまれているとか以前の問題だ。
「・・・・・・分かった。 そういうことならば・・・・・・・」
少し考えるそぶりを見せ、ダリアさんはそう言ってきた。
いやはや、よかった。
カイトは、気付いていなかった。
プライドが高いドラゴンが、人間一人にこんな譲歩を普通は、しないという事に。
それもこれもカイトが、
『女神様に転生(?)させられて、この世界に来た。 そのときから、なぜか知らんが強くなった』
と、このドラゴンに話したためであった。
最初この話を聞いたダリアは、カイトのこの話に、かなり怪訝な表情を浮かべた。
しかしいざ、彼のスキルを最上級の『鑑定』で見てみると、『女神の加護』『死神の加護』などを始め、数え切れないほどの『神』を冠した加護が見て取れたのである。
ダリアの長い竜生の中で、そもそもスキルの中に『神の加護』があるのを見ること自体が、初めてであった。
自分の、昨夜の奥義中の奥義が敗れたのも、納得いく話である。
そして、このドラゴンは、カイトに対し敬意を表した。
次に戦ったところで、自分に勝ち目はない存在。
譲歩も、彼女にとってはごく、当たり前のことであった。
カイトは、そんなことを知る由もなかった。
「しかし、なるべく頻繁に来るのだぞ!? 私の事を忘れでもしたら、許さんからな!!」
心にもないが、彼女とてドラゴン。
譲歩にも限界はあるので、カイトにはそう、釘を刺しておいた。
まあ、そんなに頻繁にドラゴンと会って、いったい何をするんだ?
と言われれば、そこはまったくの疑問だ。
カイトの貧相な想像力では、鬼ごっことか、かくれんぼとかしか、思いつかなかった。
ちなみに森でドラゴンとそんなことをしたら、森が大惨事になること間違いなしである。
「じゃあダリアさん、また来ます。 ノゾミ、行こうか。」
「うん。」
手をつないでカイトが踵を返したところで、彼の動きは止まった。
「カイト、どうしたの?」
ノゾミが急に立ち止まったカイトのかおを覗き込むと、その顔は真っ青になっていた。
ギギギッと、噛み合わせの悪い歯車のようにカイトは、頭を後ろにいるダリアさんのほうへと、向けた。
「ベアルって、どっちですか?」
「なに?」
カイトはまだ、ベアルの街へ行ったことがなかったので、方向とかがまったく分からなかったのだ。
しかし、ドラゴンたるダリアもこの質問には、答えることができなかった・・・・・・・・
◇◇◇
「一瞬、お先真っ暗かと思ったぜ・・・・・」
「よかったね、カイト。」
二人は森の中を一路、街道のほうへと向かっていた。
街道へ出て、山脈の無い方へと進めば、ベアルに着くのでは、ということに気付いたのが数分前。
距離も近いので、わざわざ転移を使うまでもない。
ダリアさんに、「空を飛んで、上空から調べてくれない?」と聞いたら、「自分は地竜だから飛べない」と帰ってきた。
背中にある、大きな翼は飾りなのだろうか?
謎は深まるばかりである。
街道も近くなってくると、数人の人の気配がする。
みんな、見知ったものばかりだ。
その中の一人。
「アリア! 迎えに来てくれた・・・・の・・・か・・・・・・?」
走り寄って、感慨にふけろうとしたところで、カイトはその歩みを止めた。
目の前にいるアリアは、鬼のような形相でこちらをにらみ、腕を組んで仁王立ちしていた。
さっきのドラゴンの渋い顔より恐いかもしれない。
つかつかと、こちらに歩み寄ってきたアリアは、開口一番、笑顔でこう言ってきた。
「カイト様? 到着早々に朝帰りとは、随分と良いご身分ですわね?? こちらはあなたが連れてきた魔族の少女の件も含めて大変に、対応に苦慮していたというのに・・・・」
俺の胸に、ぐっと指を押し付けてくるアリア。
体全体が、ガクガクと震える。
「さあ、お話は屋敷のほうでじっくりと聞かせていただきましょう。 いいですわね?」
「イエッサー。」
この日、彼の辞書の中に、『美女の笑顔は恐い』と書き加えられたのだった。
すいません・・・・
話の尺の都合上、ベアル到着がかないませんでした。




