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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第4章 王宮へ
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閑話・カイト様との婚姻式

書く予定はなかったのですが、少々誤解なされている方や一部、要望などもありましたので、書くこととなりました。

作者の都合上、長くなってしまいました。

アリア視点です。

なおこれは読まなくても、なんら問題はありません。


2017/6/19  勢いで書いたおかしな部分を、一部だけ改稿しました。

「王女様、お加減はいかがでございますか?」


「ちょうどいいぐらいですわ。」


「お褒めにあずかり光栄です。 それでは、次にお化粧へ移らせていただきます。」


今私は、王宮に設けられた一室で、これから始まる、婚姻式の準備を執り行っています。

お相手は、カイト・スズキという、Cランク冒険者です。

ちなみに私は、アリア・ミューゼンという、この国の王族です。


ええ、分かっておりますわ。

『不釣合いだ』と申されるのでしょう?

少し前の私も、これだけを聞けば『どんなメリットのある婚姻ですか?』と聞いたに違いありません。

Cランクの冒険者なんかこの世界には、星の数ほどいます。

そんな者と結ばれたところで、価値など有りはしません。

ですが彼は、違います。


強いのです。

ともかく強い。

北方の森で王宮騎士を倒してしまうような敵を、一瞬で戦闘不能にしてしまったのです。

その上、転移魔法という最上級魔法を軽く使い、なんとお姉・・・ルルアム邸を襲撃し、彼女を拉致してしまったのです。

彼女の家は、王宮ほどではないにしても、かなり強固な警備に守られていたはずです。

それを汗すら滲ませず・・・・


デタラメなほどのお強さです。

窮地きゅうちを救ってもらったという事もあり、私の心はすっかり、彼に奪われてしまいました。

外見はともかく・・・・私には彼が、『白馬に乗った王子様』並みの存在に見えました。

それはもちろん、今も同じです。

フフ・・・思わず笑みがこぼれてしまいますね。


「あの・・・王女様? お顔を動かされてしまいますと、お化粧のほうが・・・」


「そうでしたわね、ごめんなさい。」


表情筋を動かし、顔を引き締めます。

いけません。

王女がこのような態度では、国の威厳が失墜しかねません。

しかし、カイト様との婚姻は、難しいものでした。

まず、父上・・・要するに国王意様が納得してくれません。

これは、王妃様のご助言もあり、何とかクリアすることができました。

その後も、国王様には『貴族たちの説得』などで、大変なご迷惑をおかけしてしまいました。

私はこれから、それにむくいるために一生懸命、がんばろうと考えています。


次なる難関は、カイト様ご自身の説得でした。

これは大変でした。

カイト様は、成り上ろうとか言う考えが、皆無の方のよう。

つまり、与えられる権力を見せ付けても、逆効果にしかならないわけです。

ここで私は、数日間に渡り『恋路』の勉強を王妃様に教えていただき、これを彼の前で、使用してみました。

王妃様も昔、これで国王様に最後の一手を放ったようです。

結果はご覧のとおり。


王妃様曰おうひさまいはく、『上目遣いは女の武器!!』らしいです。


自分では分かりませんでしたが、使ってみると、かなり効果があったようです。

かたくなに私との婚姻を断り続けていたカイト様も、口を縫い付けられた様に何も言ってこなくなりました。

恥ずかしかったので嫌だった、胸元が大きく開いていたドレスも、かなりの効果をあげていたようです。

これは、彼の視線が・・・


いえ、これからの旦那様に、これは失礼ですわね。

まあ、いやらしい視線を向けられた訳ではなかったので、私自身、嫌な気持ちにはなりませんでした。

必死に私から目を背けようとしていたのが、逆にいじらしさを感じさせられました。


「王女様、お化粧が終わりました。 しばらくこのお部屋で、待機をお願いします。」


「分かりましたわ。 ご苦労様です。」


鏡に映った自分の姿を見ると、とてもきれいに見えました。

それはまるで、見事に花開かせた、大輪の薔薇ばら

素敵な王妃様と違い、腹違いな私は誰に似たのか、お世辞にも容姿端麗ではありません。(と、当人は思い込んでいる)

平凡な私ですが、化粧とは、本当にすごいですわ。

ここまで人間を化かすのですから。

・・・・私自身、化粧は嫌いなのでなるべく、しない方向でいきたいところではありますが。

むろん、旦那様が望まれれば話は別です。


「王女様、お待たせいたしました。 準備が整いましたので、入り口までお進みください。」


さあ、いよいよ私の婚姻式が始まります。

着付けを行った部屋から数歩進み出ると、そこには大きな垂れ幕があります。

この先は、婚姻式会場。

カイト様はあちらの垂れ幕の向こうで、私を待っています。


「・・・・・。」


いけません。

いま、クラッとしました。

顔も紅潮し始めています。

気持ちを引き締めねばなりません。

ニヤけた新婦など、王族の婚姻式として、恥さらしもいいところです。

これから婚姻の儀式すべてが終わる数時間先まで、理性を保っていられるか、少し不安ですが・・・

頑張りましょう。

国王様に、何よりカイト様に恥をかかせてはなりません!!



