第83話・ここがベアルだ!!
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「な・・・・・なんだ、ここは!?」
アリアと共に、ベアルへ到着したカイトは、目の前の光景に、言葉を失った。
「カイト、ここ、恐いよ・・・・・」
ノゾミもまた、半ベソをかいて、カイトの右手にギュッとしがみ付いていた。
「ここがわれわれの、『新居』ですわ。」
ため息交じりに、皮肉を交えてそう言い放つアリア。
三人の前にある建物。
それは、前大公様が住んでいた屋敷があった。
その大きさはカイトが通っていた、日本の三階建て校舎の高校のものよりも、大きいかもしれない。
屋敷というだけあって、それは、とても豪奢な造りであったと思われる。
・・・・・建築当初であれば。
三人の眼前にあるその屋敷は、草が屋敷の壁全体に生し、窓は割れ、半分は倒壊していた。
庭だったと思われる場所は、ジャングルと化している。
屋敷を囲っていたと思われる壁は、ベルリンの壁のごとく、土台を残して何もなかった。
ちなみに今でも、パラパラと、屋敷の外壁の一部が崩れ続けている。
夜、ここを通りがかったりしたら、絶叫モノかもしれない。
「だいぶ長いこと、放ったらかしにされていたようですわね。 この街の監督を任せていたものは、どうしたのでしょうか??」
プンプンと、怒りをあらわにするアリア。
そう、彼女が怒っているのはこの屋敷に限ったことではない。
それは、ベアルの城壁が近づいた頃から気付いたことだ。
もと、王都のように二重に街を囲っていたと思われる城壁が、あちこち崩れ落ちていたのだ。
っていうかむしろ、残っているところのほうが少ない。
番兵さんも不在だ。
交代で偶然・・・とかではない。
もともといないって感じだ。
街のメインストリートを通っても、人間一人とすら、すれ違わない。
町全体が、ゴーストタウンといった感じだ。
着いて早々あれだが、帰りたくなってきた。
その上で、住む予定だった屋敷が半壊しているといった状況だ。
『鉄道が作れる♪』とか浮かれまくってた数日前の自分を、呪い殺したくなる。
これはだめだ。
鉄道とかそういう以前の問題だ。
ここは住めないって。
そうアリアに進言しようとしたところで、アリアはとてもいい笑顔を俺に向けてきた。
「何もなくて、むしろ好都合ですわ! ここは自治領として国王からも認められているので、好き勝手に法整備も街の整備もできますわよ? 文字通り、一から。」
俺は、どこの大統領かと言いたい。
法律を作るとか、無理です。
そもそも、この街に国民・・・もとい住民はいるのか?
すると、遠くから騎士の一人が、なにやら紙を持って、こちらへ向かってきた。
「アリア様、遅くなって申し訳ございません!!」
「かまいませんわ。 調査は済みましたか?」
「こちらに、すべての報告を載せてございます。」
なにやら、アリアがこの騎士さんに調査をさせていたらしい。
いま、帰ってくると言うことは、徹夜で調べたのかな?
でもアリアは、いったい何を調べさせたのだろうか?
「ふふふ・・・・」
「!?」
突然、笑みをこぼしたアリアに、ちょっと驚いてしまった俺。
するとアリアは、「カイト様も、ご覧になりますか?」と、自分が目を通していた一枚の紙を、こちらに差し出してきた。
俺が読んでも、分かるような内容なのだろうか?
しかしアリアから受け取った紙を受け取り、俺は絶句してしまった。
内容を簡単にまとめると、以下のような内容だった。
人口: 38人
主な産業:農業と採集
徴収税金:7割 (行方知れず)
公共施設なし(ギルドなど)
街の家の数軒が、盗賊の根城に。
医者とかもいない。
街にいたはずの警備兵団、及び監督官は行方不明。
買い物は、三ヶ月に一度、旅の商人が来たときだけ。
ざっとまとめると、こんな感じだ。
下手な村のほうがマシである。
街の人たちは、この重い税金に苦しめられ、スゴイ貧困生活にあえいでいるとの事。
街から出て行かないのも、お金がないからなんだろうな・・・・・・・
そして、街の警備兵団が行方不明って・・・
どこに失踪したんだよ!?
警備兵団は、町を守るのが任務なのに。
「カイト様、どうやら警備兵団の者たちは、街の外で起きた魔物災害の事態収拾に出て、帰ってこなかったようですわ。」
間髪いれず、アリアが俺の疑問に思ったことに答えてくれた。
「じゃあ・・・この街は、魔物災害のせいでゴーストタウン化したってこと??」
「いいえ、少しの被害くらいは被ったようですが、この街は無事だったようですわ。 原因は、監督官でしょう。」
監督官とは、この領地が王家直轄になった際、王宮から派遣されるこの街の、財務などを一切に取り仕切る人物だ。
「彼は、王家に無断で街の税率を上げ、街の備品を売りさばいて金に換えたようですわ。 屋敷や、城壁のレンガとか。」
街が荒れているの、納得だ。
っていうか、そんなやつを監督官にしちゃだめだろう。
ん?
でもそれならその監督官っていうのは生きているのか??
さっきは行方不明って聞いたけど・・・・・・
「結局彼は、何者かに暗殺されたようですわ。 いつ、どこで、だれに、などはまったく分かりませんが・・・」
うん。
彼は悪者の末路を全うしたようだね。
めでたし、めでたし。
じゃなくて!!!
「この街のゴーストタウン化って、そいつのせいなのか!??」
「どうもそのようですわ。 父上も知った上で、ここを我々にお任せになったようですね。」
あの、腹黒国王・・・・・・
無理やり俺に爵位とか押し付けてきたりして、おかしいと思ったよ。
「ああああああ!!! いますぐ、クーリングオフしてえ!!」
前途多難な状況に、カイトは、頭を抱えるしかなかった。
鉄道がまた、遠くなりました・・・・・




