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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第2章 シェラリータ
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閑話・受付嬢の一日

気持ちが早いと思ったのですが、閑話です。

カイトにいろいろ教えてくれた、眠そうなギルド受付嬢の一日です。

本当に眠いです・・・

カラ~ンカラ~ンと、鐘の音が聞こえてきます。


ここ、シェラリータの街ではこの聖教会からの鐘の音ともに、街の一日が始まります。

かく言う私もこの鐘の音ともに起きて、職場へと向かいます。


申し遅れました。

私の名前はレン・ガエール。

ギルド協会シェラリータ支部に勤める受付嬢をやっております。

冒険者を目指して地元の田舎から街へとやってきたのですが、私には荷が重過ぎました。

でもギルドの受付のお仕事があって大変よかったと思っています。


ふああ・・・・。

まだ眠いです。 二度寝したいところですが、一昨日(おととい)はそのせいで寝坊ねぼうしてしまい、ギルドマスターに怒られてしまいました。

こんなことでクビになって、路頭に迷いたくはありません。

ここは起きましょう。 ふう・・・私はなんて自分に厳しい大人なのでしょうか。

ゆっくり・・・いきなり起きると体にさわるのでゆっっっっくり・・・ベットからい出ます。

寝巻きからギルドの制服へ着替えるのは、すばやくします。 肌寒いですからね。

そうそう、ここで顔を洗うのと歯を磨くのを忘れてはいけません。

なんたって多くの人の前に出ますからね!!!

持って行くのは昼食と小さなかばんだけ。

これで準備オーケーです。

さあ、今日も(なるべく寝ないように)バリバリ働くぞ!

ファイト、オーー!!



◇◇◇




ギルドです。

今、私は自分のカウンター席について書類整理などをしています。

この後のお仕事を円滑えんかつに進めるためなので、余念がありません。

冒険者に時間は関係有りません。

依頼遂行いらいすいこうには数日かかることもあるのですから。

と言っても私はギルドの受付嬢。 昼までは特にすることは有りません。

ギルドの依頼が更新されるのは昼なので、そのころが忙しくなります。

だから大丈夫なのです。 ほんのちょこっと居眠りしていても・・・

ZZZ・・・・・・・


「ちょっと、レンさん!? ギルドマスターが来ますよ!? おきて! 起きて下さい!!」




◇◇◇




陽もだいぶ高いところまで上がり、ぽかぽかしてきました。 

頭には、小さなたんこぶが一つ。

居眠りのバツで、先ほどギルドマスターに殴られました。

でも私の眠気には、なんら影響はありません!!

陽気のおかげで、眠気が増大してきます。 

いけません! それでこさっきも、ギルドマスターに怒られたではないですか!!

気を引き締めましょう!

しかし、今日はどうしたというのでしょうか?

冒険者が少ないです。 いつもはこの時間、冒険者でごった返しているのですが・・・

隣にいる同僚に聞くと、今日は依頼が少なかったそうです。

まあ、そういう日もあるでしょう。 となると今日はヒマで終わりそうです。

私としては、こんな平和な日もあっていいと思います。

と、思っていた矢先でした。

私のカウンターに一人の変わったふうていの男性がいらしたのは。

   

「新規の方ですね? 登録料は銅貨五枚になります。」


「え”・・・・」


お金の話をしたとたん、彼は固まってしまいました。

どうしたのでしょうか?

銅貨五枚はそんなに高くは無いはずです。

ははあ~~。この方、もしや一文無しですね?

変わった風体ふうていの方だと思ったのですが、やはりスラム出身の方なのでしょう。

たまにいらっしゃるんですよね? 

並の生活を手に入れたくて冒険者を目指す人。


私は、この方にそういった時の為の書類をお渡ししました。

出してから、そういえばこの方はスラム出身だったと気がつきました。

失念していました。 スラム出身の方は、文字がかけない方々なのですから。

ですが杞憂きゆうに終わりました。 この方、文字がかけるようです。

う~~ん・・・

見たところ学もありそうですし、逆に貴族の家から着の身着のままで、追い出された方なのかもしれません。 それならば変わった服装にも説明がつきます。

おっと、ギルドで他人の過去の詮索はご法度はっとでした。


学があるなら手続きもスムーズです。

この方に私がカウンターを離れる間、読むようにと『冒険者手引』を置いていきました。

しめしめ。

ちゃんと呼んでます。 説明はらなさそうですね。

学がある方で本当によかったです。

読み上げて、いちいちご説明する手間が省けました。

これは決して職務怠慢しょくむたいまんではありません。

ですが、この考えは、すぐに打ち砕かれる事となりました。


◇◇◇



「すきる? 何それ??」


え”!? 今なんて言いましたこの人!?