◇◇◇


「・・・・・。」


いま私は、婚姻式の舞台上で挨拶を終え、カイト様と並んで立っております。

ちなみに挨拶といっても、私は軽く会釈えしゃくをするだけなのですが。

カイト様も噛みまくりながらも、挨拶を終えました。

まあ、カイト様は市井しせいの人間です。

何百人も前にしての挨拶は、神経を使ったのでしょう。

これは仕方がありません。

ですが・・・・


私の横にいらっしゃるカイト様は、顔をグッと引き締め、口をへの字にして、ムッとした表情になっていいます。

見る者に、威圧感さえ与えるような表情・・・

カイト様、緊張感からそんな顔をなさっているのですね?


怖いです。

カイト様、その顔は怖いですわ。

それでは、戦場に向かう兵士です。

今は婚姻式なのですから、もう少しやわらかい表情を・・・

ああ・・・注意して差し上げたい。

でも慣例として、女である私は『宣誓の儀』を除き、決して声を発してはならないことになっていますので、ここは我慢です。


会場の下には、『カイト様の妹』という、赤毛の少女がいます。

可憐な見た目に反して、彼女も兄のカイト様同様に、かなりの実力持ちです。

森の中では最初に、彼女が飛び出してきて、暗殺集団を倒してくれました。

しかし昨日分かったことですが、彼女はトビウサギの、変異種のようです。

どうりで動きが、あまりに俊敏だと思いました。


カイト様の俊敏さも、人間離れしたものがありましたが、彼はレッキとした『人間』。

これはよかったです。

もし初恋が、『人外』だったら、私はどうしたら良いのでしょうか・・・


そんなことを考えているうちに、国王様やほかの貴族の皆様方の挨拶や、祝いの言葉なども終わり、とうとう、『宣誓の儀』です。

これが終われば、私はカイト様の、妻となります。

心臓の鼓動がはやり、体全体が熱くなります。


私の昔からの夢は、『強くてお優しい方と婚姻を行う』でした。

それが、望んだ形で今、叶われようとしています。

まずは、当主たるカイトさまから・・・

『汝、病める時も・・・』

から始まる、宣誓の言葉が、国王様から読み上げられます。

カイト様はこれに、『はい、誓いましゅ・・・』と答えました。


カイト様、噛みましたわ。

噛んだ上に、言い回しが違います。


『汝、カイト・スズキは病める時も息災なる時も、どのような難関がその道に訪れようとも、アリア・ミューゼンを生涯の妻として、婚姻の言葉をたがえぬと宣誓するか?』


こう言われたら、

『私カイト・スズキは、病める時も息災なる時も、どのような難関がその道に訪れようとも、アリア・ミューゼンを生涯の妻とし、婚姻の契りをたがえぬ事をここに、宣誓いたします。』

と、言葉を返すのが慣わしです。


国王様も、思わず苦笑いで、彼に『大公』の証たる勲章くんしょうを授けます。


・・・彼は、緊張していたのでしょう。

別に私は、完璧な婚姻式など望みの中には無かったので、良いです。

気を取り直してっと・・・・・

次は、私の番です。

言い回しなどは、子供のころから教え込まれていたので、心配ありません。

私に宣誓の言葉を送るのは、王妃様です。

彼女の前に、一歩、進み出ます。


「汝、アリア・ミューゼンは、・・・・・えっとお・・・・・ん?」


ここまで言ったところで、王妃様は言葉を止めてしまいます。

頭上には、『?』マークが浮かんでおられます。


ま・・・・まさか・・・・・

お忘れになったのですか!?

緊急事態発生ですわ。

これでは私は、いつまで経ってもカイト様に対し、『宣誓』をすることができません。

これは、非常にマズイ事ですわ。

苦肉の策です。

小声で、お教えしながら王妃様に、『宣誓の言葉』を言っていただきましょう。


「・・・病める時も、息災なる時も・・・・」


「え? ああ! 汝、アリア・ミューゼンは、病める時も息災なる時も・・・」


王妃様も、私の意志を汲み取ってくれたようで、私に発した言葉を反芻はんすうしてくれます。

ふう・・・・

なんとかこれで、『婚姻の儀』も、終わらせることが・・・・


「あれ、アリア、何で小声で宣誓しているの? まだ王妃様は言い終わっていないんじゃ・・・」


ちょ・・・・!!!

カイト様!!

そんな大きな声で言ったら、ほかの貴族たちに聞こえてしまうではないですか!


