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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第1話 それは流れ任せ?

新作です!!

 いつだったか社会現象にもなった婚活方法があったとされた。



「お互い三十過ぎまで誰も相手いなかったら、結婚しない?」



 などと、SNSのネタなどで騒いだ時期もあった嘘かほんとかの戯言。


 万智子はそれを……まさか、自分自身で実体験することになるとは思わなかった。しかも、相手はジャンルは違えど、兼業作家をしているサラリーマンとの会話からだ。



「あ~~も~~!! サービス残業多過ぎ!! マジ最悪!!」

「お疲れぇ……」

「兄さん、聞いてくださいよ!! マジで!!」

「はいはい」



 その日は休日だったこともあり、昼から万智子はオフ会と称して酒を飲んでいた。相手は二回か三回だが、リアルにオフ会するようになった少し年上の男性の落合(さとる)。兼業作家で、普段はきちんと正社員の仕事を持つ素晴らしい人材だ。のらりくらりと社畜になりながらも弱小同人作家を続けている万智子とは雲泥の差。彼はきちんと商業の仕事を掛け持ちしている神とも言える人物。


 そんな彼とはSNSの相互フォローつながりで馬が合い、オフ会も単独で会うくらいの大胆さだったが。いきなりのカラオケオフ会で、互いに美声を披露し合ったことで、そのあと食事にも行くくらいのノリの良さが気に入った点だった。


 今日は単なる愚痴会だったが、覚は万智子の鬱憤を嫌な顔一つ見せずに相づちしながら聞いてくれている。万智子が酒のペース配分を間違えないように気を配ってくれているし、顔面偏差値は中の中くらいだけど、知人の中ではかなり信頼を置いている男性だ。



「あんの、生真面目お局!? いちいちわかっていることを、懇切丁寧な説明をしてるつもりでも厭味ったらしいの!! あたしは赤ん坊じゃないんだから!?」

「それ、男性社員にはキレられたって人だっけ?」

「そーなの! 自分が正しいとか思い込みすんな!!とかで、温和な係長をキレさせたんだよね……うつ病手前の人だったから、そんときの係長は人事異動になっちゃったけど」

「うーん? 精神病って、単なる疲れとかのケアだけちゃうのにね?」

「もーね。疲れた、辞めたい。誰か嫁にもらって~~」

「え~? 大丈夫~? 自棄になってないー?」

「……なってる」



 社会人になれば、趣味の時間を自分の好きなように作れると思い込んで内定の取れた会社でそれなりに頑張って来たのだが。覚にも何回か読んでもらった同人誌の新刊製作がここのところ滞るくらいに、万智子は会社のサービス残業で無茶な生活をしていた。


 深夜帰宅、深夜のコンビニ飯。早朝からの満員電車通勤のループがひと月ならず、三ヶ月も続けばそろそろ限界値もふり幅が怪しくなっても仕様がない。今日も、覚とのオフ会が偶然重なったこともあって、酒の許可をもらいつつも愚痴を聞いてもらっているのだ。



「だったらさ~? いっそ、俺と婚活しない?」

「はい?」



 話の流れが一気に変わったので、豆鉄砲をくらったような表情になったと思うが。覚はそのまま眼鏡の奥の瞳をきらきらと光らせているだけだった。



「ほら、ネタとかでもあるじゃん? 『何歳までお互いフリーなら、入籍しない?』とか。俺今そうだし、マチちゃんもたしかそうでしょ? そしたら、婚活成立しない?」

「いやいや、兄さん?? あたしの愚痴からどうしてそんな飛躍??」

「辞めたいくらいしんどいんでしょ? 同棲というか同居だけど。来ない? 兼業作家の環境下で堂々と同人誌製作するの」

「うっ」



 態との提案とか思ったが、結構しっかりとしたプランだ。お互いの趣味以上に、覚は作家の仕事もしているから万智子のやりたい趣味の理解度が高い。


 男性との共同生活なんて、身内以外にしたことがないがこれだけ気配り上手な物件と思える相手は早々にいない。それに、万智子はそろそろ適齢期を逃す年代のアラサーだ。両親たちからもメールなどで婚活の催促をするようなものがときどき届くくらい。



(見た目はまあまあだけど。顔が全部じゃないし、なにより覚兄さんの選ぶ居酒屋とか店は!!)



 まだ数回程度でも、万智子の胃袋を掴んでいるラインナップばかり。自炊はすると聞いていたので、いっしょに住めばその美味しい食事も振舞ってもらえるということ。提案は覚からだったし、こんなチャンスは滅多にない。


 しかしながら、恋愛偏差値がそこそこしかない万智子でもいきなり結婚出来るか心配だったので……今日をきっかけにお付き合いから始めることになった。



「じゃ、明日うちの部屋来ない? 外食もいいけど、お手軽ランチご馳走してあげる」

「いいの!?」

「せっかくの彼女だしね?」

「わ~~!!」



 顔面よりも言動イケメンとはさすが兼業作家……と、頷きたくなった。


 その日はお酒もほどほどにすることにして、翌日のために久しぶりにちゃんと身なりを整えてから覚と待ち合わせの駅に向かう。待ち合わせ場所でラフな格好をしてても、身長のおかげで目立つ彼氏が……昨日の最初とは違って、まぶしく見えるのは関係が変わったせいなのか。


 とりあえず、結婚前提というお付き合いからスタートなのに、歩くときはもう恋人繋ぎという切り込みがはやくて心臓が破裂しそうになったのは仕方がない。


 これが、入籍の二ヶ月前の出来事だった。

今日は三話

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