スキルを知らない人ですと!!???

信じられません。 スキルを知らない方なんて始めて見ました。 

三歳の子供でも知っていると言うのに・・・

うぅ~む・・・。 学があるというのは気のせいだったのでしょうか?

ま、これも仕事なので説明して差しあげましょう。

その前に、ギルドカードの発行のために、彼のステータスを確認しなければなりません。


で、ステータスが開けたのはよかったのですが・・・


名前   :カイト・スズキ

年齢   :17歳

レベル  :1

HP(体力):480/522

MP(魔力):1549950/1550000

STR(筋力):210/211

DEX(機敏):730/730

スキル  :好きなものを好きなだけ♪


何ですか、この人!?

勇者ですか、勇者なんですか?? 

私、小さいころに、絵本とかでしか見たこと無いですよ!?

突っ込みどころ満載のスキルですが、群を抜いているものが三つ。


まずレベル1。

始めて見ました。 五歳の子供ですら、レベル3は有ると言うのに・・・

そして魔力が155万。

この国の大賢者が魔力1万5千と聞きます。ちなみに私は87です。万なんて付きません。

そしてスキル。

好きなものを好きなだけって・・・orz


この方を残し、急いでギルドマスターにこのことを報告しに行きました。

冒険者ランクが分からないのです。 スキルにムラがありすぎるので。

私があわてている様子を見ただけでギルドマスターは

「すぐにお前の動きを俊敏しゅんびんにさせている、その原因のやつをここへ連れて来い!」

と、言ってくれました。

私はまだ何も言っていなかったのですが・・・

話が早くて大変助かります。


◇◇◇



「君が、驚くべきスキルをはじきだしたカイト君だね?」


「は・・・はい。カイトは俺ですけど・・・」


ここはギルド内にあるギルドマスターの私室。

重苦しい空気に包まれています。 私も思わず、ゴクリとつばを飲み込みます。


ギルドマスターもこの方の、異常スキルが気になるようです。

カイトさんが先ほどのように水晶に手をかざします。


「「「・・・・・。」」」


あ、ギルドマスターも固まりました。

それにしても先ほどは気がつきませんでしたが、水晶が虹色に輝いていますね。

普通、これは火属性の方なら赤、水属性の方なら青と、言う風に輝きます。

好きなものを好きなだけ・・・は伊達ではないようです。


しばらく黙っていたギルドマスターでしたが、少しうなずくと、私に耳打ちしてきました。


スキル的にはSランクで申し分ないが、ポッと出の人にそれをしたら他の冒険者に示しがつかない。

でも、それはいわゆるギルドの都合なので、慰謝料と言う形で金貨を三枚渡すことにするそうです。

私の一ヵ月のお給料は銀貨十五枚ほどで渡されます。

要するに、私の一ヶ月の二十倍です。

まあ、Sランクのはずが、目立たないためとはいえCランクです。 妥当と言えば妥当・・・・

妥当なのです!!!!!!(自分に言い聞かせる)


お金をもらったときのカイトさんの喜ぶ顔は、とても見ていて気持ちがよかったです。

すごく安心するような・・救いの手を差し伸べられたような・・そんな顔です。

普通こんな大金もらったら、物欲で下品な顔したりとかするのですが。

ちなみに私だったら一軒家を買います。


ふう~~・・・

今日は疲れました。 

気疲れです。 

気持ち的な疲れです。

でもそれより、今日はとっても面白いものを見させていただきました。

こんな風に仕事中に眠気が飛んでしまったのは、いつ振りのことでしょうか?

カイトさんは、明日から依頼を受けに、ここは来ることでしょう。

何よりカイトさんは、いい人そうです。

そこらの山猿さん方とはまったく違います。


ふふ・・・・

明日からが楽しみです。

明日はどんな面白いことをしてくれるでしょうか?




・・・ところで、カイトさんのおっしゃっていた『てつどう』とはなんのことだったのでしょうか?















あの、ギルドの受付譲さんはこんなことを思っていたのですね。

ちなみに彼女が冒険者をあきらめたのは、「夜、眠いのを我慢して不寝番なんか出来ない」からです。

ちなみに体力も無いのも一端です。


※9/6、大幅に加筆修正しました。

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