「カイト様、今は緊急事態なのです!! 私の宣誓はこれから・・・・!!!」


ここまで言ったところで、ハッとしました。

今は、『婚姻の儀』真っ最中です。

ならわしとして、新婦は、婚姻の宣誓の言葉以外、一言もしゃべってはならない決まりになっています。


「あ・・・・。」


会場は、皆が固まってしまっています。

私は宣誓の言葉以外のことを、ガッツリとしゃべってしまいました。

それも、会場全体に響きかねない大声で。

王妃様、そんな『あちゃー』な顔をしないでください。

あなた様さえ、婚姻の言葉をお忘れになっていなければ、この事態は防げたのです。


「あ、そっか。 そういうことね。 ごめんごめん、続けて?」


カイト様は、私のしようとしていたことが、理解できたようです。

できれば、あと十秒ほど前に、察してほしかったです。

今理解されても、どうにもなりませんわ。


「あの、王様どうしてみんな、固まっているんですか??」


「え? いや・・・その・・・なんだ? 今契りがなされるところではあるのだが・・・・」


「・・・・・。」


終わりました。

私の人生、最初で最後の婚姻式は、誓いの言葉も交わせず、幕を下ろしました。

この先私たち夫婦は、『婚姻式を無事、通り越せなかった貴族』として吹聴されること決定です。

カイト様、申し訳ございません。


妻として私は、わたしはーーーーー!!!


「?」


取り乱していた私の頭に、何かが触る感触が伝わってきました。

頭を上げてみると、どうやらカイト様が頭を撫でて・・


ちょ、カイト様!!

あなたは何て事を・・・・!!


ブツン。



◇◇◇


「アリア、俺何か、悪い事した?」


「・・・・・。」


今私たちは王様に呼び出され、二人そろって謁見の間へ向かっております。

しかし私は、横にいる彼の顔を、直視できません。

なぜあんなことを・・・・・

なぜ頭を撫でたかと聞くと、『泣きそうだったから、何となく』と答えられました。

しかし普通、親子が愛情表現するために行うものです。

それも、『成人前』の。

カイト様は、なぜか分かっていないようですわ。


「なんだかこう・・・婚姻式で俺、あの後何したか覚えていないんだよね? その前も緊張していたというかさ・・・ アリア、俺って大丈夫だった?? 誰にも迷惑かけてない?」


私に聞かないでください。

あなたの奇行のせいで、意識が彼方に吹き飛ばされてしまったのですから。


あああ・・・・

最悪ですわ。

きっと私は、契りの言葉なんか交わせてはいません。

私の一生に一度の婚姻式は、最悪の形で終わってしまいました。

父上からの呼び出し。

お叱りを受けるのでしょう。

当然ですわ。 王族として、恥ずかしすぎる婚姻式にした挙句、すべてをぶち壊してしまったのですから。

いつの間にか、謁見の間へ入っていたようです。


気が重いです・・・・

悪いのは、結局は私です。

覚悟を決めましょう・・・・・


「スズキ公よ、良き婚姻の儀であった。 これからそなたには、領地を任命する。 よく励むように。」


「領地・・・ はあ・・・・・・・」


カイト様、そんな露骨に嫌そうな顔はしてはいけません。

領地を賜るというのは、名誉なことなのです。

彼は、それを望んでいないようですが・・・・・


「アリア、おまえもスズキ公の妻として、もっとシャキッとせぬか。」


「はい・・・」


国王様が私に、叱咤激励しったげきれいしてくださいました。

でも無理です。

立ち直るには、もう少し時間が必要です。

私の婚姻式が潰れてしまったのですから、お許しくださいませ。


「アリアよ、参列した貴族の方々からは、『実に良き婚姻の儀であった』と、口をそろえて言ってきているのだぞ?」


「・・・・・・・え?・・」


婚姻の言葉も交し合っていないアレが?

最低の婚姻式だった、の聞き違いでは??


「アリア、聞いて頂戴。 私は、あんなに恋心あふれる婚姻の儀は、はじめて見たわ。 いいじゃない。  婚姻の言葉なんて、交わせ無くても、夫に尽くすことなんてできるわ。」


ニッコリと、微笑み返してくる王妃様。


「え!? やっぱり違ったの??」


カイト様に視線を向けると、驚いたように言葉に疑問の言葉を投げかけてきました。


彼を見ると、悶々としていた自分がバカらしくなってきました。

彼は、アレで完璧とでも思っていたのでしょうか?


「カイト様、婚姻の儀ではできませんでしたが、ここで改めて誓わせていただきますわ。 私は、生涯あなたの伴侶として、尽くさせていただきますわ。」


「・・・・・・妻・・か・・・」


「え?」


カイト様はそう、言葉を発すると、私の耳に口を近づけました。

何を言う気でしょうか?

まさか・・・・・・・・・・

顔が一気に、紅潮してきます。


「アリア、領地に着いたらクーデターを起こしてくれない? 俺は失脚して、山奥ででもひっそりと・・・」


「いたしません。」


「え~~。」


この方は、おバカですね。

そんなことをすれば私は、絞首刑ですわ。

紅潮した顔も、一瞬で元に戻ってしまいましたわ。

でもそんなところが、彼のいい所でもあります。


「カイト様、これからどうか、よろしくお願いいたします。」


「う~ん、・・・よろしく?」


前途多難な気がしますが・・・・なんとか、乗り越えられる気がしてきました。

・・・・気のせいかもしれませんがね。


実験もかねて、投稿しました。

これからも、よろしくお願いいたします、

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